野に放たれた獣たち、咆哮す

ザ・デッド・ウェザー『ドッジ・アンド・バーン』
発売中
ALBUM
ザ・デッド・ウェザー ドッジ・アンド・バーン
ジャック・ホワイトとザ・キルズのアリソン・モシャートを看板とするスーパー・グループ、久々の新作。露光操作で明暗をくっきり焼き分ける写真術の意味でもあるタイトルもかくや──5年のギャップを吹き飛ばすがごとくツェッペリンばりのリフが落雷する、前2作以上にインパクト重視で硬派なロックンロールを連打している。そのぶん素材の総和以上の個性として培ってきたゴシックな妖気やアシッド・ロック×ヒップホップといった妙な味は後退気味で、ユニットの起点にあったキャプテン・ビーフハートへのリスペクトが、モハーヴェ砂漠の疾走を経てクイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジに到達した感の内容だ(同バンドのメンバーも含むので不思議はないが)。

もっともこれは、理解・信頼を深めたメンバー同士が、各人に本来備わったロック運動神経/本能をより気ままに解放した結果でもあるだろう。ゆえにムラもあるとはいえ(M7、8、9はデザート・ロックというよりハートだ)、唐突なストリングスつきブロードウェイ調バラード(!)の最終曲も含め、真顔でありながら、このバンドには柔軟で自由な実験場としての余裕もある。正しいサイド・プロジェクトの在り方だ。 (坂本麻里子)
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