ついに届いたビリー・アイリッシュの1stアルバムは、全音楽ファン必聴の一枚!ポップ史もロック史も塗り替えるのが想像できる

ついに届いたビリー・アイリッシュの1stアルバムは、全音楽ファン必聴の一枚!ポップ史もロック史も塗り替えるのが想像できる

デビュー・アルバムのリリース前から、世界中の音楽ファンの支持を手に入れてきたビリー・アイリッシュ。彼女の1stアルバム『ホエン・ウィー・オール・フォール・アスリープ、ホエア・ドゥー・ウィー・ゴー?』が先日ついにリリースされて、これは歴史に残る作品になると確信した。2019年の現代にあって、オルタナティブという言葉が再び大きな説得力を持つ、そんな作品だと思う。2曲目(実質的には1曲目)の“bad guy”の不穏さと、心の底深くから沸き立つような静かなエネルギーを感じるサウンド、そしてウィスパーというよりも突き放すような、一切の媚びのないボーカルは、彼女自身の宣戦布告のように受け取れる。女性であること、10代であること、そのすべてを弱さではなくパワーに変えていける冴えたやり方を提示してくれる楽曲だ。最高にクール。「ガールズパワー」の概念をしたたかに、現代的に塗り変えていくシンガーソングライターの歌声は、自己に内省的に向き合うだけでは終わらず、外に向かって強烈に放たれ始めた。それが今作のひとつの魅力だ。


このアルバムで間違いなく、名実ともにビリー・アイリッシュは完全にトップに上り詰めるだろう。その後のポップ史、ロック史が塗り替えられていくのが現実的に想像できるし、聴く者の生き方や意識を少しずつ変えてしまうような、まさにそんな力を持つ音楽だと思う。だからこそ強烈に「オルタナティブ」を感じるのである(時折ニルヴァーナを引き合いに出されるのも納得できる)。

絶望に近い深淵で鳴るようなダークな音が、それでもリスナーの毛羽立った乾いた心を潤していくのはなぜなのか。それは、その歌が圧倒的にリアルだからだ。リアルとは時代を映す、自分自身を映すということに他ならない。現代の若者(に限らず)が抱く閉塞感、諦念は、いつか自然にクリアされる類のものではなく、徹底的に自己に向き合い、自分自身で昇華するか、もしくは見ぬふりをして蓋をするかしなければ、生きていくことさえ辛く、やりきれないものばかりだ。人生経験を積んで様々なことを諦めてきた大人ならば、そこそこうまくやり過ごすことができても、10代の剥き出しの魂は、ノーガードゆえにボロボロに傷つけられることだろう。そんな敏感でセンシティブな心を持つリスナーにこそ必要とされるのが、ビリー・アイリッシュのリアルな音楽なのだと思う。


ダークさの中にも安寧を見出すかのような、時に穏やかで儚さをも感じさせる歌声は、エレクトロ・サウンドやヒップホップのビートを現代的なミクスチャー感覚で自在に取り入れながら新たな方向を指し示す。また今作の中には“I love you”という、アコースティック・ギターに乗せて、静かな歌声が悲しく胸に突き刺さるバラード曲がある。不器用で切なすぎるリアルなラブソングだ。この、心に澱のように沈んでいく憂いを含んだ美しい歌声とメロディにこそ、彼女の真の魅力を見ることができる。シンプルな楽曲だからこそ、そこにビリー・アイリッシュの素の魅力を感じ取ることができる。この歌声の素晴らしさをぜひ感じてほしい。彼女のことを単に「ティーンのカリスマ」と呼ぶには、その才能と表現力はあまりにも圧倒的だ。すべての音楽ファン必聴の1stアルバム。無視できるはずがない。(杉浦美恵)

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