Galileo Galilei @Zepp Tokyo

Galileo Galilei @Zepp Tokyo
Galileo Galilei @Zepp Tokyo
Galileo Galilei @Zepp Tokyo
1月にリリースとなった新作アルバム『PORTAL』を引っ提げ、3/17に彼らのホーム・タウン=札幌でスタートした全国6箇所のツアーの東京・ファイナル公演。正しく新作ライヴでありながら、じっくりと時間を掛けて練り上げられてきた印象の濃密なパフォーマンスが繰り広げられるという、とてもガリレオらしい、その上できっちりと驚きと歓喜を提供してくれる素晴らしいライヴだった。つくづく、目を離すことが出来ない、目を離す隙を与えてくれないバンドである。

驚きは、開演と同時にさっそく訪れた。昨年11月の新木場でのワンマンと同じく、オープニング・ナンバーはインスト・チューン“4”なのだが、すこぶるダイナミックなロック・バンドのジャム・セッションといった手応えで届けられる。エレクトロ・ポップ/ダンス・ロック路線へと大胆にシフトして生み出されたアルバム『PORTAL』からすると、この力強くグルーヴィでロックな手応えというのはちょっと意外というか、触れるものの意識を叩き起こしてくれるような働きがあった。

Galileo Galilei @Zepp Tokyo
Galileo Galilei @Zepp Tokyo
Galileo Galilei @Zepp Tokyo
Galileo Galilei @Zepp Tokyo
Galileo Galilei @Zepp Tokyo
そして、最年少メンバー=尾崎和樹(Dr.)が飛び上がるようにして全体重を乗せながらバス・ドラムのペダルを踏み、満場のオーディエンスによるハンド・クラップを巻いて“老人と海”へと突入する。リアルな感情と寓話的な情景が綯い交ぜになった歌詞世界、それとカラフルでダンサブルな楽曲とががっちりと手を取り合っていった。“さよならフロンティア”では野口一雅(Key.)だけでなく、佐孝仁司(B.)までもがベースを抱えたままキーボードのフレーズを加えてバンド・サウンドを膨らませてくれる。また、同期を用いたエレクトロ・チューンのみならず、エモーショナルなメロディが迸る“Kite”ではノイジーなギターの倍音がフロアを満たすのだった。あの手この手で、この規模のライヴ会場に見合うだけのスケール感を持ったサウンドを生み出そうとしてきたバンドの姿が伺える。

「ありがとうございます。Galileo Galileiです。今日はよろしくお願いします」と尾崎雄貴(Vo./G.)がシンプルな挨拶を済ませ、“Freud”のキラキラとしたダンス性が心の深層へと突き進む。ここでは岩井郁人(G./Cho.)もキーボードを奏でていたのだが、“マーブル”では一転、彼のダイナミックなギター・リフが加えられて楽曲をドライヴさせていった。そこからファンキーなカッティングが弾け、“明日へ”のアグレッシヴネスへと連なる流れは見事だ。

昨年11月のワンマン公演についてのレポートの中で、僕は《他の音に埋もれないフレーズとギター・サウンドを編み出さなければならない、という点で、実は今後一番大変なのは彼(岩井)かも知れない》と書いたのだが、こんなにロックなギター弾きだったのか、という今回の彼のプレイは、バンド全体のダイナミックな演奏にも良い影響をもたらしていたはずだ。まさに《進化する日々 進化する歌は/馳せる 馳せる 馳せる 馳せる》という歌詞そのままの光景である。アルバム発売前のあのときのワンマンで、新曲群に食らいつくように聴き入っていたオーディエンスたちも、今回はライヴ序盤から思い思いに体を揺らし、腕を振って楽しんでいる。オーディエンスもバンドと一緒に進化しているのだ。

「ツアー・ファイナル、Zepp Tokyoってことで、かつてないぐらいたくさんの人の前で演奏して、緊張してます。今日は、アルバム『PORTAL』の世界を、僕らの音楽を好きでいてくれる人たちと共有して、世界観を更に深いレヴェルにまで持って行けたらと思いますので、よろしくお願いします」と公演の趣旨を説明するざき兄。岩井は「バンバンやっていきますんで」と、とにかくプレイに向かいたくて仕方がない様子だ。同期は使うし、メンバーそれぞれに鍵盤を奏でたりもする場面もあるが、それでも5人のロック・バンドとしてのガリレオのグルーヴががっちりと伝えられるパフォーマンスが続く。この姿はむしろ、アルバム『PORTAL』だけでは掴み切れないもので、つまりアルバム発表後もバンドがまた進化を続けているということだろう。

