現在発売中の『ROCKIN'ON JAPAN』8月号にMr.Childrenのデビュー30周年ツアー「Mr.Children 30th Anniversary Tour 半世紀へのエントランス」日産スタジアム公演のレポートを掲載!
新たな伝説が刻まれた――30周年ツアーのハイライト・日産スタジアム公演をレポート!
文=杉浦美恵 撮影=渡部 伸、樋口 涼
Mr.Childrenのデビュー30周年を記念したドーム&スタジアムツアーは4月23日の福岡を皮切りに全12公演が行われた。チケットはもちろんすべて各所完売。なにしろライブツアーは「Mr.Children Dome Tour 2019 “Against All GRAVITY”」以来、約3年ぶりである。そしてバンドの30周年という特別な節目でのライブに期待が高まらないわけがない。しかし「半世紀へのエントランス」と名づけられたタイトルからは、今回のツアーが30周年を祝福するライブであるのと同時に、すでにその先の40周年、50周年(=半世紀)を思い描くような、そして未来への希望を共有するような公演になるのではないかという期待も高まったし、事実、今回のツアーのライブは、過去の名曲・代表曲が目白押しとはいえ、そこに後ろ向きな空気はまったくなかった。むしろそうした楽曲が、今この時代にこそまた求められ、新たな意味を持つものであることを証明するようなライブで、圧倒的な歌の力を受け取った。このツアーの開催が発表された時、すでにツアーのミーティングやリハなどの準備を進めていた桜井和寿(Vo)は、公式コメントで「これは凄いことになります!」と興奮気味に記していたことを思い出す。まさにその言葉どおりのライブだった。6月11日、神奈川公演2デイズ、日産スタジアムでの初日を観終えて、Mr.Childrenというロックバンドの底知れなさ、揺るぎなさを改めて見せつけられたような心持ちだ。
この日の天気予報は午後から「雨」。しかも夜に近づくにつれ降水確率は上がっていく予報だった。雨の日産スタジアム――。誰もが2015年9月6日、豪雨とともに記憶に刻まれた、「Mr.Children Stadium Tour 2015 未完」の同地での伝説のライブを想起したことだろう。少し早めにライブ会場へと足を運ぶ時間には、すでに予報を裏づけるように不穏な曇天が広がっていた。けれどファンはよく心得たもので、駅からスタジアムに向かう人たちの服装を眺めていると、しっかり「雨」を想定している人が多いことに気づく。撥水素材のパーカーや雨靴を身につけている人、すでにレインジャケットを羽織っている人もいた。いやもちろん、できることなら豪雨は避けたいところなのだが、あの「未完」の光景を思い出すとそれもまた良しと思えてしまうから可笑しい。しかし幸いライブが始まるまでに雨が降り出すことはなかった。
開演前のBGMが鳴り止んで、あたたかく耳に滑り込むようなストリングスの音色が響き始めると客席からは早くもハンドクラップが起こり、皆立ち上がる。聴こえているのは“優しい歌”のメロディを奏でるインストゥルメンタル。過去と現在、そしてその先とを結ぶような映像演出も相まって、メンバー登場を待ちきれないオーディエンスのハンドクラップはさらに大きくなっていく。そして1曲目の始まり。鳴り響いたのは“終わりなき旅”のイントロダクション。そのギターの音に本来ならば大きな歓声が会場中であがるタイミングだが、客席は声が出せない分、拍手でその想いを届ける。これほど一人ひとりの強い想いが乗る拍手もそうそう聞けるものではない。この日のライブでは随所でそんな感動的な「拍手」を体感することになる。(以下、本誌記事に続く)
(『ROCKIN'ON JAPAN』2022年8月号より抜粋)
【JAPAN最新号】Mr.Children、新たな伝説が刻まれた――30周年ツアーのハイライト・日産スタジアム公演をレポート!
2022.07.02 12:00