ポップでディープな夏ソング

NICO Touches the Walls『夏の大三角形』
2012年05月16日発売
SINGLE
NICO Touches the Walls 夏の大三角形
ここ数作の彼らは、ロック表現の深さを追求してきたように見える。その到達点は最新作『HUMANIA』と先月までの全国ツアーであり、彼らは日本のロック史でも類を見ない重層的でサイケな物語世界を構築して見せた。ただし、彼らの音楽から陽性のポップさが一貫して失われていないのは特筆すべき点だ。闇が深まるほどに彼らのリズムは力強さを増し、溢れ出るメロディを支えていく。
 
そして、ついに彼らの陽性の部分が全開となった曲が誕生した。シングル表題曲は「カルピスウォーター」CM曲で、海辺のシチュエーションにピッタリというサマーアンセム。夏の恋のスピード感をキレの良い言葉でつづった歌世界は、ポップスメイカーとしての光村の才能が爆発している感じだ。一方、楽曲を支えるのは現在の彼ららしい演奏であり、骨太なリズムがU2やコールドプレイの楽曲にも通じる奥行きを実現している。

2曲目のギタリスト古村大介の初作詞作曲は、独特のキッチュさとポップさが共存する仕上がり。光と闇が交錯し、万華鏡のように広がっていく――そんな動的な音世界が彼らの魅力だ。(神谷弘一)
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