ボブは75年に『血の轍』をリリース後、過激なツアーを決行しながらその過程で『欲望』や映画『レナルド&クララ』を発表。それもすべて妻サラとの別離を食い止める試みだったともいわれるが、しかし、離婚は77年に成立。このこととボブの入信に直接関係があるのかどうかは不明だが、内容をみれば、この両時期の活動は激しさは同等で、キリスト教期のボブが信仰を軸にありとあらゆる価値への懐疑を徹底的に問いかける姿勢はどこか原点回帰的にもなっているのが強烈だ。
さらにこの時期、ボブはゴスペル感を打ち出すためにアトランティック・レコードを作り上げたR&Bプロデューサーのひとりのジェリー・ウェクスラーを起用したが、厚みのあるバンド演奏を打ち出し、その凄味を捉えたのが今回のリリース。ぜひ堪能しておきたいボブのサウンドが鳴っているのだ。(高見展)