【JAPAN最新号】ヨルシカ、圧巻のライブで描き尽くした『盗作』の世界と、その先に続く「文学オマージュ」作品――ツアーレポ&“月に吠える”から解き明かす!

現在発売中の『ROCKIN'ON JAPAN』12月号にヨルシカ最新ツアーレポ&“月に吠える”のレビューを掲載!

圧巻のライブで描き尽くした『盗作』の世界と、その先に続く「文学オマージュ」作品――
今のヨルシカをツアーレポ&“月に吠える”から解き明かす!

文=杉浦美恵


思えば今年1月にヨルシカが行ったオンラインライブのタイトルは「前世」だった(2ndミニアルバム『負け犬にアンコールはいらない』1曲目に収録されたインストゥルメンタル曲と同タイトル)。ヨルシカの音源はその作品ごとにはっきりとしたコンセプトが打ち出され、ひとつの物語を音楽で体感するような特別な没入感がある。一方ライブは、その時々の作品をフィーチャーしながらも、音源で描いた物語の外にある景色をも描いて、アルバムで紡ぎ上げた物語をより立体的に体感させるような構造になっている。時に過去に描いた物語が現在の物語と交錯して、一つひとつの楽曲が、ただそこで完結するだけのものではないと理解できる。言わば、ヨルシカというバンド自体が結成当初から描き続けているひとつの大きな物語を、ライブを重ねるたびに少しずつ紐解いていくような、そんな感覚だ。それはある意味、循環し、繰り返す「生」の物語。その構造を真の意味で意識したのが、前述のオンラインライブ「前世」だった。しかし「LIVE TOUR 2021『盗作』」はアルバム『盗作』をテーマにしたツアーであり、この作品と、続けてリリースされたEP『創作』の2枚をコンセプトとした内容になるということが前々からアナウンスされ、もしかしたら今回ばかりは『盗作』のストーリーをしっかりとライブで描き出すものになるのかもしれないな、などと思っていたのだが。

10月1日、このツアーのラストとなる東京国際フォーラム公演2デイズ、その1日目のライブに足を運んだ。会場に着いて入り口で手渡されたのは小さな8Pの冊子。表紙に印された『生まれ変わり』という文字を見て、いや、やはりすべてはつながっていると、確信に近い感覚を得る。オンラインライブの「前世」で抱いた漠然とした輪廻の感覚が、今、有観客のライブ会場でははっきりと『生まれ変わり』と提示され、ではここで奏でられる『盗作』の世界の楽曲たちは、どのようにこの大きな物語とつながっていくのかと、楽しみというよりもそれが紐解かれ、自分自身がそれを理解することが少し怖いような、妙な気分で開演を待った。(以下、本誌記事に続く)

(『ROCKIN'ON JAPAN』2021年12月号より抜粋)



『ROCKIN’ON JAPAN』2021年12月号