現在発売中の『ROCKIN'ON JAPAN』4月号でスピッツのスペシャルライブ『優しいスピッツ a secret session in Obihiro』を完全レビュー&メイキング映像作品を徹底解説!
みんなが知ってるスピッツの、誰も知らなかったもうひとつの物語
豪華すぎるスペシャルライブ『優しいスピッツ a secret session in Obihiro』を完全レビュー、さらにメイキング映像作品も!
文=天野史彬 撮影=田中聖太郎
またひとつ、スピッツの「秘密」が開陳された。
1月29日にWOWOWプライム/WOWOWオンデマンドにて放送/配信されたライブ映像作品『優しいスピッツ a secret session in Obihiro』(3月23日19時30分より再放送)である。
撮影は昨年10月に行われた。観客はなし。監督を務めたのは、松居大悟。ライブの舞台となったのは北海道・帯広市の重要文化財「旧双葉幼稚園園舎」。これらの情報を見ただけで、この『優しいスピッツ』に捉えられているものが通常のライブとまったく違うものであることは、想像していただけるだろう。1922年に建設され、その後91年間にもわたり幼稚園の園舎として親しまれてきたという、八角形の屋根が可愛らしくも独特な旧双葉幼稚園園舎。そんな歴史が蓄積した建造物で、スピッツがライブをする。それを、「リアル」を思いもよらない視角から切り取る名手である、あの松居大悟が指揮をとり、作品化する――これが、単なるライブ映像作品になるわけもない。
結果として、この『優しいスピッツ』に捉えられていたのは日本中の誰もが知るロックバンド・スピッツの、しかし、まだ誰も知らなかった姿だった。
スピッツと北海道の関係について少し解説しておきたい。『優しいスピッツ』というタイトルにも示唆されているが、スピッツと北海道の縁は深く、その象徴といえる曲が2019年にリリースされた“優しいあの子”である。
当時放送されていたNHK連続テレビ小説『なつぞら』の主題歌として書き下ろされた1曲だが、ドラマの舞台が北海道であり、帯広もまたそのロケ地のひとつだった。この曲を生み出すに当たり、草野マサムネが北海道へ取材旅行に訪れていたことは本人の口からも語られていた。本来、「SPITZ JAMBOREE TOUR 2019-2020"MIKKE"」の一環として2020年6月に帯広でのライブも予定されていたが、コロナの影響で中止となってしまった経緯もある。これらのことを考えれば、北海道・帯広が新たな映像作品の舞台に選ばれたことは必然だったのだろう。(以下、本誌記事に続く)
(『ROCKIN'ON JAPAN』2022年4月号より抜粋)