フレデリック/新木場 STUDIO COAST

フレデリック/新木場 STUDIO COAST - All photo by ハタサトシAll photo by ハタサトシ

●セットリスト
1.LIGHT
2.リリリピート
3.TOGENKYO
4.スキライズム
5.うわさのケムリの女の子
6.RAINY CHINA GIRL
7.人魚のはなし
8.他所のピラニア
9.シンセンス(FAB!!)
10.かなしいうれしい(FAB!!)
11.まちがいさがしの国
12.KITAKU BEATS
13.オワラセナイト
14.オドループ
15.逃避行
16.エンドレスメーデー
17.飄々とエモーション
(アンコール)
EN1.夜にロックを聴いてしまったら
EN2.ハローグッバイ


フレデリック/新木場 STUDIO COAST
2ndフルアルバム『フレデリズム2』のリリースに伴い、ロングツアーを開催中のフレデリック。来年2月の横浜アリーナ公演まで続くこのツアーは、SEASON1~5に分けられていて、そのシーズンごとに異なるテーマを掲げているのだという。4月13日にはSEASON1、つまりツアーのキックオフにあたるワンマンライブ「FREDERHYTHM TOUR 2019~夜にロックを聴いてしまったら編~」が開催された。今回の記事ではその模様をレポートしていきたい。

フレデリック/新木場 STUDIO COAST
ライブタイトルにある「夜にロックを聴いてしまったら」という言葉は、『フレデリズム2』収録曲の曲名から引用したもの。同曲のイントロをループさせたようなSEをバックに4人が登場した。三原健司(Vo・G)が両腕を上げ、振り下ろしたタイミングでバンドイン。そうして始まったのは『フレデリズム2』の1曲目、“LIGHT”だった。フレデリック流EDMというべきこの曲は、ダンスミュージックの裾野の広さ、奥深さや面白さを伝えてきた彼らならではの攻めの一手であり、この曲の誕生を機に、BPMを制限したコンセプチュアルなライブを行っていたのも記憶に新しい。フロアを見てみると、飛び跳ねている人もいるし、手拍子している人もいるし、ゆらゆらと揺れている人もいる。受け取り方は人それぞれ。その自由な雰囲気が今のフレデリックの在り方を象徴しているように思えた。

フレデリック/新木場 STUDIO COAST
2曲目の“リリリピート”が始まる頃には場内は既に蒸し暑く、メロディの語尾をずり上げるようにしてコーラスする三原康司(B)をはじめ、メンバーもテンションが高そうだ。曲間ゼロ秒で“TOGENKYO”、“スキライズム”を演奏すると、スモークがもくもくと湧き上がり“うわさのケムリの女の子”へ。“RAINY CHINA GIRL”ではレーザー光線が波紋のような模様を描き、幻想的な空間を演出した。

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途中のMCで「『フレデリズム2』の曲をいっぱいアレンジして、俺たちの色にもっともっと染めていきたい」、「こんなに想像を超えてくるんだって思ってもらえたら嬉しい」という話があったように、音源から大きく変化を遂げた楽曲も多く、フレデリックの持ち味であるライブならではのアレンジを存分に楽しむことができた。例えば、“LIGHT”には途中に康司、赤頭隆児(G)、高橋武(Dr)によるソロ回しがあったため、「え、アルバム曲がもうこんなに進化しているの?」と驚かざるをえなかったし、そのような場面がライブが始まった直後に訪れたことも衝撃的だった。また、『フレデリズム2』以前にリリースされた楽曲に関しても、今の彼らが演奏するからこその味が出ていた。特に印象的だったのは“人魚のはなし”(2014年リリース『oddloop』収録曲)。無伴奏の状態から始まったこの曲での、音程の抑揚をあえてつけず、息の圧力のみで言葉を押し出すような健司の歌い方は、リリース当時には見受けられなかったものだ。

フレデリック/新木場 STUDIO COAST
さらに、“シンセンス”と“かなしいうれしい”はアコースティック編成=通称「FAB!!」(Frederic Acoustic Band)での演奏だった。自分たちはライブバンドなのだという自負と誇りの下、思考を巡らせ、工夫を凝らす4人の演奏は、長尺のワンマンだとなお見応えがある。さらに今回の場合、先月まで別のツアーを行っていたためブランクがほとんどなく、ツアーの初日とは思えないほど演奏自体の精度も抜群だ。向かい合ってじゃれ合うように鳴らす康司と隆児、それに触発されて手数を増やす武、そんな3人に背を預けてのびのびと歌う健司――という構図にバンドの風通しの良さ、好調っぷりを垣間見た。

“まちがいさがしの国”からいよいよ後半戦へ。「新木場どうしますか? 遊ぶ? 遊ばない? 遊ぶよなあ!」(健司)というおなじみの呼びかけの時点でフロアが沸いていた“KITAKU BEATS”、隆児が上体を大きく反らしながらソロを炸裂させた“オドループ”などを経て、本編クライマックスでは『フレデリズム2』収録曲を3曲続けて披露した。新旧を網羅したセットリストを堪能したあとで『フレデリズム2』の楽曲を聴くと、フレデリックの変化していった部分と変わらず守り続けている部分、その両方を発見することができるため、バンドの歴史が透けて見えるようだ。ラストの“飄々とエモーション”では、「新木場のロック、聴かせてくれ!」と投げかけるより先にオーディエンスが目一杯シンガロングし、それに対し、健司がクリアなロングトーンを返していく。この場を去るのが名残惜しいのだと言わんばかりに、アウトロの最中も両者は歌声を交わし合っていた。

フレデリック/新木場 STUDIO COAST
アンコールではまず“夜にロックを聴いてしまったら”を演奏。これまでのライブでも大切なメッセージを託されてきた“ハローグッバイ”では、ここのところバンド界隈において悲しいニュースが多かったこともあってか、《生きる》という言葉が一際力強く歌われていた。「楽しいことも悲しいことも興味を駆り立てられることもあるし。今一つひとつ感じられることがまた曲を大きくしてくんかなって思ってます」と健司。全国を巡り、様々な感情を携えながら、『フレデリズム2』およびフレデリックは豊かな進化を重ねていくことだろう。

フレデリック史上最長の全国ツアーは、2020年2月24日(月・祝)、横浜アリーナ公演まで続いていく。(蜂須賀ちなみ)
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