NO+12台のシンセサイザー=夢の一夜

ニュー・オーダー『Σ(No,12k,Lg,17Mif) ニュー・オーダー+リアム・ギリック:ソー・イット・ゴーズ』
発売中
ALBUM
ニュー・オーダー Σ(No,12k,Lg,17Mif) ニュー・オーダー+リアム・ギリック:ソー・イット・ゴーズ

2007年にピーター・フックが脱退した後も、バンドとしての活動を続けていく道を選んだニュー・オーダー。正直、長年のファンとしては複雑な思いもあったけど、15年に発表した新メンバーでの初アルバム『ミュージック・コンプリート』があまりに素晴らしくて、そんな不安は一気に吹き飛んでしまった。ニュー・オーダーは大丈夫だ。大事なことだから、二回言おう。ニュー・オーダーはこれからもぜんぜん大丈夫だ。

そんな新生ニュー・オーダーの最新作である本作は、2017年の夏、彼らが故郷の『マンチェスター・インターナショナル・フェスティバル』に出演した際の「超スペシャルな一夜」を収録したライブ・アルバムである。『ミュージック〜』発表後の世界ツアーのライブ盤なら、すでに17年に『NOMC15』がリリース済みなわけだけど、本ライブの内容は、それとは全く違う。この特別な夜のために彼らが「共演者」として用意したのは、なんと12台のシンセサイザーから成るエレクトロ・オーケストラ! さらに照明などのステージ演出は、稀代のビジュアル・アーティストであるリアム・ギリックが担当。まるでファクトリー時代のポップ・アート的な実験精神が甦ったような「祝宴的」一夜だったのだ。 

残念ながら、今回は映像版の同時発売はなく、あくまで音楽のみのライブ盤リリースなのだけど、それでもこれは十分に刺激的なアルバムである。先の世界ツアーの「ベスト・ヒット」的な構成と比べると、選曲もマニアックなナンバーが多く、そのへんはシンセ隊との相性を計算した上での判断だったのだろう。前半のハイライトとも言えるジョイ・ディヴィジョン時代の“ディスオーダー”なんて、まだイアン・カーティスが生きていた1980年の演奏を最後に、ずーっと封印されていた曲だ(それに気が付いた一部の観客も興奮気味で、そのリアクションだけでも泣けてくる)。

各演奏のあちこちに、バンドの歴史が「しれっと」詰まったライブである。たとえば、おなじみ“ビザール・ラヴ・トライアングル”のラストが“ヴァニシング・ポイント”(イビサ島で作った89年の『テクニーク』収録)へと溶け込んでいく瞬間とか。かと思うと“エレジア(85年の『ロウ・ライフ』収録)”のように、シンセ・オーケストラとの出会いにより、新たな美の境地へ到達している曲もある。大回顧展になりそうで、でも、ならない。どこかが必ず新しくって、だからやっぱりニュー・オーダーは楽しい。そんな当たり前のことを思い出させてくれる、素敵な宴のライブ盤。(内瀬戸久司)



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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』8月号に掲載中です。
ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。

ニュー・オーダー Σ(No,12k,Lg,17Mif) ニュー・オーダー+リアム・ギリック:ソー・イット・ゴーズ - 『rockin'on』 2019年8月号『rockin'on』 2019年8月号
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