欅坂46/東京ドーム

欅坂46/東京ドーム - All photo by 上山陽介All photo by 上山陽介

●セットリスト
1. ガラスを割れ!
2. 語るなら未来を…
3. Student Dance
4. エキセントリック
5. 世界には愛しかない
6. 青空が違う
7. バレエと少年
8. 制服と太陽
9. 二人セゾン
10. キミガイナイ
11. もう森へ帰ろうか?
12. 僕たちの戦争
13. 結局、じゃあねしか言えない
14. サイレントマジョリティー
15. 避雷針
16. アンビバレント
17. 風に吹かれても
18. 危なっかしい計画
19. 太陽は見上げる人を選ばない
(アンコール)
EN1. 不協和音
(ダブルアンコール)
WEN1. 角を曲がる


欅坂46が9月18日~19日の2日間にわたり、初となる東京ドーム公演を開催した。

8月から宮城、神奈川、大阪、福岡をまわり、東京ドームという大舞台で有終の美を飾った「夏の全国アリーナツアー2019」。本公演は、初日のアンコールで披露された“不協和音”がTwitterのトレンド1位に、さらに2日目終演後から次の日にかけて「平手友梨奈」がトレンド入りし続けるなど記録的な反響があった。欅坂46が世の中に与える影響の大きさを改めて実感しつつ、ライブを観て気付いたグループの変化について、千秋楽の模様と共にレポートしていきたい。

欅坂46/東京ドーム

この日の開演前アナウンスは菅井友香、上村莉菜、原田葵の1期生チームが担当。「それでは間もなく開演いたします、最終日行くぞー!!」という気合い十分のかけ声で会場が暗転すると、寒色のライトがステージ上をぼんやりと照らし、そこに制服姿の平手がひとりで登場した。虚空を見つめながら、時にバレエ風のしなやかな動きを交えつつ、一歩一歩確かめるようにステージを歩いていく。言葉を発することなく、ただそこに存在しているだけなのに、その佇まいからは少女の儚さや危うさが漂う。平手はステージ上に置かれたピアノの鍵盤にそっと触れ、「ポン」と一音鳴らした。それを合図に大音量の“Overture”が流れ出し、会場には数えきれないほどの緑色の光が揺れ、今までで一番力強く感動的なシンガロングが響き渡った。

欅坂46/東京ドーム
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真っ赤に染まったステージに赤い衣装を纏ったメンバーが現れ、“ガラスを割れ!”で本編がスタート。炎が上がる迫力満点の演出と、割れんばかりの≪Rock you!≫のかけ声が会場の空気を震わせ、歓声が飛び交う。レーザービームが駆け巡る中、“語るなら未来を…”を畳みかけた後は、次々とステージに浮かび上がる「標識」通りの動きを取り入れたダンスパフォーマンスを経て、“Student Dance”になだれ込んだ。メンバーはアリーナの端まで十字に伸びた花道に駆け出し、平手はスマートフォンのカメラを使って至近距離からメンバーの姿を撮影。大きなモニターに映し出されたその映像は時たま乱れ、ドキュメンタリーさながらの緊張感があった。ダンスパートでは中央ステージを囲むように勢いよく水が噴き出すなど、何が起こるかわからない演出の数々に一瞬たりとも目が離せない。曲が終わると、再びステージにひとりきりになった平手が、ピアノの上に乗って美しく舞ってみせる。今回のライブは曲間も世界観を途切れさせず、観る者を惹きつけたまま我に返る隙を与えない。まるで全編を通して、1つの作品を創り上げているかのようだ。そんなドラマティックな繋ぎから始まった“エキセントリック”では、下目遣いに≪もう、そういうの勘弁してよ≫と言い放った山﨑天の静かな迫力に、客席からどよめきが起こった。

