『ROCKIN'ON JAPAN』がお届けする最新邦楽プレイリストはこちら
言葉とサウンドを丁寧にリンクさせて、表現したいテーマやストーリーを立体的に浮かび上がらせることに長けているバンドだと実感させてくれる“蕾”。大切な人にとって必要な存在となるのは容易ではなく、示したつもりの理解が相手の心を閉ざしてしまうこともあるが、いつかわかり合える時が来ると信じ続ける姿を描いているこの曲は、寂しさ、不安、希望、喜び、ひたむきさなどを複雑に渦巻かせている。ストレートな展開では、形にしたいものを具現化できないと感じた結果、思い切ったリズムの変化を盛り込んだサウンドアレンジへと辿り着いたのだと思う。かけるべき言葉が見つからず、ただ黙ってそばにいることが、いつの間にか相手の心の支えになっていたり、気の利かない不器用な言葉が硬直した心を溶かす温もりにもなったりもする人間関係のリアルを映し出す様が、テレビアニメ『僕のヒーローアカデミア』のエンディングテーマにふさわしい。思い浮かぶキャラクターの心情をシンクロさせて聴くと一際胸に沁みる。(田中大)(『ROCKIN'ON JAPAN』2024年7月号より抜粋)
『ROCKIN'ON JAPAN』7月号のご購入はこちら