【JAPAN最新号】ゆず、たどり着いたこれが最高傑作、『SEES』。感動の10曲、ふたりのドラマ、そのすべてに迫る決定版インタビュー

国民的なものとか、王道を行くとか、もういいんじゃないかな、っていうぐらい打ちのめされた2年間だった。
でも、やっぱり、俺たちはここで鳴らすポップスをどうしても届けたかった(北川)

現在発売中の『ROCKIN'ON JAPAN』8月号にゆずが登場!

たどり着いたこれが最高傑作、『SEES』。感動の10曲、ふたりのドラマ、そのすべてに迫る決定版インタビュー

インタビュー=小栁大輔 撮影=岡田貴之


これがゆずだ。これがゆずの、ゆずにしかやれないスタンダードの新たな形である。
「国民的」という称号を背負い、そこから逃げず、常に時代におけるメッセージの意味に向き合い、25年の長きに亘って戦い、歌い続けてきたゆず。
そんなふたりでなければたどり着けなかったであろう、コロナ禍という未曾有を越えてついに手にした最高のポップミュージック集。それが、ゆず17枚目のアルバム『SEES』である。

ゆずは迷っていた。
今年2月の表紙巻頭でのインタビュー、あるいは今回のインタビューを読んでもらいたいが、ふたりは今年春、約4年ぶりとなる大規模な全国アリーナツアーを目前に控え、深いところで迷っていた。
それも今となってはよくわかる。
リスナー一人ひとりを励ますメッセージを歌おうにも、日本を鼓舞する歌を書こうにも、ライブを想定しながら大きな世界観を描こうにも、すべては、「今、この言葉は、このメロディは誰にどこまで必要とされているのだろうか」という無情な問いによって無力化されてきたのだから。
この2年、多くのアーティストが現実に翻弄されてきた。
だが、あらゆる「メッセージ」が空回りし、不可避的なニヒリズムに覆われたこの時代において、それまで25年にわたって背負ってきた役割を前に、迷い、誰より打ちのめされていたのはやはりゆずだったのではないか。

しかし、そんな2年において彼らは、前代未聞のオンラインツアーをやり、「YUZUTOWN」と名付けられたゆずポップの粋を集めた巨大ライブを配信という形でやりきり、小さな希望の種のような楽曲、“Long time no see”を残し、徹底した感染対策を貫きながらホールツアーをやりきってみせた。
そんな試行錯誤と、ただの一歩ずつでも前に進むための日々を重ねる中で生まれてきたのが、混沌と逡巡の異色作としての前作『PEOPLE』だった。
つまり、ふたりはこの、あまりにやるせない日常の中で、あくまで今必要とされるポップを見つけようと戦い、ゆずにやれること、ゆずにしかやれないスタンダードの形が見つかるまで、歩み、曲を書き、歌い続けてきたのである。
もがき続けるような、そんな旅の果てで、ゆずは確かな手応えをつかみ、自らの役割を再び見つけ、ゆずとして歌うべきポップミュージックの輪郭を、今新たに描き出さんとしている。
不意に差し込んだ一筋の光に照らされた、たったひとつの地点にたどり着き、そしてついに歌えたのが、“君を想う”であり、“ゆめまぼろし”であり、“ゴールテープ”だったのだと思う。
聴いてほしい。これは、一度転がりだせばどこまでも転がっていってくれそうな、あのまっすぐで親愛なるメッセージソングそのものである。僕たちがよく知っている、何度も何度も救われてきた、あのゆずのポップソングである。
そう、ここで歌われているのは、何もはぐらかすところのない、強くかっこいい「肯定」の歌だ。

ゆず、25年の歩みがついに掴んだ、最高傑作『SEES』。
こうしてゆずは何度でも蘇り、これからもずっと、ゆずはゆずのあり方を更新していく。(小栁大輔)

(『ROCKIN'ON JAPAN』2022年8月号より抜粋)


『ROCKIN'ON JAPAN』2022年8月号
別冊マカロニえんぴつ