現在発売中の『ROCKIN'ON JAPAN』4月号別冊にMY FIRST STORYが登場!5年前に武道館で「東京ドームに立つ」って言って、理由がどうであれ結局立てなかった。
それを有耶無耶にして、コロナだからしょうがないよねってないがしろにしちゃうのがすごく嫌だった
MY FIRST STORY、「決意」と「約束」の武道館公演完全ドキュメント!
――Hiro独占インタビューと徹底レポートから、その奇跡を読み解く
インタビュー=徳山弘基 撮影=TAKAHIRO TAKINAMI
MY FIRST STORYの進化が加速している。特に2020年にリリースしたアルバム『V』以降その傾向は顕著で、かつてのバンド像から完全に脱皮しようとしているのが手にとるようにわかる。たとえばラウド/ハードコア畑の住人という結成初期のイメージだけで、今のマイファスを語ることは絶対に不可能だ。昨年7月にリリースされたシングル“告白”は、鍵盤とストリングスのアレンジが中心で、いわゆるバンド・サウンドを極限まで抑制している。Hiroのボーカルは歌詞のメッセージを伝えることのみに徹し、ひたすら繊細に、優しく歌い上げる直球のバラードに仕上げてきた。一方で12月に出た“PARADOX”では、デジタルなビートを骨格に据えたモダンなロックを追求。シャウトもなければ、ツーバス連打もない、そしてBPMは低めという、まったく新しいロックサウンドに挑戦している。普通こういう大胆なモードチェンジが行われると、ファンからは「初期がよかった」とか「あの暴れていた頃に戻ってほしい」という声が決まって出てくるのだが、マイファスの場合はそういうネガティブな反発がほとんど出ていないのが面白い。バンドの思いとファンの思いが不思議と共鳴している。いや、それが「不思議と」ではないのだ。
このバンドは、常に重要な節目で自分たちが何に怒り、何が足りず、何を超えなければならないかをオープンにしてきた。ときにその怒りの声は賛否両論を呼び起こすこともあったし、掲げた目標を美しく達成したこともあったし、逆に無残に負けてしまうこともあった。でもそんなドキュメントがすべてバンドとファンをつなぐ絆となり、ひとつのシェルターとしても機能する。つまり当事者全員がMY FIRST STORYと運命共同体になってしまうような構造がここにはあって、この事実が何よりも彼らを強くしているのだ。
今回2度目の武道館公演を、別冊というスペシャルな形でコンパイルした理由もここにある。つまり普通の武道館公演には絶対にならない、という強い確信があった。絶対に「何か」が起こり、Hiroは必ず「何か」を宣言する――そして2月10日、それは我々の予想を遥かに超えるレベルで、現実となった。
これはひとつのロックバンドの、そしてひとりの男の人生の、最重要ドキュメンタリーである。じっくりと読んでほしい。(徳山弘基)
(『ROCKIN'ON JAPAN』2022年4月号より抜粋)