●セットリスト
1.Now here, No where
2.Warp
3.Kitchen
4.Cycle
5.message
6.My HERO
7.fiction
8.Montage
9.Chicken race
10.midnight cruising
11.Galapagos
12.me?
13.swim
14.labyrinth
15.hello
16.Shine
17.Utopia
18.Alien
19.discord
20.Horizon
21.Puzzle
22.Letter
23.milk
24.Feel
25.monolith
(アンコール)
EN1.Squall
EN2.Remember
EN3.Give me
さいたまスーパーアリーナで開催された04 Limited Sazabys史上最大規模のワンマン「YON EXPO」。EXPO=博覧会とタイトルにもあるように、場内ではアミューズメントゲームコーナーやカラオケブース、写真展など様々な催しを展開。ライブ開演前からたくさんの人で賑わっていた。
17時半からのライブは、まず、一見平凡な4人だが、実は他の人と違うところがひとつだけあって――という洋画風のムービーからスタート。1曲目は“Now here, No where”で、ステージを紗幕が隠し、その上に歌詞が映る。ラスサビに突入すると破裂音とともに幕落ち。スーツ姿のGEN(B・Vo)、RYU-TA(G・Cho)、HIROKAZ(G)、KOUHEI(Dr・Cho)がステージ上に現れた。GENが今日の日付と会場名、そして「名古屋代表、04 Limited Sazabysです!」までを一息で一気に告げると、客席から大きな歓声が。直後、ツインギターのカッティングが気持ちよく鳴り、最新シングル『SEED』収録曲“Cycle”が始まる。
同じく最新シングル収録曲である“Montage”では勢いよく炎が上がり、“fiction”では特効の煙が噴出。“midnight cruising”では、ミラーボールが散らす光によってアリーナの天井が星空に変わった。メンバーが一度捌け、普段のライブのようなカジュアルな服装に着替えている間には、RYU-TAに似たラーメン屋店主「麺や おがた」のVTRを放映。彼が中津川から埼玉まで300キロマラソンをし、自慢のラーメンを届けに来ることが報せられる。
中盤ではGENが「普段しないことをしたい」、「楽器を弾かずに歌いたい」と言い出したのをきっかけに、GEN:ボーカル、HIROKAZ:アコースティックギター、RYU-TA:マラカス、KOUHEI:タンバリンというアコースティック編成にチェンジ。二手に分かれてアリーナの通路を歩きながら“labyrinth”を披露した(このアレンジで聴くと言葉のリズムとノリが際立って面白い)。そうしてアリーナ中央付近に設置されたセンターステージへ到着すると、今度はRYU-TAがベースに、KOUHEIがカホンに切り替えて“hello”、“Shine”を演奏。この間、ステージが仄暗い照明で照らされているのみだったため、オーディエンスがぽつぽつとスマホのライトを点灯させる。それに対し、メンバーが思わず「綺麗……」と呟く場面も。
ここで「麺や おがた」が客席後方から登場。ステージ上のメンバーにラーメンを届けるも出前箱の中身は空っぽ、とオチがついたところでライブは後半戦へ差し掛かる。KOUHEIの繰り出す強烈なリズムや、RYU-TAの熱い煽りで曲間を繋げながら“Utopia”、“Alien”、“discord”と重量感のある曲を続けたあとは、この日何度目かのMCへ。ここではGENが、今年はバンド界隈でも悲しいニュースが多く、また、自分自身体調を崩していた時期があったため、「バンドが続く事は当たり前じゃない」と改めて実感したという話をし、そのうえで「しっかりこの景色、時間を噛み締めて、瞬間瞬間を刻み込んで残していきたいと思います」、「俺たちの音楽がみなさんの人生のサントラになったらいいなと思います」と語っていた。
そうして20曲目に演奏されたのは「大切な曲だからフェスではあまりやらない」という“Horizon”。最初はボーカルとギターのみで届けられる願いと希望の歌に、バンドが色を与え、景色がどんどん広がっていく。地球上の様々な地平線・水平線を捉えた壮大な映像を背にした4ピースは、どこまでも駆けて行ってしまいそうなほど疾走感抜群で、しかしどことなく切ない響きをしていた。その余韻に浸る間もなく、RYU-TAが“Horizon”のラストを弾いている間にHIROKAZが別のフレーズを被せる形で“Puzzle”がスタート。“milk”では2番のAメロをGENが歌わずにいたが、後のMCによると、「込み上げてきて言葉が出てこなかった。そこの歌詞スゲー好きなのに」とのこと。この人のこういう場面、珍しいように思う。
今日のチケットがまだ数百枚残っている状況のなか、ソールドアウトしたとアナウンスするかどうか、スタッフから尋ねられたが、「自分たちを必要以上に大きく見せたくない」という考えや、「バンドの見栄のせいで今日急遽来られるようになった誰かの可能性を潰したくない」という想いから「(ソールドアウトしたと言うのは)嫌です」と断った。そしてそんな自分の意見をメンバーもチームも尊重してくれた――というGENが語ったエピソードには、フォーリミがいったい何を大事にしているバンドなのか、何を鮮やかに捨てることができ、何を死んでも守り通すバンドなのか、ということが端的に表れていた。
“Feel”、さらに「さいたまスーパーアリーナ、この曲知ってるやつ何人いんの!?」(GEN)からの“monolith”で本編終了。アンコールは2曲と思いきや、エンディング映像が「麺や おがた」が究極のスープを探し求める内容に差し替わっていたため、「こんなんじゃ終われないよ!」とメンバーが再々登場する展開に。その後、ワンマンのアンコールでしかやらない曲=“Give me”で改めて締め括ったのだった。「いつかみんな自分たちの音楽を卒業していく」とよく言っていた、そして武道館では「みんなの青春にはなりたくない。できれば一生一緒にいたい!」と叫んでいたGENは、ここ、さいたまスーパーアリーナで「これからも一生一緒にいてください!」と笑ってみせた。
フォーリミのように、ワンマンでも対バンでも、ライブハウスをゴリゴリとまわるタイプのバンドの場合、ライブハウスでやっていたことをそのままアリーナに持ち込むという選択肢もあったはず。しかし彼らはそれを意図してやらず、エンターテインメントに振り切った、これはアリーナ仕様だとある意味割り切ったようなライブを行った。
それはなぜか、というと、「(YON EXPOが)旅行みたいに非現実的な空間になれてたら嬉しい」、「ここには政治も宗教も民族もないから、楽しむことだけに集中して遊んでってください」と語っていたように、誰もが純粋な気持ちに還れる「遊び場」を作りたかったというのがまず一つ。そしてもう一つは、音楽の競合相手はもはや音楽ではなく、ゲームやタブレット端末だと言われて久しいこの時代で、全部巻き込んでバンドが面白いことをやるとしたらいったいどういう形になるのか――を彼らなりに考えた結果がこの日のライブおよび「YON EXPO」だった、ということなのでは。フォーリミは今、リスナーの生活にまで侵食する意思と覚悟を持って活動している。それは『SEED』をCDではなく「缶」という形態でリリースしていた点からも読み取れることだ。
武道館もやった、アリーナツアーもまわった、ハイスタとツーマンもした、「AIR JAM」のステージにも立った。そんななか、フォーリミはこれからどこへ向かうのか。その片鱗を垣間見ることのできた日だった。(蜂須賀ちなみ)