SWEET LOVE SHOWER 2011(1日目) @ 山中湖交流プラザ きらら

「山中湖交流プラザ きらら」に場所を移してからは今年で5回目の開催となる、スペースシャワーTV主催のロック・フェス=『SWEET LOVE SHOWER』。「Lakeside stage」「Mt.Fuji stage」の2大ステージに加え、山中湖畔のボードウォークに設置されたアコースティック・ステージ=「Waterfront stage」、昨年はステージカーだったところに新たに常設ステージを組んでパワーアップした第3のステージ=「Forest stage」……という4つのステージ編成で、まだまだロックと夏を楽しみ足りない!というオーディエンスを、真っ向から音で迎撃する態勢はバッチリだ。……とは言いつつ、それをくまなく目撃するはずのこちらは中央高速の大渋滞に巻き込まれ、その間に朝9:25から「MORNING ACOUSTIC」と銘打って「Waterfront stage」で行われた長谷川健一のアクトは終わり、9:55からのオープニング・アクト=大知正紘の出番が過ぎ、雨の中ようやくバスが現地に着いた時にはすでに「Lakeside stage」のトップバッター=エレファントカシマシ・宮本浩次が♪でゅでゅでゅでゅっでゅでゅー!と空を割るような勢いで“俺の道”を叫び上げているところだった。

慌てて会場内に入ると……そこは一面の水たまり。前日からの雨が当日になっても止まない、というバッド・コンディションの中、「Lakeside stage」「Mt.Fuji stage」両ステージ前の芝生エリアや舗装された通路は通行に支障はなかったものの、メイン・ゲートを入ってすぐ=「Lakeside stage」後方の飲食エリアは、1歩足を踏み出すたびに「水たまり or ぬかるみ」という二者択一を迫られる状態。山中湖という場所が場所だけに気温も高くないため、唯一雨をしのげる場所=飲食エリア中央のテントに多くの人がひしめき合ってフェス飯で暖をとるという、「夏のロック・フェス」というパブリック・イメージとはおよそ対極の環境が生まれていた。乗ろうと思えば気球にも乗れるしカヌーにも乗れる、しかも運がよければステージ越しに富士山が見える!—―というこのフェスならではの快適性が、「ほぼ1日中雨」という天候によって失われていたのは、いち参加者としても痛かった。しかしそれでも、雨具に身を包んだオーディエンスは(さすがに昨年のどピーカン状態とは違うものの)目の前の演奏を、音を、最大限に楽しみきろうとするポジティブなモードに終始満ちていたのが印象的だった。

昨年は2日間のヘッドライナーを堂々務めたエレカシ。“今宵の月のように”を高らかに歌いながら「輝こうぜ! 頼むぞ!」と叫び上げ、ずぶ濡れの観客と競い合うかのように頭から水をかぶり、雨雲を貫くような迫力で“ガストロンジャー”を空高く突き上げる宮本! 湖畔の風景を揺さぶる強靭なロック・アンサンブル!……という最高に誇らしい幕開けを飾った会場を、「朝からロック・バカが集まってんな! 朝からロックンロールぶちかましていいっすか!」とさらに熱く揺さぶるのは「Forest stage」のa flood of circle。「朝イチだからって寝ぼけてたら、ロックンロールぶちかまして……ひとりひとり音でビンタかましてこうと思って(笑)」という佐々木の言葉も、“Human License”“Blood Red Shoes”など切れ味の極みのような選曲も実にスリリングだった。一方、「Mt.Fuji stage」にはYOUR SONG IS GOOD登場! 欠場のモーリスに代わって村田シゲを(しかもギタリストとして)迎えた特別編成のユアソン。序盤で早くも汗だか雨だかわからないずぶ濡れ状態のJxJxが「♪街はやがて~……」 と“THE LOVE SONG”を歌い始め、「東北で地震あったっしょ? きっとまたこうなる!」という言葉とともに《……光放ち 世界中の LOVE SONGを 焚きつけた》と歌い上げた場面は、「真摯なる情熱の結晶としてのアッパー・ミュージック=ユアソン」の真骨頂とでも言うべき瞬間だった。

「みなさん、寒いでしょ? 沖縄の歌と音楽であったかくしていくんで、こっちに集まれー!」という新里のコールから“隆福丸”“アミーゴ”とエネルギーのカタマリのような曲を畳み掛けたHYは、震災被災地への祈りを籠めた“涙”、そして“AM11:00”で「Lakeside stage」を優しく包み込んでみせた。「スウィートな雨が降ってきたな! これがスウィートラブシャワーというやつか?」と挑戦的な口上で「Forest stage」の温度を上げたのは黒猫チェルシー・渡辺大知。“ベリーゲリーギャング”“ショートパンツ”に続けて「新曲やります!」と爆裂させた“泥カーニバル”が、このヘヴィなシチュエーションへの最大の賛歌として響いてしまうところが、黒猫チェルシーの高純度なロックンロールのマジックなのだろう。「Mt.Fuji stage」に現れた清 竜人は「しばしお付き合いください」と相変わらずMC控えめながら、再び強くなり始めた雨の中で響く“痛いよ”はこの上なく胸に沁みたし、《こんなにも こんなにも 愛されてるよ》とピアノを弾きながら歌った“ボーイ・アンド・ガール・ラヴ・ソング”はどこまでもドラマチックだった。

