め組/柏ThumbUp

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●セットリスト
1. Amenity
2. マイ・パルプフィクション
3. お化けだぞっておどかして
4. 独りな武士
5. ホワイトタイガー
6. 1+1=
7. 愛をさけるチーズみたいに
8. 5.4.3.2.1
9. 余所見
10. ござる
11. キキ
12. クラシックダンサー
13. Self Liner Notes DS
14. あたしのジゴワット
15. しあわせのほっぺ
16. 悪魔の証明
17. 500マイルメートル
(アンコール)
EN1. ジュゴンの背中に乗って
EN2. ぼくらの匙加減
(ダブルアンコール)
WEN1. 放課後色


ビートルズならリバプール。サザンオールスターズなら湘南・茅ヶ崎。聖地巡礼などといった大仰な話ではないけれど、そこには確かに、いくつもの物語の背景となる「歌のふるさと」があった。菅原達也(Vo・G)の故郷である千葉・柏で繰り広げられた「め組“Amenity”ワンマンツアー裏ファイナル 〜柏でセイイェーイって言ってる場合じゃなくなくなくない?〜」。昨年に全国6公演が行われたツアーの延長戦でありながら、め組というバンドの新たな旅の始まりをひしひしと感じさせた、2019年初ワンマンだ。

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COUNTDOWN JAPAN 18/19出演時、ツアー前からサポートを務めていた寺澤俊哉(B)と外山宰(Dr)の正式加入が発表され、晴れて5人の新体制で転がり始めため組。今回のステージでは、それぞれに「寺ちゃんこと〜(寺澤)」、「(名前がつかさなので)ツカちゃんこと〜(外山)」という自己紹介が実にキャッチーであった。ぜひ覚えてあげてほしい。強力なリズムセクションを得て、菅原の歌が、そして出嶋早紀(Key)と富山京樹(G)のバカテクにして奔放なサウンドが、序盤から勢いよく跳ね回る。

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心ごと弾けさせる“Amenity”で始まったステージは、各地から柏に駆けつけたファンもサウンドの猛烈なスピード感に食らいついて歌声をシェアし、菅原は「すげー、すげー!!」と歓喜の声を漏らす。音源のけたたましいサイレンがフィーチャーされた“マイ・パルプフィクション”といい、重量感とタイトさを兼ね備えた“独りな武士”におけるフュージョンテイストの鍵盤プレイといい、同期を含めてがっちりと練り上げられたアレンジがかっこいい。新リズムセクションは、ただ安定感をもたらすというよりアンサンブルをギュッと引き締めてくれるのだが、“ホワイトタイガー”での寺澤は一転、うねりまくるベースで攻め込んでくるので、気が抜けない。

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エモーションを爆音で決壊させる“1+1=”、そして出嶋が前線でマイクを握る“愛をさけるチーズみたいに”といった情緒豊かな楽曲群の合間には、富山がギターで味わい深いインタールードを奏でる。め組には、いつでも音で強烈な自己主張を放てるメンバーが揃っているけれど、こんなふうに「いいバンドだな」と思わせるささやかで献身的な一幕に、グッとさせられたりもするのだ。

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菅原の編集によるMVも公開された、人生のブルースに火を点けて笑う“5.4.3.2.1”は、盛大なコール&レスポンスで盛り上がる新たなスタンダードだ。5人がそれぞれに新年の抱負を語る一幕では、出嶋が「早くこの5人で音源を形に残したい」と告げる一方、食いしん坊キャラを確立しつつある外山が「バーベキューとかで5人の思い出を形にしたい」と告げるのが可笑しい。とりあえず、5人が5人とも親密そうで何よりだ。そして菅原は、TikTokの動画でもなく、江戸の昔の火消しでもなく、「め組ってこの人たちか、ってなりたい」と語るのだった。

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“キキ”や“Self Liner Notes DS”といっため組初期からのレパートリーや、さよなら、また今度ねの“クラシックダンサー”カバーには、悶々とした思いを抱えて楽曲製作に取り組んできた菅原のキャリアが透かし見えて、胸を熱くさせる。実は、僕が今回のステージでもっとも感動したのは、歌に身振りを交え、五体を捩らせながらもくっきりと伝わる、菅原の歌声であり歌詞であった。甘酸っぱい記憶も取り返しのつかない後悔もすべて引っくるめて、菅原の歌は音楽という瞬間的な体験を永遠に変える。

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ユニゾンボーカルのブースターで大気圏を飛び出し、出嶋のソロパートが衛星の周回軌道に乗るような“あたしのジゴワット”がまた強烈だ。め組の楽曲に備わったスケール感は、まだまだ本当に計り知れない。菅原は「ここ柏なんだよ! 俺のここ(胸を指す)に溜まってるものを、皆さんにぶつけたい!」と言い放ち、“悪魔の証明”では《合言葉は/ちゅるりらら》のフックが大合唱と化して柏の夜に響き渡る。メンバーによる怒涛のソロリレー(トボけた祭り囃子からビート乱舞に移行する外山のプレイは痛快)も盛り込まれた。そして本編ラストの“500マイルメートル”で、菅原は「みんなのおかげで、人生超楽しいんだけど!」と万感の笑顔を見せるのだった。

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アンコールでは、4月に大阪・東京で自主企画ライブを開催することを発表。ゲストアクトは追って報じられるはずなので、楽しみに待っていて欲しい。そして“ぼくらの匙加減”を歌うとき、菅原は「この歌の主人公が幸せになるように、命をかけて歌います」と宣言する。故郷で、彼はどんな気持ちで歌ったのだろう。楽しく盛り上がったのと同じぶんだけ、胸をヒリヒリとさせられる。そんな歌の数々を携えて、2019年のめ組はこの場所から走り始めたのだ。(小池宏和)
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