ART-SCHOOL presents 『KINOSHITA NIGHT 2012』@SHIBUYA-AX

ART-SCHOOL presents 『KINOSHITA NIGHT 2012』@SHIBUYA-AX
『ART-SCHOOL presents KINOSHITA NIGHT 2012』の2日目。このイベントはART-SCHOOLがデビュー当初から定期的に行っているイベントであり、10年以上に及ぶバンドの歴史のあらゆる節目で開催されきてたイベントだが、今回は特にエポックメイキングな内容となった。なにしろ、昨年末に宇野剛史(B)と鈴木浩之(Dr)が脱退し、2人体制になった新生・ART-SCHOOLのキックオフイベントなのである(厳密に言えば5月21日に渋谷クラブクアトロで新体制一発目のフリーライブを行っているが、公式なイベントとしては今回が初という意味で)。そんなバンドの門出を祝うべく、1日目は髭とASIAN KUNG-FU GENERATION、2日目はThe Mirrazとストレイテナーが参加。さらに転換時のDJを細美武士(the HIATUS)が両日務めるという、ゲストだけでも見ごたえ十分の内容だったが、なんといっても胸を揺さぶったのは、それはもう快哉を叫びたくなるほど圧巻の復活劇を見せつけたART-SCHOOLのアクトだった。
なお、1日目のレポートはコチラ(http://ro69.jp/live/detail/68675)。

ART-SCHOOL presents 『KINOSHITA NIGHT 2012』@SHIBUYA-AX
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■ The Mirraz
18時30分、ビースティー・ボーイズの“CH-CHECK IT OUT”のSEに乗ってオンタイムで登場したThe Mirraz。いきなり“Check it out! Check it out! Check it out! Check it out!”をブチかまし、満場のフロアを弾けさせていく。その後も“ふぁっきゅー”“なんだっていい”などアグレッシヴな楽曲を連打。ライブを観るたびに思うが、聴き手の腰を無尽蔵に揺さぶるグルーヴの弾力と、マシンガンのように放たれるリリックの殺傷力がすごい。“朝、目が覚めたら”や“i want u”などセンチメンタルな心象をストレートに綴ったバラードの輝きとコントラストを描くように、そのダークなエネルギーはさらに破壊力を増しているような気さえする。“僕はスーパーマン”や“CANのジャケットのモンスターみたいのが現れて世界壊しちゃえばいい”などのドス黒く渦巻くグルーヴにはとにかく圧倒されたし、『言いたいことはなくなった』のリリース・ツアーでも何度か披露されていた新曲“気持ちわりぃ”の、なりふり構わず不満を撒き散らすようなやさぐれ感も最高だった。終盤は“ラストナンバー”“観覧車に乗る君が夜景に照らされてるうちは”“イフタム!ヤー!シムシム!”を焦燥感たっぷりに掻き鳴らしてフィニッシュ。闇の底から光の中へとまっしぐらに駆け抜ける、The Mirrazならではの未曾有のカタルシスに酔わされた、痛快なアクトだった。

ART-SCHOOL presents 『KINOSHITA NIGHT 2012』@SHIBUYA-AX
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■ストレイテナー
19時35分、二番手に登場したのはストレイテナー。いつものようにシンペイ(Dr)が椅子の上に立ち上がって両手を掲げ、フロアの大歓声を導いたところで“A SONG RUNS THROUGH WORLD”からライブスタート。青く火花を散らしながら疾走するアンサンブルに満場のオイ・コールが向けられる。フロアを壮絶なダンス空間に引きずり込んだ“BERSERKER TUNE”、絡み合う音の螺旋が宇宙の果てへと上り詰めた“Man-like Creatures”……と、その後も全曲ハイライトと呼べるような鮮やかなパフォーマンスの目白押し。特にスピードの限界に挑戦するかのような、ひなっち(B)&大山(G)のストイックな速弾き交戦が炸裂した“KINGMAKER”はすごかった。中盤には6月13日にリリースを控えたアコースティック・アルバム『SOFT』から、新曲“シンクロ”も披露。ホリエ(Vo/G/Piano)の弾き語りを基調とした透明なサウンドスケープが、ストイックな轟音の連打で沸き返っていた場内の空気をゆっくりと鎮めていく。「KINOSHITA NIGHTには11年ぶりに呼んでもらいました」
(ホリエ)、「しかも11年前は隣のShibuya eggmanでやってたんだよね。それが11年経って、SHIBUYA-AXになりました」(シンペイ)というMCでオーディエンスの感慨を誘った後は、再びアッパーな曲を投下して大団円。ラスト“Melodic Storm”の天高く上り詰めていく壮大なサウンドスケープは、そのままバンドの10年間の成長を窺わせる歓喜の歌として鳴っているような気がして、胸が熱くなった。

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■ ART-SCHOOL
そして20時45分。木下理樹(G/Vo)と戸高賢史(G)の2人に、中尾憲太郎(B)と桜井雄一(Dr)のサポート・メンバーを加えたART-SCHOOLが登場! 昨日と同様いきなり新曲からスタートしたのだが……まずは、その音の圧にぶっ飛ばされた。とにかくグルーヴが太い。うねるベースと爆発するドラム、そしてバッキバキのギター・リフが土石流のように押し寄せてくる。ミドルテンポで押しまくる曲にも、従来のシューゲイザーやグランジというより、ハードコアメタルに近い感じ。闇の底から地鳴りを上げているようなヘヴィな轟音が、細美のアッパーなDJアクトでいい感じに温まったフロアの空気をたちまちダークに塗り込めていく。つまり、もう別のバンドみたいなのだ。プレイヤーが違うから音の響きが変わってくるのは当然なんだけど、曲調も含めてここまでドラスティックに変化を遂げていることには、ただただビックリ。新生・ART-SCHOOLの本気度をうかがわせる、インパクトありすぎのオープニングだった。

