兄妹を愛せよ!

プライマル・スクリーム『ビューティフル・フューチャー』
2008年07月16日発売
プライマル・スクリーム ビューティフル・フューチャー - ビューティフル・フューチャービューティフル・フューチャー
今回の巻頭特集で取り上げたプライマル・スクリームとベック。時代に対応したミューテーションを躊躇なく繰り返しながら、今なおも最前線でフレッシュな刺激を提供してくれる2アーティストが、それぞれ新機軸となるだろう傑作をほぼ同時にリリースしたわけだが、面白いのは、その対照的なタイトル。かたや“美しき未来”を謳歌し、かたや“現代の罪悪感”に悩んでいる。それだけで判断すると、まるで2作品は陰と陽の関係にあるように思えるが、実はこの2作品、根幹にあるテーマとムードはまるで同じなのだ。

ベックの新作は、特集のリードで書いたとおり、現代社会の悩みを妖艶なメロディとして綴ったアルバム。逆に、一見、パッパラパーのプライマルだが、かつてないほど陽気なボビーは、しかし現代社会で無感覚に生きる“ゾンビー・マン”たちの“美しき未来”の虚しさを思い切り皮肉っている。ようするに「このままじゃ美しき未来なんてあり得ない」、そんな切迫感が両作品を貫くのだ。そして、さらに面白いのは2アーティストともそれを極上メロディとアッパーなビートと、それぞれ聴く者すべてが心底楽しめる音楽に変換していて、一方的にリスナーに悩みを押し付けるのではなく、あくまで共有することに徹していること。ひとりじゃ無理だけど、みんなとなら糸口は見出せる。クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジのジョシュ・オムの男気溢れるギターが荒れ狂うM10で「ギミックを信じるな」と警告しつつも、「兄妹を愛せよ」とボビーががなっているのは、つまりそういうことである。(内田亮)
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