まるでU2のようなスタジアム級バンドばりのスケール感でサウンドスケープが広がる“星を落とす”や、佐孝のベースが前面でグルーヴィにうねり、すべての音が生き生きとライヴ感たっぷりに繰り出される“Good Shoes”などに至っては、こういう曲だったっけ? と思えてしまうほどだ。そのバンド・サウンドのエネルギーは強くオーディエンスを巻き込み、インディーズ時代からのチャーミングなパワー・ポップ・ナンバー“Monday7s”では歌詞に合わせて色とりどりのタオルがオーディエンスの頭上で振り回される。目に鮮やかな光景だ。昨年6月にリリースされたはずのシングル曲“青い栞”が、ほとんど懐メロのように聴こえてしまうのはバンドの進化のスピードのせいだろうか。それでも、季節感にぴったりフィットしたこの歌の情景は味わい深い。本編ラストの“くそったれども”で、ざき兄の歌が一部飛んでしまったのはご愛嬌だが、カップリング曲とはいえこの曲もヒリヒリした思いが込められた名曲だ。

Galileo Galilei @Zepp Tokyo
Galileo Galilei @Zepp Tokyo
アンコールに応じて再登場すると、和樹による物販Tシャツの宣伝(ざき兄が兄として心配なのか照れ臭いのか、そわそわしているのが面白い)に始まり、メンバーそれぞれの挨拶へ。珍しく眼鏡姿でステージに立った岩井は、ずり落ちる眼鏡が気になってガムテープで止めていたらしい。眼鏡でステージに立つことにかけては先輩である佐孝が、スポーツ用の眼鏡フックを紹介しつつ激しく頭を振ってみせていた。野口は「キッズの憧れであるZeppでライヴが出来て嬉しいです」と語っていたけれど、むしろサウンドのスケール感がそのサイズを越えんとするばかりだったことが驚きだった。そして今春、晴れて高校を卒業した和樹。「もう、高校生なのに凄いじゃん、とは言って貰えないので」と前置きしつつ、新たな責任感を胸にしていた。

“スワン”から“Imaginary Friends”。アルバムの冒頭に立ち返るようにしてツアー・ファイナルは締め括られたのだが、“Imaginary Friends”の、不協和音ギリギリで鳴らされる分厚いシンセ・サウンドのレイヤーも刺激的であった。セット・リストだけ見れば、“Swimming”や“Blue River Side Alone”といったインスト・チューンを除く『PORTAL』全曲+α。しかし実際は、ライヴ盤かDVDでも出して貰わなきゃ困るというぐらいの、バンドによる力強い化学反応によって更に歩を進めたライヴであった。

印象深かったのは、以前のライヴだと、アンコールの催促としてオーディエンスが自主的に“ハローグッバイ”を歌うという光景が繰り広げられていたのだが、今回は一部で歌声が上がったものの、フロア全体にまでは広がらなかったことだった。新しいファンが増えたからなのかも知れないし、バンドのモード・チェンジをオーディエンスが汲み取った結果なのかも知れない。それは寂しくもあるのだけれど、同時にガリレオというバンドの意欲的な進化を象徴している光景でもあった。

ただし例えば、ガリレオのオフィシャル・ブログ『へんてこメンバーの交換日記 あたまでっかち日記』、3/4付けのざき兄による記事とファンからのコメントの数々を読めば、ガリレオがいかにポップ・ミュージック・シーンの中での自らの立ち位置や、ポップ・ミュージック・ファンのことを深く考え、また進化を続けても自分たちのファンを置き去りにするようなバンドではないことは伝わると思う。次はどんな作品を届けてくれるのか。どんなステージを見せてくれるのか。ガリレオはこれからも、そんなスリルと隣り合わせの夢をもたらしてくれるのだろう。(小池宏和)


セット・リスト

01:4
02:老人と海
03:さよならフロンティア
04:Kite
05:Freud
06:マーブル
07:明日へ
08:花の狼
09:星を落とす
10:Good Shoes
11:くじらの骨
12:Monday7s
13:青い栞
14:くそったれども

アンコール
01:スワン
02:Imaginary Friends
公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

最新ブログ

フォローする