NICO Touches the Walls×flumpool@Zepp Tokyo

「たのしー!」(山村)、「おわりたくないー!」(光村)。アンコールのセッションが終了するなり、両バンドのフロントマンはこう言った。その言葉通り、「楽しい!」とか「最高!」とかいう感情がまず口をついて出るような、すばらしいライブだった。一昨年に大阪のイベントで共演して以来、プライベートでも親交の深いNICO Touches the Wallsとflumpool。彼らがはじめて東名阪を一緒にまわったスプリットツアーの最終日には、その仲のよさを窺わせる友好的で伸び伸びとしたムードが首尾一貫して流れていた。

NICO Touches the Walls×flumpool@Zepp Tokyo - flumpoolflumpool
ほぼオンタイムで先にステージに現れたのはflumpool。悲鳴のような歓声が沸き起こる場内に、“reboot ~あきらめない詩~”の爽やかなビートが降りそそぐ。そのまま“Hello”へ雪崩れ込むと、一生(G)の鋭いギター・リフを突破口としてラウドなアンサンブルが吹き荒れる。ギターを手放してハンドマイクに持ち替えた山村(Vo/G)は、「いくでー!」「もっと来いよー!」という熱っぽいシャウトでオーディエンスをしきりに煽っていく。昨年末、大阪城ホールと横浜アリーナで計4日間のライブを成功させたばかりの彼らだが、そのサウンドは最早Zepp Tokyoに収まりきらないほど大きくなっていることがよくわかる破壊力。大きなハンドクラップに包まれた“Calling”は、Zeppの天井を突き破って空高く昇りつめていくようだった。

一生「名古屋のライブ終わって東京帰って来た次の日にNICOの対馬(Dr)とフルくん(G)と遊びに行って。ゲーセン行ってご飯食べてから俺の家に泊まりに来て。『本当にあった呪いのビデオ』を3人でキャーキャー言いながら見た後に音楽について一晩中語り明かしていたら、昼の1時を過ぎていましたよ」
……というMCに続いてプレイされたのは、1月26日にリリースされる2ndアルバム『Fantasia of Life Stripe』から“two of us”。その後も“花になれ”“君に届け”と、柔らかいエモーションを立ち上げる楽曲が次々と放たれていく。蒼く切ない感情を綴りながらも、聴き手をそっと包み込むような懐の大きさを湛えたサウンドスケープ。その強くしなやかな響きに、デビューするなり急速に支持を拡大してきたflumpoolのメカニズムが見えた気がしてハッとさせられる。

山村→一生→元気(B)と次々にボーカルをリレーする“ハイドレンジア”でフロアを沸かせた後は、再びアッパーチューンの乱れ打ち。誠司(Dr)の力強いドラミングが炸裂する“MW ~Dear Mr. & Ms.ピカレスク~”、軽快なメロディが心地いい“Quville”、「後ろ!」「前!」「女!」「男!」とコール&レスポンスがばっちりキマった“labo”を矢継ぎ早にプレイして、ラストは“星に願いを”。周囲の世界や人に対する愛情に満ちた、一点の曇りもない真っ直ぐなメッセージを湛えた歌で満場のフロアを優しく包み込み、大団円を迎えた。

NICO Touches the Walls×flumpool@Zepp Tokyo - NICO Touches the WallsNICO Touches the Walls
そして後攻、NICO Touches the Wallsの登場! 「ぶっ壊れる準備はできてんのか? 容赦しないぜー!」という光村(G/Vo)のシャウトから、いきなり “Broken Youth”の鋭利なアンサンブルが爆発。flumpoolの描いたキラキラとした多幸感を塗りつぶすかのように、背徳感に満ちたロックンロールが堂々と突き進んでいく。続く“友情讃歌”では祝祭的なムードが築かれたものの、オーディエンスをぐいぐいと引き込む牽引力は健在。メンバーそれぞれが衝動を爆発させた強靭なサウンドと光村のソウルフルな歌声が、「ある一点」をしっかりと見定めているかのように確信に満ちて鳴らされているさまは、観ていて清々しいほどだ。

中盤はNICOの最深部を窺わせるような楽曲が目白押し。地底を這うような“夜の果て”、どっしりとしたグルーヴで聴かせる“かけら-総ての想いたちへ-”、気だるく官能的な“病気”、冷めた攻撃性が顔を出す“image training”の連打で、フロアを快楽の世界へと引きずり込んでいく。ここで露になったのは、flumpoolとNICOが鳴らすロックンロールの構造的な共通点と相違点。描写豊かなサウンドスケープで濃密なエモーショナルを立ち上がらせるという点においては、NICOとflumpoolの楽曲は共通するところが多い。しかし、その先にある世界はほぼ真逆。flumpoolが温かな安心感で聴き手を包み込むとするならば、NICOは甘やかな殺傷力で聴き手を酔わせる。その両者の違いが、ディープな楽曲の数々によって鮮やかに浮き彫りになっていた。

必殺のダンス・チューン“バニーガールとダニーボーイ”で再び熱を取り戻した後は、怒涛のクライマックへ。“バニーガール~”の曲間に盛り込まれた華やかなメンバー紹介、「日々のモヤモヤとした叫びを音楽にのせてバーン!とぶつけたい」というMCから放たれた新曲“Diver”と、攻撃の手を緩めないスリリングな展開の中で天性のエンタメパワーを爆発させたところで、“THE BUNGY”“ホログラム”の連打でフィニッシュ。不敵でささくれ立ったロックンロールを伸びやかにブチかまし、フロアに圧倒的な熱量とカオスを生んだ、最高の幕切れだった。

アンコールでは両バンドのメンバーが揃いのツアーTシャツを着て登場し、ビートルズの“Revolution”をプレイ。それぞれの見せ場をふんだんに盛り込んだセッションを、山村と光村が肩を組み合ったり、一生がプレイ中の古村にちょっかいを出したりしながら遊び心たっぷりに披露した。そして最後に放たれたのが、冒頭のセリフというわけだ。
なお、ライブ中のMCではともに新作をリリースすることも発表されていた。flumpoolは先日の横浜アリーナ公演を収録したライブDVDを、NICOは3枚目のフルアルバム『PASSENGER』を仲良く4月6日にリリースするとのこと。音楽性は違えど、こうやって歩調を合わせながら(?)前進していく両者の友好的な関係は今後も続きそうだ。(齋藤美穂)

セットリスト
flumpool
1.reboot ~あきらめない詩~
2.Hello
3.Calling
4.two of us
5.花になれ
6.君に届け
7.ハイドレンジア
8.MW ~Dear Mr. & Ms.ピカレスク~
9.Quville
10.labo
11.星に願いを

NICO Touches the Walls
1.Broken Youth
2.友情讃歌
3.夜の果て
4.かけら-総ての想いたちへ-
5.病気
6.image training
7.バニーガールとダニーボーイ
8.Diver
9.THE BUNGY
10.ホログラム

アンコール
1.Revolution(NICO Touches the Walls × flumpool Session)
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