本日リリース! ストーンズ『ベガーズ・バンケット』の聴き所。50周年記念盤ラッシュのとどめともいえる、1968年を象徴する傑作
2018.11.16 18:35
1968年はロックにとって歴史的な名盤が数多くリリースされた年だったため、今年は50周年記念盤のリリース・ラッシュとなった年だった。そのトドメとなるのが、ザ・ローリング・ストーンズのこの『ベガーズ・バンケット』だ。
前年1967年の『サタニック・マジェスティーズ』はまさにサイケデリック・ロック的な内容となったし、さらにその前作の『ビトウィーン・ザ・ボタンズ』もサイケとポップ的な試みで、66年の『アフターマス』までのビート・ロックからの脱却として試みられていたものだ。
しかし、1968年に入ってバンドはキース・リチャーズがギターの開放弦チューニング奏法を会得し、ダイナミックなリフ演奏に目覚めてからドラスティックに方向性を転換し、ローリング・ストーンズの本来の資質であるブルース、ロックンロール、R&Bをどこまでもモダン・ロックとして叩き出していくアプローチへとまっしぐらに進んでいくことになる。その端緒となった名曲がシングル"Jumpin’ Jack Flash"で、このシングルに続いて制作されたのがバンドの黄金時代の幕開けとなった名盤『ベガーズ・バンケット』なのだ。
特に音楽的な達成として目覚ましかったのがこのアルバムのオープナーとなっている"Sympathy for the Devil"だ。これはもともとのアイディアはミック・ジャガーのものだったが、それを実際に楽曲にしていく作業は困難を極めることになった。それを数知れない試行錯誤を重ねながら、最終的にラテン・リズムを導入したどこまでもダイナミックな楽曲へと導いたのは、キースの粘り強い音楽的な指揮の賜物だったのだ。
また、"Street Fighting Man"、"Jig Saw Puzzle"など、この時点でのバンドのパワーをモダン・ロックとして全開で鳴らしていくサウンドとパフォーマンスは素晴らしいし、"No Expectations"、"Dear Doctor"、"Parachute Woman"などストーンズ本来のブルース指向を見事にロックとして爆発させていくナンバーもしびれる内容になっている。
また、歌詞的にもこのアルバムはアメリカ、ヨーロッパ、日本など、世界各地が反体制運動で揺れた世相をよく反映し、そんな時代に生きる気分をこの新しいサウンドに見事に乗せた、ロック史上稀に見る傑作となっている。
なお、今回のバージョンは名手といわれるボブ・ラドウィッグがリマスタリングを手がけていて、限りなくアナログ感に近い、奥の深いサウンドへとグレードアップさせてみせている。なお、パッケージによっては"Sympathy for the Devil"のわずかながらイントロが違うモノ音源も収録している。(高見展)
『ベガーズ・バンケット』50周年記念盤の詳細は以下の記事より。