不変にして普遍――発売40周年を迎えた怪物アルバム『バック・イン・ブラック』をめぐる、AC/DCの驚異的な物語

不変にして普遍――発売40周年を迎えた怪物アルバム『バック・イン・ブラック』をめぐる、AC/DCの驚異的な物語

新型コロナ禍の影響による不安定な状況が続き、新譜リリースについても延期や停滞が目立っている昨今、全米アルバム・チャートにおいて尋常ではない根強さを見せてつけているクラシック・ロック作品に何故か“黒いアートワーク”という共通項があることについては以前にも書いたが、今回は、その代表的な一枚であるAC/DCの『バック・イン・ブラック』に改めて注目したい。

この『バック・イン・ブラック』が世に出たのは1980年7月25日のこと。つまり、まもなくその発売から満40年を迎えるわけである。これに際し、AC/DCは同作の40周年記念グッズの販売を開始するのみならず、去る7月14日より、YouTubeのオフィシャル・チャンネルにて、この伝説的作品の制作背景などを紹介する映像を流し始めている。

AC/DC - The Story Of Back In Black Episode 1 - You Shook Me All Night Long
https://www.youtube.com/watch?v=b2gtJmH3-vI

こうした動きにより『バック・イン・ブラック』に対しふたたび世の注目が集まることになるのは確実だろうし、昨年の時点において全米のみで2,500万枚、全世界で5,000万枚を超える累計セールスを記録しているこの作品が、さらに売り上げを伸ばすことになるのも間違いない。

ちなみにこの作品は米『ビルボード』による7月18日付のアルバム・チャートでは依然として88位(しかも前週から11ランクも上昇)に君臨しており、実に419週目のランク・インとなっている。

そのシンプルなジャケット写真、同様にシンプルな表題曲のリフとともに、このバンドを象徴する作品として広く認知されている『バック・イン・ブラック』だが、発売当時、母国オーストラリアをはじめイギリス、フランス、カナダのアルバム・チャートでは首位を獲得しているのに対し、アメリカでの最高ランクが4位止まりだったという意外な事実もある。

その首位獲得を阻んだのがREOスピードワゴンやジョン・レノン&ヨーコ・オノの作品だったというのもまた興味深いところだ。

登場から40年、このアルバムはAC/DCを象徴する作品としてのみならず、いわばロックの基本形を示すもののひとつとして認識されてきたといっても過言ではないが、そうした普遍性やセールス実績のものすごさ以前に、その誕生自体が奇跡的なものだったことも忘れてはならない。

ご存知の読者も多いはずだが、この作品はAC/DCにとって、ブライアン・ジョンソン(Vo)を擁する布陣で初のアルバムにあたる。前任ボーカリストのボン・スコットが他界したのは、1980年2月19日のこと。バンドが彼の後任にブライアンを迎えて『バック・イン・ブラック』を世に放ったのは、それからわずか5ヵ月後のことだったのだ。

1973年に誕生したAC/DCにとって、ボン・スコットの急逝は当然ながらバンド存続の危機へと直結したわけだが、彼らはそこでまさしく悲しみを振り払うようにしながら、彼に対する追悼の念も込めてこの作品を完成に至らしめたのだった。その幕開けを飾るのが重々しい鐘の音であることも、アートワークが真っ黒であることも、当然ながらそれと無関係ではない。

33歳の若さで亡くなったボン・スコットの死因については、泥酔状態のまま眠った彼が嘔吐物を誤嚥したことによる窒息とされており、『地獄のハイウェイ』(全米17位)のヒットによりアメリカでの成功の足掛かりをつかんだ直後でもあっただけに、その人生の幕切れはあまりにも呆気ないものだったと言わざるを得ない。

不変にして普遍――発売40周年を迎えた怪物アルバム『バック・イン・ブラック』をめぐる、AC/DCの驚異的な物語

ただ、彼の遺作にあたる『地獄のハイウェイ』について振り返ってみてさらに驚かされるのは、同作以前の彼らの作品が全米アルバム・チャートのトップ100圏内に名を連ねたことは一度もなかったという事実だ。さらに言うなら、年がら年じゅうツアーに明け暮れていたはずのAC/DCが、年に1枚のペースでアルバムをリリースし続けていたことにも素直に驚かされる。

しかもその創作ペースは、悲劇的なフロントマン交代劇を挟んでも崩れることがなかったのだ。そして彼らは『バック・イン・ブラック』の発売から7ヵ月後にあたる1981年2月に日本初上陸を果たし、同年11月には続くアルバム『悪魔の招待状』を発表している。ちなみに初来日時の東京公演の会場は日本青年館だったが、1982年6月に同作を引っ提げて再来日した際には、彼らは日本武道館のステージに立っている。

まさしくAC/DCの歴史における最大の転換期となった『バック・イン・ブラック』の登場は、同時にロック史における大きな分岐点になったともいえるだろう。この作品に改めて注目すると同時に、2020年の半ばのうちに登場するのではないかと噂されていた待望のニュー・アルバムに関する情報到着を待ちたいところである。あれから40年を経た今、彼らは新たな転換期を迎えつつあるのかもしれない。(増田勇一)
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