降りしきる雨の中、「Lakeside stage」で♪雨なんて降るはずがない~ と“真昼の子供たち”を披露してみせるのは、GRAPEVINEならではのユーモアだろう。「いやあ、ええ天気でほんまよかった!(笑)。今日はわざとゆっくりした曲ばっかりやるんで。子供の頃の夏休みを思い出して聴いてもらえれば……」という田中の言葉通り、“スロウ”“風待ち”“風の歌”“光について”“Everyman, everywhere”と光り輝くコールタールのようなゆったりした名曲群で会場を支配してみせた。そんな白昼夢のような空気を切り裂くのは、「Forest stage」の長澤知之。“JUNKLIFE”の触るだけで切れそうな歌のエッジ感! “ROLE”で雨をつん裂くハード・ロックばりの怪鳥音シャウト! 歌の銃口をこめかみに当てて己とロックを同時に撃ち抜いてしまう長澤そのものの、戦慄のアクトだった。そして、「Mt.Fuji stage」にはandymoriが登場。“スーパーマンになりたい”“1984”“ユートピア”と、バンドの衝動と情熱をそのままカルチャーの/世界の革命にジャック・インしていくような爽快なナンバーを連射! そういえば小山田は「あの、顔の半分が腫れてるんですけど……ドラムの健二に殴られたんです(笑)」と冗談めかしていたけど大丈夫だったのかな?

「車で来た時は霧で2m先も見えなくて。これお客さんの顔見えるのかな?って思ってたけど、晴れてよかった!」「レインコート着てるとさ、中がベタベタして気持ち悪いんだよね! わかる気がするー!」と、「Lakeside stage」に一陣の爽風を吹かせるのは木村カエラ。“喜怒哀楽 plus 愛”や“TREE CLIMBERS”のパワーといい、フィールド全体にタオルがぶん回り歓喜が弾け飛んだ“Circles”や「みんなの笑顔が見たい!」と歌詞をアレンジした“Magic Music”の高気圧ハッピー感といい、ひときわシャープ&エネルギッシュになった復帰後モード全開のパワフルなアクト! ここで「Waterfront stage」に、第1回『SWEET LOVE SHOWER』にも登場しているホフディランが(上だけ学ラン姿で)登場! “遠距離恋愛は続く”でびっしり集まった観客を揺らし、「みんな、よくホフディランまで持ちこたえてくれた!」(ベイビー) 「男二人で(湖面の)スワンに乗ってる寂しい君に捧げます!」(ユウヒ)と“恋はいつも幻のように”を披露し、“欲望”もザ・タイマーズ版の“デイ・ドリーム・ビリーバー”カバーも含め、自分たちの歴史丸ごと惜しげもなく凝縮した名演を見せてくれた。

終盤に差し掛かった『SWEET LOVE SHOWER』1日目、「Forest stage」トリ前はplenty。“空が笑ってる”“最近どうなの?”と静謐な時間を描き出していく江沼のギターの音色には、驚くほど雨がよく似合う。「寒くないですか? 静かですね……大丈夫ですか?」と江沼も言っていたが、どちらかと言えばplentyの音と雨のマーブル模様を身じろぎもせず堪能していたというほうが正しいかもしれない。“待ち合わせの途中”から徐々にそのギターとアンサンブルが熱を帯びて……というその一方で、「Mt.Fuji stage」にはsalyu×salyuがオン・ステージ。salyu含め4人が同じ衣装をまとい、「本物はどれだ?」状態のコーラス隊を構成する中、「INFOBAR」CM曲“話したいあなたと”が流れ始め、「あ、これsalyu×salyuの曲だったのか!」的などよめきがフォールドを駆け抜ける。時にパーカッシブにメロディを操り、時に目も眩むようなハーモニーを響かせ……と、人間の声こそが紛れもなく最高のシンセサイザーであることを体現していくような、まさにSalyuならではのハイパーなパフォーマンスだった。その直後、「Lakeside stage」に響き渡るオリエンタルなSE……BRAHMANの登場! “ANSWER FOR...”でフィールドを一気に狂騒のピークに導き、“THE ONLY WAY”から“SPECULATION”“最終章”などを経て“BASIS”までノンストップで曲を畳み掛けたところで、「スペースシャワーTVとは、東日本大震災が起きてから、早い段階から一緒に支援活動をして、同じ釜の飯を食ったりしてたから、イベントに出演のオファーをいただいた時、考えなしに『出ます』って言ったんだけど……」と真剣な表情で語り、ひと呼吸置くTOSHI-LOW。そのまま真面目な顔で「……木村カエラ、BRAHMAN、岡村ちゃんって並びはどう考えても変だよね? シュークリーム、つけ麺、濃厚チーズケーキみたいな」と続けるMCに、どっと笑いが広がる。しかし、「富士山もいちばん最近では300年前に噴火してて。重機もない時代にどうやって復興したのかなと思いつつ……明日のことはわからないけど、今日1日は、こうやって音楽が好きな人の前で歌えることを感謝してる。明日のことは明日の自分が心配してくれる。たった今日1日を、懸命に生きればそれでいい」という言葉に、再び緊迫感が走る。最後は“霹靂”で完全燃焼!

