自分の大切な人は、自分と出会う前に何を夢見ていたか。どちらかが先に死んだ時、もう1人はどんな人生を歩むのか――という「思い出」「未来」の話をぐっと「今、ここ」へとたぐり寄せる、静かな迫力に満ちた言葉……“魔法の料理 ~君から君へ~”で時空を超えた「未来への願い」を歌い上げた藤原基央は、“宇宙飛行士への手紙”で「人が人と一緒にいたいと願う」という日常的な行為がどれだけの奇跡に満ちたものであるかをリリカルかつ厳粛に指し示し、「大切な人に向き合うこと」の照れや衒いを太陽風のように清冽なサウンドでかき消してみせた。そもそも「『今、ここ』にある奇跡」を描くことにかけては右に出る者のいない藤原だが、その視線はここにきて明らかに鋭さと優しさを増している。そのことは、灰色の没個性ライフを渾身の人力ドラムンベースで輝かせる“モーターサイクル”でも同じだ。生活のニヒリズムに溺れるのではなく、ニヒリズムと向き合い、全身全霊を傾けて克服する――という彼の闘い方は、いよいよ宇宙まるごと包み込むほどに壮大なスケールとエネルギーを帯びつつある。(高橋智樹)