もともと2作連続でリリースすることは決まっていたとのことですが、今作も引き続き、mabanuaをサウンドプロデューサーに迎えて制作することに決めたのは、『green』の制作がかなり進んでからのことだったようで、その流れで『green』から『red』へとグラデーションを描くような、美しい「2部作」が完成しました。
「全然違うスタイルのEPを2枚作るんじゃなくて、2枚合わさって1枚のアルバムとして聴けるようなもの──全然違うわけでも、全然同じわけでもない、でもなんか地続きにある──そんなEPにしたい」と思って制作に臨んだのだと、インタビューで語っていたように、『red』は『green』のアザーサイドというよりも、それを踏まえてのさらなる成熟、とでも言いたくなる、とても深みのある作品になりました。『green』で見せた、生音と打ち込みの融合によって描く新機軸が、よりナチュラルに昇華され、そのサウンドとともに、彼女がもともと持つオーガニックでチルな歌声がとても伸びやかに響きます。
そして、歌詞についてもこの2作では、これまで以上にじっくりと向き合ったようで、特に日本語詞での作詞に変化を感じることができます。「自分がいろんなことを経験していく中で、歌いたいことが増えてきた」という言葉は、まさにその通りという気がして、ぜひそのあたりも『green』&『red』を通して感じてみてほしいところなのですが、どんな変化が、どんな背景によってもたらされたのかは、ぜひ、先日発売された『ROCKIN’ON JAPAN』11月号のインタビューで確認していただければと思います。そして、秋の夜長に聴くにもぴったりな『red』。その滋味深い歌声と洗練されたサウンドを、じっくり味わってみてください。(杉浦美恵)