本物の奇跡

くるり『奇跡』
2011年06月01日発売
SINGLE
くるり 奇跡
くるりの「映画音楽」へのスタンスは独特である。いわゆる「外注仕事」的なドライな作品は一曲もないのだが、かと言って、映画にどっぷり浸かり、その世界をそのまま投影した100%タイアップ仕様の曲にもならない。“ハイウェイ”も“言葉はさんかく こころは四角”も、そして“キャメル”もそうだった。どことなく現在進行形のくるりのモードを抽出しながら、スクリーンにもさらっと溶け込んでいく絶妙なバランス感覚は、岸田の天才性をまた別の角度から物語っている。そして、この『奇跡』である。同名映画の主題歌としても流れるこのナンバーは、大げさでもなんでもなく、くるり史に刻まれる名曲。フォーキーで哀愁を漂わせる前半から、アウトロのブルージーな空気まで、一糸乱れぬアンサンブルは圧巻。そして岸田の歌が本当に素晴らしい。5月号のインタビューで岸田は「本物を作れって言われてる気がするんです」と発言していたが、数々の迷いを払拭した彼の、ひとつの「回答」がこの曲に集約されているような気さえする。このモードは、くるりに間違いなくフィードバックされるだろう。(徳山弘基)
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