欅坂46/東京ドーム
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髪を切って少し大人びた菅井が「ついにツアーも千秋楽……欅坂46、東京ドームにやってまいりました!」と挨拶をし、MCタイムへ。この大舞台にキャプテンも相当緊張していたようで、初日の本番直前にリップを塗ろうとしたら、力を入れすぎて壊してしまったそう。「しーちゃんもかなり緊張してたよね?」と話を振られた佐藤詩織は、「待ちに待った東京ドームに立って、全然実感とか想像がつかなかったんですけど……」と感極まって声を震わせる。それでも涙を堪えながら「こうやって足を運んでくださった沢山の方がいるおかげで会場が綺麗な色に染まって。セットを作ったり進行してくれたり演出を考えたりしてくれているチーム欅坂の皆さんのおかげでこういう場所でライブが出来て。すごく恵まれているなって感じました」としっかり感謝の気持ちを述べた。そしてここからは、2期生のメンバーがMCをまわすことになり、まずは松田里奈を中心に田村保乃、森田ひかる、山﨑の4人でトークを展開。グループに入った時には葛藤もあったが周りに助けられたことや、欅坂46を好きになったきっかけなどが素直な言葉で語られていく。時々言葉に詰まってしまったり、山﨑の声がマイクに拾われなかったりといったハプニングもあったが、その都度客席から「頑張れ!」、「マイク!」とフォローの声が上がっていたのが微笑ましかった。

欅坂46/東京ドーム
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蝉の鳴き声が響き、ステージには綺麗な青空が広がっていく。そんなシチュエーションで始まった“世界には愛しかない”では、白い制服に衣装チェンジしたメンバーが映画『雨に唄えば』を彷彿させる傘を使ったダンスを披露。そのまま“青空が違う”に突入すると、守屋茜と渡邉理佐、菅井と渡辺梨加がそれぞれ「KEYAKIZAKA 46」と書かれた大きな気球に乗って上空から手を振り、菅井は満面の笑顔で「良く見えるよー! ありがとう!」と呼びかける。原田のキュートすぎる表情に撃ち抜かれる人続出の“バレエと少年”の後は、彼女たちの人生にも重なる“制服と太陽”、“二人セゾン”という大切な2曲が続けて披露された。この日の平手のソロダンスパートは、ひとつひとつの動きに想いを込めているような切実さがあった。

欅坂46/東京ドーム
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“キミガイナイ”から“もう森へ帰ろうか?”では水柱がいろんな色に光ったり、ステージいっぱいに巨大な欅の木が現れたりと、幻想的な演出で客席を魅了していく。歌詞に書かれている言葉以上のものが伝わってくるたび、欅坂46の真骨頂はやっぱりライブにあると思い知らされる。曲単体で聴くのと、こうしてライブで体感するのとでは全く違う。歌とダンスに加え、ステージに立つメンバーの表情や佇まい、世界観に色を付ける演出も全て合わせて、欅坂46の表現は完全体になるのだ。

欅坂46/東京ドーム
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五人囃子のユニット曲“結局、じゃあねしか言えない”では会場一面が綺麗な黄色に染まり、その絶景の中を自転車で走り抜けるパフォーマンスもあった。そして2回目の2期生によるMCは、武元唯衣、松平璃子、井上梨名、関有美子が担当。欅坂46がデビューする前からすでにファンだった関にとって、欅坂46は「落ち込んだ時に一緒にしゃがみこんで背中をさすってくれるような」存在だという。今さらながら2期生は本当に欅坂46が好きで、この世界観に共感して入ってきたのだとしみじみ嬉しくなってしまった。最後は武元が「もっともっとチーム欅坂の力になれるように全力で頑張るので、これからもどうぞよろしくお願いします!」と前向きな宣言で締めた。

