MANNISH BOYS @ 新木場スタジオコースト ゲスト:阿部真央、細美武士

MANNISH BOYS @ 新木場スタジオコースト  ゲスト:阿部真央、細美武士
2011年に結成され夏フェスへの出演を果たしていた、斉藤和義と中村達也によるスーパー・ユニット=MANNISH BOYS。今年9月にアルバム『Ma! Ma! Ma! MANNISH BOYS』をリリースし、それに伴って行われてきたツアー『MANNISH BOYS Presents CRAZY FRIENDS’ COMING TO TOWN』全国9公演のファイナルとなるのが、今回の新木場スタジオコースト公演だ。ツアー・タイトルでも示されているように、各地の公演にはOVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND、So many tears(茂木欣一・加藤隆志・柏原譲)、奥田民生、細美武士、阿部真央、the day〈仲井戸麗市・中村達也・蔦屋好位置・KenKen〉らといったもの凄い顔ぶれのゲストたちが入れ替わり立ち代わり登場してきた。今回のスタジオコーストにも阿部真央と細美武士が、それぞれ3度目のゲスト参加を果たすことになる。月曜日の夜であるにも関わらず、フロアはみっちりと埋まって大盛況である。

斉藤和義と中村達也(MANNISH BOYSとしての二人は共に金髪)が下ネタ混じりに軽く前説に登場し、そして呼び込まれるのは阿部真央。大観衆を相手取って一人きりの弾き語りライヴとなったのだが、“デッドライン”に始まる感情の激流がそのまま歌声として吐き出されるステージの掌握力はとんでもないものだった。単に勢い任せというのではない、情念のシャウトと愛くるしくポップな歌声、そしてソウルフルな深みと迫力に満ちた歌声を巧みに使い分けてみせる。リラックスした語り口で「私は、他のアーティストのファンの方に観て頂けるのが嬉しくて。初めての方と一緒にライヴを作ることが出来るのは素晴らしい経験です」と告げ、込み入ったテーマをコミカルな調子で描き出す“ストーカーの唄 ~3丁目、貴方の家~”からライヴ限定披露の名曲“母の唄”でステージを締め括るに至っては、満場のオーディエンスからの大喝采を浴びるのだった。

続いては細美武士。さらっと登場してさらっと挨拶し、さらっとウィーザー“Butterfly”のカヴァーを披露するのだが、続いてさらっとELLEGARDENの“金星”を歌い出してしまうとなると、さすがに聴く方も心の準備が必要だろう。ウエノコウジが招き入れられてアコースティックのベース・ラインに歓声が上がる“Stand By Me”、更にはキーボード奏者として堀江博久(※MANNISH BOYSのツアー全日程をサポート)も加わってスティングのカヴァーからthe HIATUSの楽曲群へと繋げられる。堀江はthe HIATUSからの離脱がアナウンスされていたこともあって嬉しいセッションとなったし、トリオ編成ならではのアレンジになっている点も素晴らしい。細美は2本のヴォーカル・マイクを使い分けてオートチューン・ヴォーカルを加えたり、ギター・リフやボディをノックするビートをループさせるといったソロ名義パフォーマンスならではのアイデアを盛り込む。ファンのリクエストに応じたエグめの下ネタMCで笑いを誘いつつも、強くシンガロングを呼び掛ける“Make A Wish”の締めは胸熱な一幕であった。

MANNISH BOYS @ 新木場スタジオコースト  ゲスト:阿部真央、細美武士
さて、いよいよMANNISH BOYSのステージだ。マディ・ウォーターズの“Mannish Boy”(誰の演奏によるものかは分かりませんでした)をオープニングSEに、お揃いのMANNISH BOYSツナギを着用した斉藤和義&中村達也が登場し、フライングVから繰り出される雄弁なブルース・ロックのフレーズといちいち炸裂音のように響くビートが手を取り合う。ふたりはお互いに「カズちゃん」「タッちゃん」と呼び合っているらしい。《Ma Ma Ma MANNISH BOYS!!》のコーラス・フレーズで景気良くスタートするのだが、軽快なのにこのガッチリとした安定感はどうだろう。達也による狼の遠吠えのようなご機嫌なシャウトが響き、“Mach Venus”が速度・熱量の急激な上昇線を描き出すと、「MANNISH活動、卒業式へようこそ!!(斉藤)」「卒業できると思ってんの!? あんたたちー!!(中村)」と笑いを誘ってくれる。

