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過去とは不思議なもので、実際に起こった出来事のはずなのに、頭の中にしか残っていないためどこか夢物語のような気がしてしまう。そして夢は叶えようとすればするほど、自分の頭の中に無限に広がる空想の世界だったものが現実となってゆく。子どもの頃の現実世界と夢の世界が入れ替わることが大人になる面白さや充足感であり、同時に切なさなのかもしれない――この曲はそんなことに気づかせてくれる。子どもの頃に思い描いた「夢」が「目標」に変わることへの戸惑いや落胆、決意など、様々な感情が綴られた8分の6拍子のミドルナンバー。軽やかで凛々しいピアノの音色と透明感のあるコーラス、宙を漂うような感傷的なギターの旋律などで構成されたバンドサウンドは、なかなか言葉にできず胸に秘めたままでいる感情を瑞々しく描く。正解は出ていないけれど、迷いながらも足を進めてゆく姿が映し出された音と言葉はとても純粋で誇り高い。不安を抱えながらも勇気を持って前を見据える、成長痛のような楽曲だ。(沖さやこ)
(『ROCKIN'ON JAPAN』2023年12月号より抜粋)
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