ヒップホップはかくも自由と示した

ア・トライブ・コールド・クエスト『ピープルズ・インスティンクティヴ・トラヴェルズ・アンド・ザ・パスズ・オブ・リズム:25th アニヴァーサリー・エディション』
発売中
ALBUM
ア・トライブ・コールド・クエスト ピープルズ・インスティンクティヴ・トラヴェルズ・アンド・ザ・パスズ・オブ・リズム:25th アニヴァーサリー・エディション
本作がリリースされた1990年に出たラップ・アルバムといえばアイス・キューブ『アメリカズ・モスト・ウォンテッド』、ブギ・ダウン・プロダクションズ『エデュテイメント』、パブリック・エネミー『フィアー・オブ・ア・ブラック・プラネット』。他にもディー・ライトとかブランド・ヌビアンとか……凄い年ですな。

まだ全員20歳そこそこ。Qティップの個性的な声とフロウ、アイズレー・ブラザーズ、ロイ・エアーズやドナルド・バード、アース・ウインド&ファイアーからルー・リード、ジミヘンまで、ジャンルを問わない洗練されたサンプリング・センスの良さは際だっている。ア・トライブ・コールド・クエストのデビューは89年のデ・ラ・ソウルや88年のジャングル・ブラザーズと同様に、虚勢を張らない非マッチョで自然体な姿勢がとても新鮮だった。今聴くとまだ幼さも目立ったりするけど、10代の頃からヒップホップが身近にあった世代が、フラットで柔軟な発想でヒップホップの枠を超えていった時代の象徴的アルバムとして、今もなお新鮮で示唆に富んだ作品だ。この25周年盤にはファレル・ウィリアムスのリミックス等も収められ、音質も向上。一家に一枚の名盤。(小野島大)
公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

最新ブログ

フォローする