スピッツ全アルバムレビュー 14th『小さな生き物』【『醒めない』リリース記念】

2016年7月27日(水)に15thアルバム『醒めない』をリリースするスピッツ。
RO69ではリリースを記念して、これまでの全アルバムを振り返るディスクレビュー特集を行います。
『醒めない』リリースまで、1日1作品ずつレビューを掲載します。
本日の作品は2013年発表の14th『小さな生き物』です。

スピッツ全アルバムレビュー 14th『小さな生き物』【『醒めない』リリース記念】

いきなり個人的な話で恐縮だが、妊娠中に最も聴いていたアルバムが、スピッツの『小さな生き物』だった。
振り返ってみて、タイトルと状況がリンクしていた! と気付いたくらい無意識だったけれど、知らず知らずのうちに今作に満ちている「優しき生命力」を欲していたのかもしれない。

ポップメーカーとしてのスピッツは、私が10代の頃から日々に寄り添った存在ではあったものの、彼らをロックバンドとして意識するようになったのは『ハヤブサ』以降。
そのポップとロックのバランスが、『小さな生き物』では心地好く溶け合っていた。タイトルの不可思議さを抱えたまま、疾走するサビへと連れていく“オパビニア”、スピード感あるポルカで、《細道駆ける最高の野生種に》なんて逞しくシンガロングする“野生のポルカ”、手拍子したくなるビートと、謎に可愛らしいタイトルが堪らない“潮騒ちゃん”といった、遊び心に溢れた楽曲たち。記号的なキーワードと新鮮な音楽性を取り入れて、実験をキャッチーに仕上げたところからは、メンバー自身がまだまだスピッツというバンドに可能性を感じていることが伝わってきた。

そんな中で、シリアスな願いが秘めたられた“小さな生き物”や“りありてぃ”が、心にスッと刺さる。《負けないよ 僕は生き物で 守りたい生き物に/出会えるって 思いもしなかった もう一度果てをめざす》(“小さな生き物”)。歌いながら、笑いながら、戦っていくんだよ――そんな強い生き方を、今作はあくまで軽やかに教えてくれたのだ。逃避に誘うわけでも、現実を突きつけるわけでもない。彼らだから鳴らせる「優しき生命力」に、私はとてもとても救われた。(高橋美穂)


なお、スピッツは2016年7月30日(土)発売『ROCKIN'ON JAPAN 9月号』の表紙に登場します。
お楽しみに!

公開済の作品はこちら
2016年7月24日 13th『とげまる』:http://ro69.jp/blog/ro69plus/146072
2016年7月23日 12th『さざなみCD』:http://ro69.jp/blog/ro69plus/146070
2016年7月22日 11th『スーベニア』:http://ro69.jp/blog/ro69plus/145998
2016年7月21日 10th『三日月ロック』:http://ro69.jp/blog/ro69plus/145999
2016年7月20日 9th『ハヤブサ』:http://ro69.jp/blog/ro69plus/145944
2016年7月19日 8th『フェイクファー』:http://ro69.jp/blog/ro69plus/145859
2016年7月18日 7th『インディゴ地平線』:http://ro69.jp/blog/ro69plus/145808
2016年7月17日 6th『ハチミツ』:http://ro69.jp/blog/ro69plus/145806
2016年7月16日 5th『空の飛び方』:http://ro69.jp/blog/ro69plus/145804
2016年7月15日 4th『Crispy!』:http://ro69.jp/blog/ro69plus/145764
2016年7月14日 3rd『惑星のかけら』:http://ro69.jp/blog/ro69plus/145713
2016年7月13日 2nd『名前をつけてやる』:http://ro69.jp/blog/ro69plus/145667
2016年7月12日 1st『スピッツ』:http://ro69.jp/blog/ro69plus/145597
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