AA= @ 恵比寿リキッドルーム

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AA=、新作『#2』リリース後の初ライブ。平日火曜日にも関わらず多くの人々が詰めかけたリキッドルームのフロアからは、破裂寸前まで膨らんだ緊張混じりの大きな期待が感じられていた。イントロダクション風に『#2』冒頭の“prologue{2+2=4}”が響き渡り、お馴染みのサポート・メンバーと共にTAKESHIがステージに姿を現す。なんと全員、“GREED…”のPV(AA=のオフィシャルHPで公開中)に登場した、スーツ+ブタ型マスクという格好である。これは盛り上がりに拍車をかける。ギターのMINORUが大振りな蝶ネクタイを合わせてしまっていることもあって、不気味ではあるのだがどこかコミカルで可愛らしく見えてしまうのも面白い。

そして新作の曲順どおりに“2010 DIGItoTALism”からライブ本編がスタートしたのだが、開始数秒でプログラミングと同期するバンド・サウンドの、凄まじい音の精度に打ちのめされることとなった。まるで、これまでの同期型ダンス・ロックすべてにオールドファッションの烙印を押して追いやるような、異常な統制ぶりと緊迫感である。バラ巻かれるエレクトロニックなノイズが、浴びせかけられるけたたましいビートが、完璧にコントロールされている。続いての“INDUSTRIAL”イントロとともに、フロアからは大きな歓声が沸き上がった。

AA=はこれまで、ジョージ・オーウェルの『動物農場』(特に前半部分)をモチーフにした、人間の独善と搾取に対して動物の視線から警鐘を鳴らすテーマを取り入れていたが、『#2』におけるテーマは、狡猾・周到に迫り、そしていつしか人の無意識部分にまで食い込んでくる管理社会の恐怖についてである。さしずめ、オーウェルの『1984年』を現代型にリメイクした世界観を言うべきだろうか。『#2』の楽曲群の背景となるショート・ストーリーは、オフィシャル・サイトの「#2 Story」においても明かされている。

つまり、今のAA=のライブにおける完璧なまでのコントロールぶりというのは、『#2』の世界観によって裏付けられたものであり、管理社会の脅威を描き出すためのものなのである。そのコンセプトの徹底がまた凄い。楽曲と照明とのシンクロもまた素晴らしくて、まったくステージ上のどこを観ればよいのか困るほどだ。

支配に対する抵抗因子の姿を描いた、勇ましいシンガロングを牽引しながら疾走するハイ・ボルテージ・ナンバー“meVIR”、それを弾圧しようと、システマティックな同期サウンドとともに脅威となって迫り来る“BPMaster”。そんなドラマチックで緊迫感に満ちたせめぎ合いが矢継ぎ早に展開される中、唐突に、強い光量が注がれる中で生命の温かみが感じられるような、“4 leaf clover”が差し込まれる。TAKESHIとSHIRAKAWA(BACK DROP BOMB)が、交互に美しいメロディを歌っている。

『#2』の収録曲そのままに“FREEZE”までが演奏され、そしてメンバーはステージから去った。“epilogue{sonata no.8}”が流れる中にアンコールの催促が巻き起こっていたが、TAKESHIが再度ステージに現れてオーディエンスに礼をし、それ以上楽曲はプレイされなかった。1時間にも満たないパフォーマンス。「え、終わり?」と、ちょっと呆気に取られてしまったのも事実だ。だが、コンセプチュアルな世界観のアルバムを完璧な統制のもとにステージで再現することによって、今回のライブは成立していた。サウンドも、メッセージも、照明も、すべて見事なクオリティで描き出され、同時に余計なものは何一つなかった。今回のTAKESHIはとにかく、高い精度で『#2』という作品の世界観をフロアに届けたかったのだろう。

サポート・メンバーのスケジュールの兼ね合いがあるからか、AA=の新作ツアーは夏フェス転戦を経て10月からスタートする予定になっている。ということは、その頃には更に演奏曲もこなれて、もっととんでもないことになっているということか。楽しみに待っていて欲しい。(小池宏和)

セットリスト
1. prologue{2+2=4}
2. 2010 DIGItoTALism
3. INDUSTRIAL
4.BASS JUNKEES
5.GREED…
6. meVIR
7. BPMaster
8. 4 leaf clover
9.TEKNOT
10.F
11.FREEZE
12. epilogue{sonata no.8}
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