rockin'on 2024年3月号 中面今、最も注目すべき新人バンド、ザ・ラスト・ディナー・パーティー（以下、TLDP）がついにデビューアルバム『プレリュード・トゥ・エクスタシー』をリリース！
彼女たちが“ナッシング・マターズ”を提げてシーンに登場してから未だ1年も経たないが、ブリット・アワードの「ライジング・スター」から「BBC Sound Of 2024」まであらゆるアワードや新人リストを総なめにし、ライブをやれば満員御礼、2曲しかリリースしていない段階で北米ツアーまでソールドアウトにするなど、TLDPは近年稀に見る勢いでバズを増幅させてきたバンドだ。それだけにフルアルバムにかかる期待も恐ろしく高かったわけだが、『プレリュード・トゥ・エクスタシー』はその期待に応えて余りあるマキシマムなアートが、そして極めてエキセントリックなポップが充満した決定的な一作となっている。
TLDPは2021年にロンドンで結成。グラムロックにバロック、ポストパンクにクラシック、ハードロックからアンビエントにエレポップまで、彼女たちがやるのはジャンル横断というよりもジャンル全盛りの歪なアートロックだ。そして美しいものとグロテスクなものが、プリミティブな興奮とタナトスの耽美が交錯するそれを、ご覧の通り猛烈フォトジェニックな5人が身をもって100%具現化し、サウンド、ビジュアル、コスチュームのすべてにおいて「語りたい物語」を明確にしているのがTLDPの凄さだと言える。
ギリシャ神話からデヴィッド・リンチやジェイン・オースティン、B級ホラー映画や中世ヨーロッパの宗教画から三島由紀夫まで、彼女たちの物語のモチーフの錯乱したバラエティも最高だが、これだけ過剰な世界をグラマラスに、カリスマティックに展開しうる自由な表現フォーマットが「ロックバンド」なのだということを、TLDPは今一度思い出させてくれる。
ボーイジーニアスからオリヴィア・ロドリゴまで、女性アーティストがロックを牽引、席巻している状況、そしてマネスキン以降の現象と言ってもいい、ロックバンドが再びクールなアイコンになりつつある状況。そんなふたつの時代の気運を象徴するのが、TLDPなのだ。 （粉川しの）
ザ・ラスト・ディナー・パーティーの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』3月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。
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