Pay money To my Pain @ SHIBUYA-AX

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「ようこそ、ツアーファイナルへ。けじめつけるぞ!」。K(Vo)が叫ぶと、屈強な猛者たちで埋め尽くされたフロアから「うぉー!」と野太いスクリームが上がる。そしてキラーフレーズの投下とともにフロアを席巻するモッシュにダイブにシンガロング! 今年1月にリリースされたサード・アルバム『Remember the name』の全国ツアー最終日。東日本大震災の影響で延期となっていた3月20日の公演の振替版となる今夜のAX公演は、のっけからすっさまじいテンション。ロックンロールへの渇望心と魂の解放をむき出しにするバンドとオーディエンスの戦慄のドキュメントに、終始圧倒されっ放しの2時間だった。

もうオープニングからすごかった。開演時刻を15分ほど過ぎた頃、フロア暗転。1曲目“Price to pay”のイントロに合わせて再び明るさを取り戻すと、ステージを覆うスクリーンにメンバー4人のシルエットが浮かび上がる。ステージ後方のライトに照らされ、曲調に合わせて大小さまざまな大きさで映し出されるメンバーの手元、横顔、上半身……。その生々しくもドラマチックな光景に、これからはじまる壮絶なパーティーへの期待感が否応にも高まっていく。そしてラストのサビへ突入するなり、スクリーンが切って落とされメンバーの姿があらわに! ひときわ大きな歓声に包まれた場内は、この時点で早くも絶頂へと導かれた。

もちろん舞台演出だけでなく演奏の破壊力もすごい。ときに泣き叫ぶように、ときに歌うように雄弁なリフとフレーズを奏でるPABLOのギター。鈍器で脳天をブチ殴るようなゴリッゴリのビートをかき鳴らすT$UYO$HIのベース。鮮やかなスティックさばきからは想像もつかないほど、プリミティヴで攻撃的なリズムを打ち鳴らすZAXのドラム。そして体内から湧き上がる感情を、ファルセットやグロウルなどを巧みに駆使しながら表現していくKのボーカル……。そのどれもが暴力的でありながら、確かな決意と信念を宿して真摯に放たれていることに、魂が震える。6曲目の“Atheist”までノンストップで畳み掛けた頃には、ハリケーンの只中のような巨大なエナジーが会場全体に渦巻いていて息苦しいほどだった。

「1ヶ月待たせてごめんね。では、お手を拝借~!」という前振りでハンドクラップが沸き起こった“Terms of surrender”、フロアのあちこちに円陣が発生した“Position”“Paralyzed ocean”などの激ハード・チューンに続いて、スロウ・ナンバー“In the blink of an eyes”へ。先ほどまでの嵐のような音塊から一転して、しとしとと降りしきる小雨のような清冽なアルペジオが鳴り響く。しばし身体を休めて棒立ちで聴き入るオーディエンス。しかし、そこに聴き手を包み込むような穏やかな空気が流れているかというと、ちょっと違う。過剰にシャウトすることも、過剰にダウナーになることもなく、淡々と紡がれる静謐なアンサンブル。そこには、己に降りかかる喜びや哀しみのすべてをありのままの尺度で受け入れようとするような、ストイックでシビアな気概であふれている。そしてだからこそ、平易な言葉では片づけられない複雑なエモーションが一音一音に渦巻いていて、胸が痛い。「すべての人たちへ」という短いMCに続いて鳴らされたバラード“Home”。そのへヴィな響きは、東北の被災地へ向けた鎮魂歌のようなシリアスさを湛えていた。

そんな重厚感たっぷりの2曲を終えて、KとPABLOによるMCがスタート。
PABLO:「今回のアルバムはライブでコミュニケーションを取れることを意識して作ったアルバムです。というわけで、今からPVを撮影したいと思います!」
K:「フロアにカメラがあるでしょ? 俺が合図するから、それに合わせて皆でカメラに向かっていって!」
とオーディエンスに呼びかけ、フロアに据えられた2台のカメラの前に巨大な円陣を出現させる。そして“Weight of my pride”のメタリックなギター・イントロが鳴らされたかと思いきや、「3・2・1・GO!」というKの号砲に合わせてカメラに向かって一気にモッシュするオーディエンス! 思い思いに身体を動かし、己の衝動をぶつけ合うその姿に目が奪われる。その後は“Greed”辺りまで、終始モッシュとダイブの乱立状態! 途中“Black sheep”でPABLOがイントロのタイミングを間違えて「ごめん! ごめん!」と謝ったりもしていたけれど、体内にほとばしるエナジーを一気に放出するようなP.T.Pの轟音は、他のバンドのライブでは到底体験できないような快感と興奮をオーディエンス一人一人から喚起させていた。先ほども言ったように、彼らの音楽は聴き手の心を癒すようなピースフルな音楽とも、明るい未来を照らし出すようなポジティブな音楽とも、明らかに一線を画している。しかし窮屈な日常を生き抜くためには、ときに己の衝動を凶暴的なまでに解き放つことが最大の慰めになる。というロックンロールの核心を高レベルで貫いている点で、P.T.Pは現在のシーンで頭ひとつもふたつも抜けた存在であることを雄弁に物語る光景だった。

「皆が歌えるように作った思い出の曲です」として大シンガロングが沸き起こった“Pictures”、「今いちばん届けたい曲です」として壮大な光の世界を描いた“This life”で本編を締め括った後は、アンコールで“Another day comes”“Dillemma”の2曲を披露。2階席にいる両親に向けて、「いろいろ心配をかけた時期もあったけど、今はこうして元気にやってます」というKの言葉も挟みつつ、2時間半に及ぶアクトは終演を迎えた。ヘヴィでラウドなロックンロールに確かな希望と決意を込めて、高らかに解き放つP.T.P。そのタフで優しさに満ちた轟音は、会場を去った後もしばらく耳について離れなかった。(齋藤美穂)
Pay money To my Pain @ SHIBUYA-AX

セットリスト
1.Price to pay
2.Deprogrammer
3.13monsters
4.Against the pill
5.The answer is not in the TV
6.Athest
7.Terms of surrender
8.Wallow in self pity
9.Position
10.Paralyzed ocean
11.In the blink of an eyes
12.Home
13.Weight of my pride
14.From here to somewhere
15.Drive
16.Butterfly soars
17.Black sheep
18.Here I’m singing
19.Greed
20.Pictures
21.This life
アンコール
22.Another day comes
23.Dillemma
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