欅坂46/東京ドーム
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いよいよライブも後半戦に差し掛かり、ここで欅坂46のアンセムソングである“サイレントマジョリティー”が放たれた。新衣装を身に纏い、モーセでは平手がいつもよりゆっくりとメンバーの間を歩いていく。“避雷針”では大迫力のリリック映像が映し出され、曲の後半にはステージに大きな月が浮かびあがった。毎回違う演出で披露されるたび、その曲の聴こえ方が変わったり、新たな魅力を見つけたりするのもライブの醍醐味だ。“アンビバレント”では色とりどりの巨大バルーンがアリーナの頭上を転がっていき、“風に吹かれても”が始まると会場はこの日一番の爆発的な熱狂に包まれた。小林由依が声を枯らしながら「お前ら、サイコー!」と叫び、“危なっかしい計画”へなだれ込むと、客席のボルテージはますます急上昇。メンバーは花道に広がり、会場中を見渡しながら楽しそうにタオルを振り回す。最後は菅井が「ここにいる皆さん一人ひとりが明日からも頑張れるように、メンバー一同心を込めて歌います」と告げ、“太陽は見上げる人を選ばない”を披露。メンバーはあらゆる方向を向いて、一人ひとりの胸に届けるように丁寧に歌い上げる。その想いを受け取った客席から、大きなシンガロングが起こった。

欅坂46/東京ドーム

この幸せな光景を前にして、ある変化に気付いた。それは、楽曲に宿る主人公の意志を掲げ続けてきた欅坂46がいつの間にか、同じ時代を生きる人々に「勇気」や「強さ」を届けるグループになっていたということ。“サイレントマジョリティー”の≪夢を見ることは時には孤独にもなるよ/誰もいない道を進むんだ≫という歌詞は、今だからこそ彼女たち自身のメッセージとして世の中に響く。“黒い羊”もそうだ。グループのアイデンティティやスタンスを貫き通してきた今までの道のりがあるから、この曲は「黒い羊たち」の心を抱きしめることが出来る。彼女たちが欅坂46として過ごしてきた時間は、大勢の人にとって「自分らしく生きる」ための力になっている。“太陽は見上げる人を選ばない”のパフォーマンスが終わった時、何かを授けられた感覚が確かにあった。そんな感慨深いラストで本編はエンディングを迎え、メンバーが去った後のステージにはキラキラと輝くミラーボールの光だけが残った。

欅坂46/東京ドーム

もちろんすぐに「欅坂46コール」が起こり、アンコールはあの場にいた全員の期待通り“不協和音”が披露された。激しいダンスと怖いくらいに鋭い眼光、会場中に漂うヒリヒリ感に、ただただ息を止めるように集中する客席。≪僕は嫌だ≫の絶叫から特効がさく裂し、曲が終わった瞬間にメンバーは姿を消した。まるで突然吹き荒れた嵐のような衝撃的なパフォーマンスにざわめきは止まず、再び「欅坂46コール」が沸き起こった。これに応えてステージに現れたのは、赤いリボンが付いた灰色のセーラー服姿の平手たったひとり。そしてダブルアンコールは、まさかの“角を曲がる”だった。平手が主演を務めた映画『響 -HIBIKI-』の主題歌でありながら、音源リリースはされていないこの曲。孤独が滲む歌詞や、心のもがきをそのまま体現したダンス、鳥肌が立つほどストイックで真剣な眼差しが胸を熱くさせる。ふと、平手が来年の春に高校を卒業することを思った。彼女にとって学生時代最後の夏が、欅坂46のツアーと一緒に今ここで終わる。この日の彼女の佇まいが明らかに違っていたのは、そんなひとつの決別も関係していたのかもしれない。

欅坂46/東京ドーム
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圧巻としか言い表せないパフォーマンスの後、平手は安堵にも似た微笑みのような、でも今に泣き出しそうにも見える表情を浮かべていた。そしてしっかり目線を客席に向け「ありがとうございました」とお辞儀をし、ライブを締めくくった。とんでもないものを目撃してしまった、そんな興奮と感嘆が混ざる滝のような歓声に包まれながら、東京ドーム公演は幕を閉じた。(渡邉満理奈)

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【速報】欅坂46、初の東京ドーム公演2日目を観た
欅坂46にとって初の東京ドーム公演が終幕した。 「夏の全国アリーナツアー2019」の追加公演として、9月18日~19日の2日間にわたり開催された今回のライブ。彼女たちは、見事に東京ドームという大舞台を自分たちのものにしていた。あの広すぎる会場一面が緑に染まり、滝のような大歓声に包まれた時…
【速報】欅坂46、初の東京ドーム公演2日目を観た
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