煌びやかなアイデア、豪奢な世界観、無数の演出を実現させていくノウハウ、スキル。サウンドトラックと言ってしまうにはそれぞれがあまりに名曲すぎるほどの、この世界を織り成している真実をひとつひとつ暴いていく楽曲たち。そして、歌。
そのどれもが過去に類のない、とてつもない水準に磨き上げられていて、20年の重みと確かさを感じさせるものだった。
さらに言うと、華やかさが際立てば際立つほどに強まっていくのは栄枯盛衰の響き、無常の響き、あるいは生きていく中で強まる独りきりの意味といった陰影であり、椎名林檎のツアーはその数を重ねていくたびに、そういった真理めいた気づきが多く刻まれるようになっている。
死生観のギリギリ手前にある、生きる中で押し寄せる悲しみややるせなさ、すれ違いや虚しさが色濃く歌われているように思えて、何度も何度も深く感動した。
楽しくて眩しい季節であるほど、瞬間が終わり死んでいくことの悲しみから逃れられない感覚に、最近よくなるのだが、それを何かの「深まり」だとするのなら、まさにそんな生の意義をそのまま作品にしてしまうような、あまりに鋭い表現を目撃してしまった時間だった。
言うまでもないが、最高のショウだった。