カール・バラー @ 新宿タワーレコード&TOPSHOP / TOPMAN ミラザ新宿店

カール・バラー @ 新宿タワーレコード&TOPSHOP / TOPMAN ミラザ新宿店 - pic by Tiger Haginopic by Tiger Hagino
カール・バラー @ 新宿タワーレコード&TOPSHOP / TOPMAN ミラザ新宿店 - pic by Tiger Haginopic by Tiger Hagino
80000人以上の観客を集めたレディング・フェスティバルでの伝説のリバティーンズ再結成ライブ(あれは伝説と呼んで間違いない)から僅か18日、カール・バラーが遂に日本にやってきた。当初は新宿に新しくオープンするTOPSHOPのオープニング・レセプションでプレイするのみの予定だった。しかし、TOPSHOPのイベントはクローズドでリバティーンズやカールのファンは観ることが出来ないということで、ツイッターを中心にファンの草の根運動が広がり、TOPSHOPのイベント直前に同じく新宿のタワーレコードでのインストア・ライブが決まったのだ。

開演の30分前には早くもタワーレコード内のライブ会場はパンク状態、売り場通路までカールの登場を待つファンで溢れ返っている。J-POPやK-POPが陳列された7階のフロアがいきなりライブハウスに成り替わったようなありさまだ。レーベル担当氏の話によると、整理券は配布と同時に無くなったという。そりゃそうだろう。本当に久しぶりの来日、しかもリバティーンズの再結成という「希望」を経ての念願の来日なのである。たしかにピートは日本に来れないかもしれない。でも、カールが日本にやって来るということは、日本のファンにとって大きな一歩なのだから。

ちなみに開演前の舞台裏はかなりドタバタしていた。今回の来日はカールとサポートのギタリストの2人体制なのだが、このサポート君が本当に急きょ招集された助っ人だったらしく、準備不足も甚だしい状態で目に見えてあたふたしている。そんなこんなで彼はセットリストと共に今日プレイするナンバーのコード進行(!)を記したアンチョコを手にオン・ステージ。だ、大丈夫か……!? 

そして15分遅れでようやくカールが登場する。フロアの前列は早くも雪崩を起こしそうな興奮状態で、「さがって!」「柵が倒れます!」「危ない!」とインストア・ライブにあるまじき怒号が飛び交う。プレミアムモルツ片手にステージに上がったカールは黒のキャスケットに革ジャン、その下に白×紺ストライプのカットソーに黒のタンクトップ、そして黒のパンツに黒のブーツという出で立ち。既に相当飲んでいるのかご機嫌である(最終的にはタンクトップ一枚で熱唱しておられた)。

この日のセットリストはソロから2曲、ダーティー・プリティ・シングスから2曲(“デッドウッド”、“バン・バン・ユア・デッド”)、そしてリバティーンズから2曲(“デス・オン・ザ・ステアーズ”、“タイム・フォー・ヒーローズ”)の計6曲。先にも書いたが、こんな「インストア・ライブ」は見たことがない。カールがセミアコを掻きならすたびに揺れる地面、むわっとフロアに充満した湿気と汗、上気した顔でカールを見つめるファンの熱気、その全てが熱すぎるしライブハウス仕様すぎるのだ。相変わらず早口コックニーすぎて何言ってるか全く分からないカールのMCを挟みながら進むそのショウは、かつての彼らのゲリラ・スタイル、バスキング・スタイルとでも言うか、リバティーンズの原点を垣間見るようなラフでルードで勝手気ままなノリに満ちていてグッときてしまった。

僅か30分というショート・セットだったが、3曲目の“デス・オン・ザ・ステアーズ”で会場は最初の沸点に到達する。フロアを見渡せば泣いているファンもいる。かつてピート不在のリバティーンズ来日でカールがこの曲を演るたびに、私はいつもキリキリと胸が締め付けられる思いでそれを観ていた。カールからピートへとボーカルがリレーされる典型的な「二人の」リバティーンズ・ナンバーの中でも最もそのバトンタッチが鮮明で切ないこの曲ほど、ピートの不在を剥き出しにする曲は無かったからだ。でもこの日、もう胸は痛まなかった。なぜならあのレディングのステージを経た今、たった一人のカールの傍らにはそれでもピートがいるんだと、彼らは今なおリバティーンズなんだと信じられるようになったからだ。今日のカールの胸元には、どう見てもピートの私物としか思えないヒッピーライクなロングネックレスがじゃらじゃらぶらさがっている。ちなみにこの“デス・オン・ザ・ステアーズ”、途中でサポート君がミスをして「曲が終われない」というぶったまげるような展開に突入し、なんとか立て直して終盤へとよろよろ進んでいくのだが、途中のカールのギターソロの切れ味、カッコ良さといったら本当に鳥肌ものだった。

“バン・バン・ユア・デッド”も大いに盛り上がり、そしてきたきたラストは“タイム・フォー・ヒーローズ”!!! 絶叫、悲鳴、そしてもちろん大合唱!!! レディングでは途中中断というアクシデントにも見舞われたこの曲だが、この日はほぼカールひとりの力技でアレンジを加えつつシンガロング・スタイルに変形して見事に完走。全6曲を歌い終えたカールは前列のファンに覆いかぶさるようにして抱擁を交わし、ステージ横で観ていたファンともハイタッチを交わし、笑顔でさっそうと去っていった。

インストア・ライブの終演後、TOPSHOPへと移動して再びカール達のオン・ステージを待つ。こちらは言うまでも無くショップのオープンを記念したパーティーがメイン、オープンに先んじて買い物もできるということでこれまた店内は大賑わいなのだが、カール・バラーが登場してプレイすること自体よく把握していない人のほうが多かったんじゃないだろうか。シャンパン片手に談笑しているファッション業界人の前で果たしてあのダルダルなゲリラ・ギグ・スタイルが通用するのだろうか……なんて心配していたら、ショップの正面玄関から普通にカールが入ってくる。スタスタとあまりに普通に入ってくるものだから、誰も彼の登場に気づいていない。

カールがプレイするのはショップ地下の売り場だった。デニムだのアイウェアだの小物だのが陳列された売り場のど真ん中に組まれたステージは相当シュールだが、それでもカールが登場する直前にはわらわらとステージ前に人が集まってくる。さすがはかつてエディ・スリマンのアイコンだった男、ファッション業界人的にもそれなりの知名度があるようだ。こうして始まったTOPSHOPでのショウは、タワレコのセットリストにさらに2曲が追加された8曲構成で、しかも“フランス”をやりよった!“フランス”こそリバの曲中でも最もアコギ・ソロ・セットに向いたナンバーだろうに、何故タワレコではやらなかったのか謎だが、この脈絡の無さもまたカール・バラーらしさ、リバティーンズらしさということなのだろう。今回はサポート君もようやく(?)落ち着きを取り戻し、しごくまっとうにショウが進んでいく。

色んな意味で「ちゃんとしていた」のはTOPSHOP、色んな意味で「とんでもなかった」、そして「リバティーンズらしかった」のはタワレコのインストアじゃないだろうか。タワレコとTOPSHOPの移動の間には多くのファンと談笑し記念撮影に応じまくっていたというカール。それを聞いて、ライブが終わるたびに会場の外で待っていたファンとピート&カールが延々ダベって遊んでいた2003年のリバティーンズ初来日ツアーを思い出してしまった。2010年、記念すべきリバティーンズ再結成の年。彼らはこの年、日本のファンにも大きなサプライズを残してくれた。そう思えるカールの一夜だった。(粉川しの)
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