オーガニックで多彩なグルーヴ

リトル・ドラゴン『ニュー・ミー、セイム・アス』
発売中
ALBUM
リトル・ドラゴン ニュー・ミー、セイム・アス

前作『シーズン・ハイ』から3年。一昨年にはEP『ラヴァー・チャンティング』もあったが、この間はフライング・ロータスやバッドバッドノットグッドとのコラボレーションが耳目を集めたリトル・ドラゴン。本作は通算6枚目で、〈Ninja Tune〉からリリースされる初めてのフル・アルバムになる。

彼らといえば近作では特に、R&Bやソウルへの傾倒を深めたグルーヴィでセンシュアルなサウンドが醍醐味。前々作『ナブマ・ラバーバンド』はデ・ラ・ソウルのデイヴやロビン・ハンニバル(元ライ)を制作に迎え、さらに(交友のあるロバート・グラスパー以降の)現代ジャズへの目配せも反映されたビートメイクが魅力だったが、本作も一先ずそうした直近のモード上にあるといえる。ただし、ハープの音色やオリエンタルな旋律が映える“キッズ”や“ニュー・フィクション”を始め、イクレクティックであると同時によりオーガニックな音作りが演奏面やプロダクションにおいても打ち出されている印象。コンテンポラリーな“ホールド・オン”の一方で打楽器がトライバルに鳴る“ラッシュ”があり、“アー・ユー・フィーリング・サッド?”ではダブやダンスホールの反響も聴くことができる。また、そうしてイマジネイティブな音に身を任せるように歌うユキミ・ナガノのボーカルも素晴らしく、シャーデーも思わせる“ステイ・ライト・ヒア”からアンビエントな“ウォーター”で幕を閉じる終盤は、本作のハイライトと呼ぶにふさわしい。

内省的なリリックからは今の時代の不安感も読み取れるが、同時に新たなディケイドへと踏み出すバンドのエネルギーのようなものも本作には感じることができる。彼らのキャリアの節目を意味する作品になるのではないだろうか。 (天井潤之介)



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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』4月号に掲載中です。
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リトル・ドラゴン ニュー・ミー、セイム・アス - 『rockin'on』2020年4月号『rockin'on』2020年4月号
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