豊饒な感情を分かち合うための歌とアンサンブル――ボン・イヴェール、圧巻の来日公演のすべてを観た!

豊饒な感情を分かち合うための歌とアンサンブル――ボン・イヴェール、圧巻の来日公演のすべてを観た! - pic by Naoki Yamashitapic by Naoki Yamashita

歌が生まれ落ちる瞬間の誰かの切実さと、それをアンサンブルとして奏でるときの途方もない喜び。ボン・イヴェールの音楽にはいつだってエモーションの奔流があり、ライブという場所ではそれがダイナミックに躍動する。来日としては4年ぶり、彼らの音楽の包容力に強く鼓舞されるようだった。

前回は初期2作の集大成としてのパフォーマンスを見せてくれたが、今回大きく異なっているのは、2016年の『22、ア・ミリオン』以降のほとんど過激なまでの実験が織りこまれていることだ。現在のツアー・メンバーは新たにワイ・オークのジェン・ワズナーを加えた6人で、ツイン・ドラムをベースとしつつ、うち5人が様々に楽器を変えて多層的な演奏を聴かせる。そして、サンプリングや声の変調、ジャズ的即興、エレクトロニカの手法をふんだんに取りこみながら、あくまでバンド・アンサンブルとして成立させるのである。その圧巻の「音楽力」、ボン・イヴェールのライブを支えるのはまずそれだ。

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だがそれは、逆に言えば前提のようなものである。テンポを落とした“Perth”の破壊的なパワー、アコースティックな響きがそっと重ねられる“Holocene”の繊細さ、サンプリングが激しく生音と交錯する“33 "GOD"”、それらは異なる音楽性を持ちながら、どれもが「それでしかない」という感情の発露として示される。

僕は21日・22日の両方を観たのだが、たしかにセット内容は異なるものの、総体的なエネルギーは共通していた。それを実現したのはセットの骨格となっていた『アイ、アイ』の楽曲群で、“U (Man Like)”の温かみ、“Naeem”のタフネス、“RABi”の穏やかさといったものが、現在のボン・イヴェールがたどり着いたフィーリングだということがよくわかる。

ジャスティン・ヴァーノンはファルセットから叫びまで自在に歌い方を変えていたが、逞しいバンド・アンサンブルがあるからできることだ。彼ひとりの孤独や痛みは、ずっとそんな風にシェアされてきたのである。

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行き場がないはずだった感情を、しかし、他者への信頼に託して分かち合うこと。ボン・イヴェールの音楽の強さと美しさはそのダイナミズムにあり、その豊かさはその日集ったオーディエンス――「人びと」――にたしかに受け渡されていた。(木津毅)

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