U2新作のプロデューサー、制作秘話を明かす。トランプ政権の誕生で制作期間が1年延びた?

U2新作のプロデューサー、制作秘話を明かす。トランプ政権の誕生で制作期間が1年延びた?

ニュー・アルバム『ソングス・オブ・エクスペリエンス』が全米チャートで初登場1位を記録したU2だが、同作にプロデューサーとして参加したアンディ・バーロウが制作の舞台裏について明かしている。

「Billboard」のインタビューに答えたアンディ・バーロウはまず、新作の制作過程でのトランプ政権誕生に受けた影響について以下のように語っている。

トランプが当選して、アルバムはものすごく変わったんだ。ほぼ作品として出来上がっていたんだけど、選挙の次の日にバンドが招集をかけてきて、「変えないとだめだ。もう文脈が失われたから」って言ってきたんだよ。それで、制作にもう1年かけることになってね。

曲によっては脇に追いやられたものもあったよ。その代りに新しい曲も入れることにもなったし、歌詞も相当変わった。ボノは本当にギリギリまで歌詞をどんどん変えていく人なんだけど、マスタリング作業に入ってもまだ歌詞に手を入れてたからね。

とにかく曲が尽きないっていう状態だった。ある時点では60曲くらい手元にあって、その中には歌詞が書き上がってるものもあれば、まだ書きかけというのもあって、そこから絞っていかなきゃならなかったんだよ。



また、ボノが「死の必然性を実感」したことが歌詞を改めていくきっかけにもなったとジ・エッジがこれまでに発言しているが、このことについてプロデューサーとして感じるものはあったかという質問には次のように答えている。

バンドが意図的にそれを表面に出すようなことはなかったね。スタジオではもう、いつもの通りの作業に励むだけだった。何かあったんだろうなあっていうのは感じたけど、音楽がそこを補ってくれているっていう強い手応えがあったからね。みんなでその音楽に没頭するまでの話だった。

すごく外向的ではあるんだけど、実はボノは、プライべートなことを滅多に他人に話さない人なんだ。


そしてそうした変化が今度の作品にどう影響したと思うか、という問いに対しては次のように説明している。

そんなこともあって、今度のアルバムはものすごく血の通ったものになって、核心になるものも明らかになった。トランプが当選する前の状態のアルバムの出来上がりを今振り返ると、今のような謙虚な内容にはなってなかったと思うよ。

このバンドのより人間的な顔を本当に表に出すことになったんだと思う。ここ20年では最高傑作だと思う。その一方で『ソングス・オブ・イノセンス』は制作に5年かけて、ちょっと煮詰まっちゃったんじゃないかなと思うね。



また、U2との仕事はほかのプロデュース・プロジェクトと比較してどうかという問いには次のように答えている。

U2と仕事をしたことのあるプロデューサーに他の仕事と比べてどうか聞いたら、たぶんみんな僕と同じ意見になると思うけど、U2との仕事に関しては準備ってものの意味がないんだ。U2は他のどんなバンドとも違う。

一度関わると、何ヶ月もの間初対面の人にどんどん会わされることになるしね。とてつもない規模のファミリーみたいになってて、全員が何某かのスペシャリストなんだ。ビデオ監督から照明デザイナーから、全員がその道でのトップに立ってる人たちだったりするんだよ。

それともうひとつは、メンバーが揃ってスタジオにいるのは1日のうちの数時間程度だってことだね。それぞれ本当に多忙だから。とにかく最初の日から、僕にとってはまったく勝手が違ってたよ。だけど、その一方で、メンバーのみんなはものすごくざっくばらんとしてて、辛抱強いし、こちらを尊重してくれるし、優しいし、思いやりもあって、新しいことを始めることに対してとてもオープンなんだ。

たいていの場合、アーティストが心を開いて信用してくれるようになるまでに数ヶ月はかかるものなんだけど、ボノの場合には会って2秒目からそうだったからね。ほんとにすぐに息が合ったよ。



なお、『ソングス・オブ・エクスペリエンス』で米「Billboard」のアルバム・チャート1位を獲得したU2だが、過去には『ヨシュア・トゥリー』(1987)、『魂の叫び』(1988)、『アクトン・ベイビー』(1991)、『ズーロッパ』(1993)、『ポップ』(1997)、『ハウ・トゥ・ディスマントル・アン・アトミック・ボム』(2004)、『ノー・ライン・オン・ザ・ホライゾン 』(2009)の7作でも1位を獲得。

1980年代、1990年代、2000年代、2010年代それぞれでNo.1の売上を獲得するという史上初の快挙を成し遂げている
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