スマッシング・パンプキンズの超ド級ロックオペラ完成! 『メロンコリー~』と『マシーナ~』に連なる壮大な物語の全貌とは?

rockin'on 2022年12月号 中面

レッド・ホット・チリ・ペッパーズの年に2枚発売も話題だが、同じく90年代バンドのスマッシング・パンプキンズがその上をいく発表をしたから驚愕だ。

バンドの金字塔にしてその名を世界に轟かせた怪物アルバム、95年発表の2枚組傑作『メロンコリーそして終りのない悲しみ』と、解散を前提に最後にスマパンらしい音を鳴らそうと作られた2000年発表の『マシーナ/ザ・マシーンズ・オブ・ゴッド』と『Machina II/The Friends & Enemies Of Modern Music』。この2枚に続く、コンセプト作3部作の最終章で3枚組『ATUM』の第1幕を11月15日、第2幕を2023年1月31日、第3 幕を2023年4月23日にリリースするから。

しかし、このTikTokに支配される現代音楽シーンで、あまりに時代に逆らったこの過剰さこそがスマパンをスマパンたらしめたDNAでもある。ただ、さすがのビリー・コーガンも、これはあまりに膨大な=無謀な挑戦と思ったようで全33曲を毎週1曲ずつポッドキャスト『Thirty-Three with William Patrick Corgan』で解説している。これが面白い。

『メロンコリー~』、『マシーナ~』で登場した“ゼロ”、“グラス”から新作の“シャイニー”というキャラへの発展や、物語、音楽性、また過去の作品との関係性などヤングブラッドウィローなどの新世代やブッチ・ヴィグというスマパンを世に送り出した立役者などを迎え解説し、作品同様にスマパン・ワールドの未来と現在と過去を繋いでいる。シャイニーは、ミュージシャンだが、地球にとって危険人物とみなされて宇宙に追放。ボウイの影響も感じるが、宇宙船もハッカーも登場し、彼の中では“ロックオペラ”は完成している。

「ヘヴィなギターサウンドも、エレクトリックも、フォークもある」今作は、ハードさと繊細さが交差するサウンドに、普遍的な歌詞の洗練された構成の壮大な作品だ。

「誕生した時からオルタナバンドとしてオルタナすぎた自分たちのサウンドを奪回する」。「徹底的な音楽的探求で、危険を冒してでもステイトメントを出そうとすること自体が、僕らがどんなバンドかを象徴している」と語っていたが、シャイニーが、地球から追放されたのは、地球の真実を語っていたから。いつでもアウトサイダーなビリーの心境をそのまま象徴しているようだし、スクリーンに釘付けで真実を見失いつつある今の社会における真のアートの役割を提示しているようにも思える。全貌が明らかになるまでこの壮大なる過剰な挑戦とじっくりと向き合っていきたい。 (中村明美)



スマッシング・パンプキンズの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』12月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。

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