 陽が傾始め、各ステージともトリの時間がやってきた。まずは「Forest stage」にThe Mirraz! “あーあ”の4つ打ちリズムと“僕はスーパーマン”のロックンロール・ビートに、地面がこれでもかってくらいに揺れる。新曲“ラストナンバー”も披露しつつ、「慶三、雨止めて!」(畠山) 「がんばって!」(観客) 「……がんばります」(中島)といったMCにバンドと聴き手の距離感ゼロの共犯関係も滲ませつつ、どこまでも性急でシニカルで、だからこそ爽快なロックンロールを炸裂させていった。さらに、「Mt.Fuji stage」には髭! メンバーそれぞれがでかい国旗を掲げて現れたかと思いきや、いきなり新曲をかまし、すぐさま“ハリキリ坊やのブリティッシュ・ジョーク”で雨をものともせず沸点越えの熱狂を生んだところで、「俺たちはいつも『SWEET LOVE SHOWER』すごく楽しみにしてるんだけど、今日は確実にいい雰囲気だよね! 今日はすごくきれいに見えるよ……みんながね! かなりボヤけてるけどね!(笑)」とキザと博愛がいっしょくたになったようなあの口調で語る須藤。「想像してたんだ、今日何の曲やろうかなって。きっと夕日がキレイだろうからって。明日はきっと青空だよね!」というMCに導かれての“青空”が、視界を塗り替えるくらいのスケールで響き渡った。時にギター3本で、時に須藤ハンドマイクで……と曲ごとに自在に編成を変えながら、“ブラッディ・マリー、気をつけろ!”“ロックナンバー 〜NO MUSIC, NO LIFE.〜”“テキーラ!テキーラ!”でさらにアゲ倒し、ハイブリッドな“虹”の音像で極上の歓喜を描き出す6人。持ってきた日の丸を「これ? 僕の国の国旗だよ!」と身体にまとって退場する須藤の姿が、いつも以上に輝いて見えた。

そして……開演前から湧き起こる手拍子の中、1日目ヘッドライナーにして、実に3年9ヵ月ぶりの復活ステージとなる岡村靖幸が「Lakeside stage」に! 黒スーツ&白シャツ&ネクタイに時折ズレる大きなメガネという出で立ちはちょっと前のエルヴィス・コステロといった趣だが、ヘヴィ・ファンク・バージョンのアレンジが施された“どぉなっちゃってんだよ”を歌い踊る岡村ちゃんの、キレキレで冴えまくりのステップは圧巻! 図太いシャウト&スクリームは色気や艶よりは迫力を感じさせるものだったが、雨に濡れたステージ狭しと踊り回り、“あの娘ぼくがロングシュート決めたらどんな顔するだろう”でアコギを構えて力強いカッティングで空気を切り刻んでみせるアグレッシブさは、陽が落ちて冷気が広がり始めた山中湖畔のオーディエンスを熱狂させるには十分すぎるものだった。「僕は君を……だいすきです!」というコールから突入した“だいすき”も、アンコールで赤いシャツに着替えて再登場して「今夜はこの気持ちを抑えきれそうにない! 今すぐ君を抱き締めたい! 今すぐ君に口づけしたい!」と情熱あふれっ放しのまま“DATE”“祈りの季節”“マシュマロハネムーン”“セックス”のメドレーを連射して……終了。「ありがとうございました!」と深々と一礼して、岡村ちゃんはステージを後にした。クロージングDJを務めたのは2日目出演のTHE BAWDIES!

ちなみに。震災の影響で日程を8月に移しての開催となった『ARABAKI ROCK FEST.11』と、奇しくも2日間同日開催となった『SWEET LOVE SHOWER 2011』。『SLS』1日目に出演したアーティストのうち、andymori/エレファントカシマシ/GRAPEVINE/黒猫チェルシー/salyu×salyu/長澤知之/髭/a flood of circleの8組が、翌日『ARABAKI』に出演(バインはTHEATRE BROOKとのコラボ「GTGGTR祭」名義での出演)するフェスハシゴ状態となっているのも見逃せない。『SLS』2日目に参加する方はもちろん、『ARABAKI』2日目に参加する方も、出演するアーティストも、体調に気をつけて全力で楽しんでいただきたい。切に願う。(高橋智樹)
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