グラミー賞なんていらない。ビンテージ・カーで「アーティスティック・スイミング」をやったザ・ウィークエンドのパフォーマンスが圧巻。BTSも! 夏が戻ってくることを期待させてくれるアーティスト達の力に感涙。

グラミー賞なんていらない。ビンテージ・カーで「アーティスティック・スイミング」をやったザ・ウィークエンドのパフォーマンスが圧巻。BTSも! 夏が戻ってくることを期待させてくれるアーティスト達の力に感涙。

ぜひ観て欲しい、ザ・ウィークエンドの“Save Your Tears”のパフォーマンス。


それからBTSの新曲“Butter”の初パフォーマンスも。


ふたつとも、週末にアメリカで行われたビルボード・ミュージック・アワーズで披露された。

1)ザ・ウィークエンド

確かケンドリック・ラマーがグラミー賞のアルバム賞を受賞せずに、ピューリッツァー賞を取った時に誰かが書いていたけど、「ケンドリック・ラマーにグラミー賞は必要ない。グラミー賞にケンドリックが必要なんだ」と。正に。今回の場合は、ザ・ウィークエンドにグラミー賞は必要ない。グラミー賞にザ・ウィークエンドのこのパフォーマンスが必要だっただろう!と声を大にして言いたい。圧巻のパフォーマンスだ。

何が素晴らしいって、観たこともないハイテクを駆使したわけでもないのに、観たこともないパフォーマンスである点だ。監督のAlex LillとライターのCharlie Morseによると、ここではビンテージ・カーで「1950年代のアーティスティック・スイミング(シンクロナイズド・スイミング)を再現してみたかった」ということ。

「『ワイルド・スピード』シリーズ的なものを目指していたわけではない。シクロニシティとエレガンスを表現したかった」とも。運転は、『ダークナイトライジング』などのカースタントのチームにお願いしたとのこと。またビンテージ・カーだったため、いつ壊れてもおかしくないので、NASCARのメカニックチームが控えていたそうだ。

https://www.billboard.com/articles/news/awards/9577722/the-weeknd-billboard-music-awards-performance-inside-story-cars

ザ・ウィークエンドは、スーパーボウルでも巨大スタジアムで孤独を表現する最高のパフォーマンスを披露したし、アメリカン・ミュージック・アワーズでも、花火の飛び交う前を何事もないように歩くシュールなパフォーマンスを見せた。

今回は、カオスをひたすら背負い、1人で前進し続けてきた彼の一連のパフォーマンスが、赤と白の巨大な車が円を描きそれをドローンが空撮して終わるという、どこかピースフルな映像。

コロナ禍のカオスに彼が描いてきた物語が、どこか異質だけどでも幸せな気持ちをもたらしてくれるような余韻も残す素晴らしさだった。

こちら、アメリカン・ミュージック・アワーズのパフォーマンス。


スーパーボウルのパフォーマンスはこちら。
https://youtu.be/9rhadTURsrw

ザ・ウィークエンドは来年世界ツアーを行う。みんな最新アルバムを聴き込んでいるので、このツアーはものすごい盛り上がりとなるだろう。

ただ、その前におそらく新作も出るのだと思う。コロナ禍に作っていたものを今完成させていると解釈できるツイートをいくつかしているから。それが「すごく美しい」とも言っている。また、ファンが「まもなく夜明けが来る」とツイートしたものもリツイートしている。

2)BTS

BTSの“Butter”の公式MVは見ました?
https://youtu.be/WMweEpGlu_U

この曲のMVもあまりによく出来ていて何度も見てしまう。どうやら世界中の人がそう思ったようで、BTSが持っていた自らのYouTubeの記録を破ってしまった。


Varietyの記事によると“Dynamite”は、24時間で1億110万回再生されたのだが、“Butter”では1億1300万回!

この曲について、「“Dynamite”はアップビートのディスコ・ポップな曲で、パンデミックの最中に世界の人たちの希望になれば良いなと思って作った曲だった。でも“Butter”は、夏の季節感がある曲で、さらにアップビートで、フレッシュなダンスポップトラック。夏のアンセムみたいな曲なんだ。ポジティブなバイブで溢れていて、アップビートなエネルギーの曲だ」と語っているけど、正に。

この曲のMVを見ていると、ああ、これまでの通りの夏が戻ってきそうという期待をさせてくれるのが最高だ。

https://twitter.com/billboard/status/1396157660584718336

また別のインタビューでは、“Butter”では文字通りバターみたいに全てをスムースに表現したかったと言っていたけど、それがこの曲とMVの優れているところだと思う。サウンド的には様々なポップソングの良い部分がミックスされているんだけど、それがこれみよがしでは全くなく、正にスムーズに交わってるし、それはMVも同じだ。

ダンスから、衣装から、当然ボーカルから、見所、聴きどころ満載で隅々まで楽しめるのに、夏のアンセムのMVにありがちな過剰さがない。だから、何度も見たくなるんだと思う。そのある種優しさのあるポジティブさが、今のこの間もなくコロナが収束に向かいそうという時期にぴったりなんだと思う。

ビルボード・ミュージック・アワーズのパフォーマンスでは、公式MVとまた違ってこの会場には実際いないけど、ライブの臨場感があるパフォーマンスとボーカルのミックスになっているのが素晴らしい。

何より、BTSが完全にこの夏のメインストリームを代表するアーティストであるところが凄い。

3)オリヴィア・ロドリゴ、リル・ナズ・X

“Butter”が発表された週には、同時にオリヴィア・ロドリゴ待望のデビュー作『サワー』が発売となり、リル・ナズ・Xも新曲“Sun Goes Down”を発表。今年のメインストリームを代表するスターたちの新作が一気に出たことで、夏が来るんだ、という気持ちにさせてくれた。

オリヴィアは最近はブリット・アワーズで大好きなテイラー・スウィフトに初めて会えて嬉しそうな投稿をしていたのが話題にもなっていた。


その時、今年最大のヒット曲“Drivers License”を初のライブ・パフォーマンスしている。


新曲“good 4 u”の『サタデー・ナイト・ライブ』出演時のライブパフォーマンス映像。


また、リル・ナズ・Xは、今年の最大のヒット曲のひとつである“Montero”を同じく『サタデー・ナイト・ライブ』の今シーズン最終回でパフォーマンス。なんとパンツが破れてしまうというアクシデントに見舞われながら、なんとかパフォーマンスを終え、それはそれでまた話題となっていた。




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