サマーソニックやフジロックで2000年代以降もコンスタントに来日していたペット・ショップ・ボーイズだけに、「単独来日としては19年ぶり!」と聞いても当初はさほどプレミアに感じなかったのだが、この日の武道館を観てそんな余裕は一瞬で吹っ飛んでしまった。PSBのショウは映像やライティング、コスチュームの隅々までコンセプチュアルに構成された極上のポップ・アートであり、それはやっぱり武道館スケールの会場を使いきった単独公演でこそ100%味わい尽くせるものだからだ。
今回は2016年から続いているロングランの「The Super Tour」としての来日で、現時点での最新作『スーパー』の曲をコアに据えた上で各年代の代表曲を網羅したベストヒット・セットだ。今回はフル・バンド・セットということもあり、とりわけツイン・パーカッションがど迫力! 武道館であんなにもストロング・スタイルな4つ打ちがドウンドウン響きまくるダンス・ポップ・ショウは久々に観た。
また、今回のステージはセットリストがかなり明確に複数のテーマに別れて組み立てられていたのも印象的だった。ショウの冒頭は最新アンセム“The Pop Kids”を中心としたパーカッシブでファンキーなダンス・チューンが中心で、セカンド・パートは“New York City Boy”に代表される思いっきりアッパーでゴージャスなディスコ・ポップ、そしてその後はちょっとフェティッシュで妖しいムードが漂う耽美な80年代ニューウェイヴへ……といった流れだ。もちろんそのテーマに合わせて映像やニールの衣装も適時チェンジされていく。
“West End Girls”以降の後半は問答無用のアンセム連打だ。いきなりレイヴの狂熱に突入する“The Enigma”から“Left To My Own Devices”や“Vocal”の分厚くブリーピーなシンセへの流れなんてもろにEDMで、武道館が瞬く間にダンス・ホールへ! そんなコンディションで鳴った“Go West”がいかにクライマックスの天井をブチ破ったかは言うまでも無いだろう。
ただし、この日のショウのクライマックスを飾った“Go West”や“It’s A Sin”、“Domino Dancing”のようなベタ中のベタのヒット曲を、彼らは単に懐メロとしてやっていたのでは無い。コンスタントにアルバムを作り続けてきた現役ポップ・アクトによるセルフ・リミックス的なパフォーマンスとして再構築していくのだ。35年にわたって「エレクトロ・ポップ=ポップ・アート」を提示し続けてきた彼らだからこそ、それは可能だったのだと思う。(粉川しの)
<SETLIST>
1. Inner Sanctum
2. Opportunities (Let's Make Lots Of Money)
3. The Pop Kids
4. In The Night
5. Burn
6. Love is a Bourgeois Construct
7. New York City Boy
8. Se A Vida é (That's The Way Life Is)
9. Love Comes Quickly
10. Love Etc.
11. The Dictator Decides
12. Inside A Dream
13. West End Girls
14. Home And Dry
15. The Enigma
16. Vocal
17. The Sodom and Gomorrah Show
18. It's A Sin
19. Left To My Own Devices
20. Go West
[encore]
21.Domino Dancing
22. Always On My Mind