挑発的なヴォーカル・フレーズが飛び交う“カーニヴァル”では、斉藤の明らかに昂った、珍しいぐらいにパンキッシュでささくれ立った歌声も届けられる。斉藤和義のロック・ソングというのはこれまで、率直なようでも確かに洗練され、届けられるための工夫が施されている部分が必ずあった。しかし、昨年のアルバム『45STONES』、もっと言えばあの替え歌動画が話題を呼んだ“ずっとウソだった”辺りからだろうか、ロックの衝動的な瞬発力を呼び起こす活動が顕著になってきている。衝動的なサウンドを明確な形にするために、中村達也のあの銃撃音と砲撃音とロケットエンジンの噴射音で構成されているかのようなドラムスを求めたのではないだろうか。達也は達也で、やはり優れたソングライター/シンガーによって衝動が言語化され、言葉に焚き付けられ、その脇でドラム・セットを叩きまくるという立ち位置が好きなのではないだろうか。MANNISH BOYSの化学反応というのは、そんなところにある気がする。

MANNISH BOYS @ 新木場スタジオコースト  ゲスト:阿部真央、細美武士
MANNISH BOYS @ 新木場スタジオコースト  ゲスト:阿部真央、細美武士
MANNISH BOYSの楽曲群の合間に、斉藤の持ち曲である“バカにすんなよ!”も披露される。斉藤がボトルネック・スライドを繰り出しながら原発設置工事の再開や再稼働、或いはiPS細胞や尖閣諸島の問題を次々に風刺してゆくのだが、挙げ句の果てには「最近、ウチでMANNISH BOYSのビデオを観てると、息子がタッちゃんタッちゃん!って。この前、打ち上げのときも、ずっと(達也の)膝の上に乗ってて。父ちゃんって呼んでくれない……バカにすんなよ!」と達也を指差しながら悲しきジェラシーのブルースをぶち撒ける。大笑いだ。一方達也は、若い頃にモヒカン頭でディズニーランドに行き、係員に「インディアン・カットの方は入場出来ません」と制止されてグーフィーの帽子を被ったというエピソードを語り、更にここで呼び込まれた細美武士は、これまた若い頃に付き合っていた神奈川県在住の彼女を千葉の自宅に連れてゆくとき、車道の「WELCOME TO CHIBA」と書かれた看板を見た彼女が延々笑い続けていたという悔しさを〈バカにすんなよ!〉とそれぞれ吐き出す。うーん。男は、悲しいな。全体的に。

MANNISH BOYS @ 新木場スタジオコースト  ゲスト:阿部真央、細美武士
MANNISH BOYS @ 新木場スタジオコースト  ゲスト:阿部真央、細美武士
ロック・デュオ編成の鋭利な衝動表現もすこぶるかっこいいものだったけれど、キーボード&ベースのサポートに堀江博久を迎えてからの、衝動が奥行きのある世界観として急激に展開を見せるさまも素晴らしかった。華やかなバンド・サウンドの中に斉藤の歌メロが映える“LOVE&LOVE”、コズミックなダンス・グルーヴに達也のスポークンワードが決まりまくる“DIRTY BUNNY”、他界してしまったエイミー・ワインハウスに捧げられる“Oh Amy”と畳み掛けられる。本編終盤はロックのパーティ性全開で“あいされたいやつらのひとりごと~青春名古屋篇~”を繰り出し、オーディエンスとの盛大なコール&レスポンスを巻き起こすのだった。

アンコールは、これを聴かないことには帰れない、斉藤のドラムス×達也のギターという激レアなパート交代でプレイされる“ないない!”。メガネを掛けてカンペ片手に台詞を読み上げる達也も楽しいけれど、斉藤による手堅いドラム・プレイが秀逸で目を奪われてしまう。本当に何でも出来ちゃう人なんだな。そして、この日のゲストが総出演のセッションに傾れ込んでいった。阿部真央はタンバリンを叩きながら間の手を入れる。この豪華すぎる顔ぶれのセッションは、やはりどう考えても月曜の夜に披露すべきものじゃない。「MANNISH BOYSの曲が少ないから」というゲスト招聘の理由は分からなくはないけれども、“ざまみふぁそらしど”ですべてが終わってみれば実に3時間半近くに及ぶ、濃密な一夜であった。パーマネントな活動が難しいのは当然としても、またいつか、こんなふうに2人のロック衝動の形が描き出されるところを見てみたい。(小池宏和)
MANNISH BOYS @ 新木場スタジオコースト  ゲスト:阿部真央、細美武士

MANNISH BOYS セットリスト
01: MANNISH BOYSのテーマ
02: LINKEYLINE
03: Mach Venus
04: カーニヴァル
05: バカにすんなよ!
06: Dark is easy
07: LOVE&LOVE
08: DIRTY BUNNY
09: Oh Amy
10: 7
11: あいされたいやつらのひとりごと~青春名古屋篇~
12: MANNISH BOYSのテーマ
En-1: ないない!
En-2: ざまみふぁそらしど
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