Photo by 古溪一道「ライブをやるっていうのは、自分たちのキャリアの中で何度もやってきたことだけど、ライブをやる、お客さんが聴いてくれる……そのことのありがたさを、何度も何度も、みんなは僕たちにわからせてくれます。すごく幸せな気持ちでした。――何だろうね、このままツアー終わるみたいだね(笑)。ありがとう!」
熱気と歓喜で満たされた幕張メッセの大空間の中、アンコールで3万2千人のオーディエンスに語りかける藤原基央(Vo・G)の、充実の一夜の歓びを丁寧に伝える言葉に、惜しみない拍手喝采が広がっていく――。
Photo by 古溪一道昨年のスタジアムツアー「BFLY」から約1年の時を経て、「
BUMP OF CHICKEN TOUR 2017-2018 PATHFINDER」がいよいよ開幕。全国アリーナおよび東名阪ライブハウスを舞台に、来年2月まで5ヶ月・29公演にわたって開催されるロングツアーだ。
Photo by 古溪一道その「PATHFINDER」初日にして、幕張メッセ2Days公演の1日目となるこの日。
まだまだツアーは続くので、曲目や演出含め内容についての記述はここでは最小限に留めさせていただくが、「今回のツアーは結構、昔の曲もやってて、『あれ? この曲何だろう?』みたいな感じの人も多いと思うんですけれども……もしよかったら『新曲?』っていう感じで聴いてくれたらいいなと思います(笑)」と直井由文(B)がMCで話していた通り、結成から21年に及ぶバンドヒストリーから幅広い年代の楽曲に(シングルコレクション的な視点とは異なる形で)ひとつの道筋を貫き通すようなセットリストを構築してみせたことは、この日のアクトの大きな特徴と言えるだろう。
Photo by 古溪一道何より印象的だったのは、そんな楽曲のひとつひとつが、鳴った瞬間に視界をクリアに研ぎ澄ませるような覚醒感とともに響き渡っていたことだ。
今回のツアーに冠せられた「PATHFINDER(探求者)」というタイトルそのままに、楽曲が求めるサウンドを丹念に追い求め磨き上げていくその姿勢が、既存曲の数々にも今この瞬間の輝度とダイナミズムを与えて、幕張メッセを終始熱いシンガロングへと導いていく――一音一音に進化の息吹が宿る、珠玉の音楽空間がそこにはあった。
Photo by 古溪一道そして――そんな名演の随所でひときわ鮮烈な覚醒感とともに響いていたのが、アルバム『Butterflies』以降の最新楽曲群だった。
抑制の効いたシンプルなアンサンブルを、藤原の歌のリズムが力強く躍動させてみせた“記念撮影”。升秀夫(Dr)の繰り出すタイトなビートとともに、生命の手応えを壮大な多幸感あふれるアンセムに結実させた“アンサー”。増川弘明(G)の奏でるアルペジオの中、バンドの歩んできた道程と4人の絆、さらなる音楽の冒険への意志を決然と歌い上げた“リボン”……新たなサウンドスケープを編み上げているこれらの楽曲が、今回のツアーの揺るぎない軸となっていることを、この場にいた誰もが感じたはずだ。
Photo by 古溪一道「この日ために生きてるようなもんだ俺は!」と熱い叫びを突き上げていた直井に、「チャマは美味しいお肉とか食べるとすぐそういうこと言うから(笑)」と突っ込んでいた藤原。「最高の初日をどうもありがとう!」と満場の観客に感謝の想いを伝えていた増川。「秀ちゃんどう?」と直井に問われ、オフマイクながら「最高!」と感激を伝えた升。4人それぞれにこの舞台を全身で謳歌していることが、その表情からも伝わってきた。
Photo by 古溪一道「結成21年なんだけど、もうちょっとツアー初日は『大人の余裕』とか『21年目のバンドの貫禄』みたいな、そういう気持ちでどっしりやれんのかと思ったら……すっごい嬉しかった! 本当にどうもありがとう!」……すべての演奏を終えた後、藤原はそんなふうにオーディエンスに語りかけていた。「みんなからもらった力を、全国で音楽に変えて、届けてこようと思います」という藤原の宣誓の言葉が、最高の余韻とともに胸に残った。
「PATHFINDER」ツアーは来年2月10・11日のツアーファイナル=さいたまスーパーアリーナまで計29公演にわたって開催される。そして、その旅路の先に広がるBUMPの音楽世界の未来図は、これまで以上に眩く豊かなものになるはずだ――という抑え難い期待感を抱かせるには十分すぎる、至上のステージだった。(高橋智樹)
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