その後も8曲目まで新曲の乱れ打ち。序盤は1曲目の流れを汲んだヘヴィな楽曲が続き、4曲目あたりから、従来のアートらしいオルタナ色の強い楽曲が畳みかけられていく。しかし、ここでも注目すべきは格段にタフになったアンサンブル。透明なアルペジオが浮遊する楽曲、キラキラとポップなサウンドが弾ける曲、海の底へ沈んでいくようなスローな曲……など繊細な音世界とは裏腹に、腹にズシンと響く重たいビートが凄まじい存在感を放っていた。なにより、そんな強力なリズム隊に負けじと、理樹と戸高が鳴らすギターの音色もグッと強くしなやかになっていたのが面白い。時に鋭く、時に哀しく、時に激しく鳴り響く、ささくれ立ったギター・サウンド。そこには今まで以上に深いエモーションが込められているようだったし、こうして聴き手の心の奥深くに潜り込むギターの豊かな響きこそが、アートの真骨頂であることを改めて痛感させられた局面でもあった。

「いやぁ、感慨深いですよ。一時期はバンド辞めるしかないのかなってぐらい追い込まれてたから、今こうやってライブできることが本当に嬉しくて。だから皆も同じ気持ちを共有してくれたら嬉しいです」
ひとしきり新曲をプレイし終えて理樹がそう告げると、フロアから温かな拍手が送られる。そして9曲目でやっと既存曲の“車輪の下”がブチかまされると、堰を切ったように沸き返るオーディエンス。その後もライブ定番のキラー・チューンが連打されると、そのたびに凄まじい歓喜の渦が巻き起こる。まるで会場全体でバンドの復活を盛大に祝っているような感じ。新曲の熱をそのままに、痺れるようなグルーヴを必死の形相で叩きつけていくバンドも、どこか楽しそうだ。今回に限らず、過去にも度重なるメンバーチェンジと解散の危機に見舞われてきたART-SCHOOL。その度に脅威の復活を遂げてきたのは、彼らを信じてついてきたファンと、音楽を愛してやまない木下理樹の情熱があったからこそだが、そんなバンドとファンの熱い思いがガッチリと結実した、とても感動的なシーンだった。メンバー紹介と「アルバムを8月に出します」という嬉しい告知を経て、本編ラストを飾ったのは新曲。「光の方へ」「今を生き抜くために」といった言葉を乗せて伸びやかに羽根を広げていく壮大なアンサンブルは、どんな逆境に見舞われようとも必ず立ち上がるアートのブレない意志を力強く示しているようで、胸が震えた。

アンコールでは“MISS WORLD”“FADE TO BLACK”を連打して、再びフロアを熱狂の只中に落とし込む。さらにメンバーがステージを去っても鳴り止まないダブル・アンコールに迎えられ、最後に“スカーレット”を投下して終幕。すべてをプレイし終えた後、ギターを投げつけステージに倒れ込んだ戸高の姿が、この日のライブに賭けていた彼らの本気度を物語っていたように思う。なお、途中のMCでも理樹が言っていたが、なんと彼らは明朝の便でシカゴに飛び、すでに次作のプローデュースを務めることが報じられているスティーヴ・アルビニのスタジオで新作のミックス作業に入るという。さらに今年11月9日には、新作を引っ提げた全国ツアーのファイナル公演が新木場STUDIO COASTで行うこわれることも決定済み。そ
う、歓喜に満ちた復活劇の余韻に浸る暇もないぐらい、ART-SCHOOLは希望ある未来に向けてフルスロットルで動き出しているのだ。(齋藤美穂)

セットリスト
The Mirraz
1. Check it out! Check it out! Check it out! Check it out!
2. ふゃっきゅー
3. なんだっていい
4. 朝、目が覚めたら
5. 僕はスーパーマン
6. CANのジャケットのモンスターみたいのが現れて世界壊しちゃえばいい
7. 気持ちわりぃ
8. i want u
9. ラストナンバー
10. 観覧車に乗る君が夜景に照らされてるうちは
11. イフタム!ヤー!シムシム!

ストレイテナー
1. A SONG RUNS THROUGH WORLD
2. BERSERKER TUNE
3. Man-like Creatures
4. VANDALISM
5. KINGMAKER
6. イノセント
7. シンクロ
8. A LONG WAY TO NOWHERE
9. 羊の群れは丘を登る
10. Melodic Storm

ART-SCHOOL
1. 新曲
2. 新曲
3. 新曲
4. 新曲
5. 新曲
6. 新曲
7. 新曲
8. 新曲
9. 車輪の下
10. 水の中のナイフ
11. サッドマシーン
12. プール
13. あと10秒で
14. UNDER MY SKIN
15. ロリータキルズミー
16. 新曲
アンコール
17. MISS WORLD
18. FADE TO BLACK
ダブル・アンコール
19. スカーレット

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