RADWIMPS『SONGS』初出演! まさに『人間開花』なバンドの“今”を観た

RADWIMPS『SONGS』初出演! まさに『人間開花』なバンドの“今”を観た

徹頭徹尾、あふれんばかりの生命力が押し寄せる25分間。
RADWIMPSがNHK『SONGS』初出演で見せたのはまさに、この1年間の途方もなくリアルなドキュメントの結晶そのものだった。

今回の『SONGS』オンエアの大きな軸はふたつ。
ひとつは、社会現象にまでなった映画『君の名は。』での楽曲起用を番組冒頭のアーティスト紹介の切り口としつつも、同作の主題歌である“前前前世”や“スパークル”をフィーチャーするのではなく、あくまで11月23日に発売されたばかりの最新アルバム『人間開花』を前面に打ち出した内容だったこと。
もうひとつは、番組内で披露されたスタジオライブの選曲も、上白石萌音が切々と綴るナレーションも、バンドの危機を経て『人間開花』にかつてないほどに熱く生々しく脈打つ「バンドをやれることの喜び」にフォーカスを合わせたものだったことだ。

森 瑞希&刄田綴色のツインドラム/ピアノ・河野圭と一丸となって描き出すワルツの躍動感に乗せて放つ《僕は人間じゃないんです》のリフレインから、この上ない「生」への渇望が滲む“棒人間”。
映画の緻密なプロダクションの反動として、己の野性を極限まで解き放ったという“AADAAKOODAA”で、ハンドマイクで鋭利なラップを繰り広げる野田洋次郎、鍵盤や機材を駆使してトラックメーカーぶりを発揮する桑原彰&武田祐介。
《ふたりで一緒に 風邪をひこうよ》というハートフルなフレーズを、洋次郎がピアノを奏でながらで情感豊かに歌い上げる名曲バラード“告白”――。

「大切な人の結婚式のために作った歌で。自分のことのように悩んだし」。洋次郎は“告白”についてそんなふうに説明していた。さらに続けて「でも、その人のことを思って、その相手のことを思うと、言葉がたくさん出てきて」と語っていたのが印象的だった。
『人間開花』は途方もない生命の実感にあふれた作品であると同時に、「自分」の存在よりも、その音楽を受け取る「君」の気持ちに照準を合わせたアルバムである――ということは、今作を聴いた人は明確に感じていることと思う。

そして。ドラム・山口智史の休養という事態に直面する中での葛藤とそこから生まれた覚悟を、「バンドが一回終わるかもしれないという、本当に極限まで行っちゃって。でも、何とか続けていけるっていう。一歩一歩進んで、ようやく前に進んでいけるっていう、その音を出しながら進んでいけるっていう」と赤裸々な言葉で語っていた武田。
その一方で、洋次郎は次のように語っていた。

「『中学生のときから聴いてて』という人たちが、今、大学生とか社会人になって、『自分はこんなことを今やってて、RADWIMPSの音楽にすごく影響を受けてこんな仕事に就きました』とか『私はこんなふうな思いでずっと生きてきたんです』っていうのを言ってくれる人がいて。やっぱり音楽をやる最大の喜びだし、ああ、バンドってこんないいもんなんだっていうのは、始めたときには気付かなかったことが、気付けたんですよね」

音楽が「君」へと受け継がれていくことで命を得る――という実感が、彼の言葉からはっきりと浮かび上がってきたし、“トアルハルノヒ”で歌う《ロックバンドなんてもんを やってきてよかった》という虚飾なき歌詞が、確かな息吹をもって響いてきた。

映画『君の名は。』の大ヒットを追い風としつつも、RADWIMPSというバンドの航海はメンバー自身の決意と覚醒そのものによって決定づけられている、ということを十分に実証する、胸躍りっ放しのオンエアだった。12月のCOUNTDOWN JAPAN 16/17出演、そして『紅白歌合戦』初出演も、今から楽しみで仕方がない。(高橋智樹)
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