THE NOVEMBERS @ LIQUIDROOM ebisu

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『November Spawned A Monster』

憂鬱なはずの豪雨も、今日のシチュエイションに似合っている気がして、何だかワクワクする。THE NOVEMBERSのワンマンライヴ『November Spawned A Monster』が開催されるリキッドルームに向かいながら、そんなことを考えていた。会場に入ると、ソールドアウトを果たしているだけあって、隙間なく埋め尽くされている。
SEが流れると、真っ暗なステージ上にメンバーの影が現れる。大きな拍手に包まれる中、1曲目の“Harem”がはじまった。《踊りましょう》というリフレイン。リリースされたばかりの、彼らにとって革命作である3rd EP『GIFT』の中でも象徴的な言葉だ。かと言ってオーディエンスが急に踊るようになることはなかったけれど、自分たちの城の中に手を引いてオーディエンスを誘おうとする彼らの意思が、しょっぱなから受け取れた。

しかし、今時これだけオーディエンスが動かない、しかし確実に熱狂していることがわかるライヴは珍しい。外が豪雨ということと相まって、この場を音楽の聖域と慈しんでいるようにさえ映った。バンドのパフォーマンスは、非常に躍動感がある。音源では楽曲の世界観が際立っているけれど、ライヴでは、歌とシャウトを丁寧に使い分ける小林祐介(Vo&G)の声、めくるめくエフェクティヴなケンゴマツモト(G)のギター、そしてメロディアスな高松浩史(B)のベースとパワー溢れる吉木諒祐(Dr)のドラム、と各自の音そのものがカラフルなのだ。そこに、細やかに配慮された照明が彩りを加えていく。

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前半は開かれたまま、毛布に包まれているような安心感さえ覚える楽曲が畳みかけられていった。そして6曲目の“Slogan”を終えたところで小林が「改めましてNOVEMBERSです。今日は来てくれてありがとう」と、やっとMCらしい言葉を放つ。その後からだ。徐々にディープになっていったのは。“Stay Away”や“永遠の剥製”では映像が現れて、別世界に連れていくようなトリップ感覚に拍車を掛け、演奏もどんどんヘヴィになっていく。小林は座り込み咆哮するように歌い上げ、ケンゴはバッサバッサと頭を振りながらギターを轟かせる。絵になる4人ではあるけれど、それでいてちゃんと狂った4人でもあるのだ。また、前半から後半への流れは、まるでサナギやタマゴに戻っていくように、何ものでもない自分たち自身を剥き出しにしていって、とてもドラマティックだった。その流れが、15曲目の“白痴”でパーンと弾けるように終結。やはりオーディエンスは殆ど動いていなかったものの、その後の大きな大きな拍手は、誰もが圧倒されていることを物語っていた。

「『GIFT』のリリースツアーってわけじゃないんですけど、11月にワンマンをするのを4年前くらいからやっていて」と切り出した小林が、今日のライヴの流れを解く鍵と思える言葉を語り出す。「『GIFT』がリリースされた11月7日は、(5年前に)1st EP『THE NOVEMBERS』をリリースした日で。そういう後付けもあったけれど、『GIFT』は昔の自分との対比というところもあった」――まさに、現在と過去を繋ぎながら、虚飾なくTHE NOVEMBERSという存在を見せる、今後の彼らの歴史にとって重要なポイントとなるライヴだったと思う。その後の本編のラストナンバーは、やはり今の彼らにとって重要な楽曲“GIFT”。光と音をシャワーのように眩しく降り注がせて、4人はステージを降りた。

アンコールでは、ぐっと砕けた空気に。高松がケンゴのデザインしたグッズの紹介をすると、ケンゴがエコーの掛かったマイクで「どう?」と問う。そこに高松が「いいと思う」と答える……という、突っ込みどころありまくりの、小林曰く「茶番」な場面に、クスクスとフロアから笑いが零れる。さらには小林が「憧れの人っているでしょ?」と、Charaが『GIFT』を聴いたことをツイートしていたと聞いて、動揺して、鞄を落として降りる駅を間違えた、という話も。あの本編を経て、これらの茶目っ気や人間臭さを見せられると、孤高に留まらぬ可能性が感じられて嬉しくなる……って大袈裟だろうか? でも、この思いは、その後の、入場時に配られた2枚のメッセージカードについての説明とシンクロしていたような気もするのだ。1枚目は感謝を伝えたかったので自分たちのメッセージを書いた、2枚目の白紙のカードは大事な人に何かを伝えるために使って欲しい――器用ではないかもしれないけれど、手渡しで有りの侭を伝えたい。それが今こそ露わになった彼ららしさなのだと思う。そして“ウトムヌカラ”、“Misstopia”を演奏し、11月を祝す素晴らしき夜を締め括った。(高橋美穂)


セットリスト

1.Harem
2.Reunion with Marr
3.sea's sweep
4.BROOKLYN
5.はじまりの教会
6.Slogan
7.夢のあと
8.日々の剥製
9.Stay Away
10.永遠の複製
11.ニールの灰に
12.dnim
13.Gilmore guilt more
14.dysphoria
15.白痴
16.GIFT

アンコール
17.ウトムヌカラ
18.Misstopia
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