ソロ・キャリアの豊かな実り

リアム・ギャラガー『MTVアンプラグド(ライヴ・アット・ハル・シティ・ホール)』
発売中
ALBUM
リアム・ギャラガー MTVアンプラグド(ライヴ・アット・ハル・シティ・ホール)

新型コロナウイルス流行の影響を受けて本国で発売延期された本作だが、こうして日本盤もようやくリリースに至った。本作のリリースと今年のツアー、特にレディング・フェスのヘッドライナーという大舞台の合わせ技で、リアム・ギャラガーのソロ・キャリアは最初の集大成を迎える予定だったと言っていい。レディングのキャンセルによってその計画の完遂は難しくなってしまったが、本作が彼のソロ・キャリアの(奇跡と言っていいほどの)大成功をリアムとファンが共に噛みしめる、記念碑的一作であることに変わりはない。

本作は昨年8月に英キングストンのハル・シティ・ホールで収録された「MTVアンプラグド」の待望の音源化だ。当日は全15曲が披露されたが、ここではソロ曲、オアシス曲がそれぞれ5つずつ選ばれている。3人の女性コーラスと24人のアーバン・ソウル・オーケストラを従えてのパフォーマンスはゴージャスにしてマチュア。ミッドテンポのナンバーを中心としたセットのため、勢いで押し切るロックンロール・ライブ的展開は不可能なわけだが、だからこそ今日のリアムのボーカリストとしての圧倒的な安定感が活きてくる。とりわけ“ワンス”や“ナウ・ザット・アイヴ・ファウンド・ユー”のような『ホワイ・ミー?ホワイ・ノット』のナンバーが素晴らしい。高音は無理せずキーを変える一方で、円やかに広がっていく中域のボーカルがオーケストラに負けず華やかだ。

一方のオアシス曲は選曲が凝っている。1996年、オアシスの最初で最後の「MTVアンプラグド」を当日ドタキャンした前科を持つリアムにとって、自分が開けた穴をノエルが埋めて絶賛された同企画は長らく屈辱にしてトラウマだった。(オアシスのアンプラグドにも出演した)ボーンヘッドをゲストに招いた今回の出演が、そのトラウマの克服の絶好のチャンスであったと同時に、2001年以降ライブで封印されていた“スタンド・バイ・ミー”をソウル・アレンジで再生させるなど、オアシス曲を現在の彼に合わせてアップデートする余裕すら感じさせるのが、今回のアンプラグドの選曲の醍醐味なのだ。兄のボーカル曲“サッド・ソング”を初めてリアムが歌ったのも感動的だ。“サッド・ソング”はオアシスのライブでも常にノエルのアコギ弾き語りで披露され、オアシスのレパートリー中でも際立ってノエルのソロ曲的な意味合いが強いナンバーだ。そんな曲にソロ・シンガーとしてのリアムが挑んだという点に、「ひとり」と「ひとり」として対等に向き合う兄弟の新境地を感じるからだ。 (粉川しの)



詳細はWarner Music Japanの公式サイトよりご確認ください。

ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』8月号に掲載中です。
ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。


リアム・ギャラガー MTVアンプラグド(ライヴ・アット・ハル・シティ・ホール) - rockin'on 2020年8月号rockin'on 2020年8月号
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