ついに公開!『オアシス:スーパーソニック』を観るべき理由と、何がそんなに凄いのか

ついに公開!『オアシス:スーパーソニック』を観るべき理由と、何がそんなに凄いのか - ⓒJill FurmanovksyⓒJill Furmanovksy

12月24日(土)よりついに日本公開がスタートした『オアシス:スーパーソニック』。オアシスのファンはもちろんのこと、ロックンロールを愛するすべての人にとって絶対必見の本作、既にご覧になって「興奮冷めやらぬ!」方とはその興奮を分かち合いたいし、年末年始の楽しみに取っておいていてジリジリしているという方にはこの興奮をお伝えしたい!ということで、ここではなぜこの『スーパーソニック』がオアシス・ムービーの、ロックンロール・ムービーの傑作となりえたのか、本作の必見ポイントの予習&復習も兼ねて振り返ってみることにしよう。

以下、初めて観るまで一切内容を知りたくない方は若干のネタバレも含んでいますのでご注意ください。

●貴重映像、サプライズ映像の連続!オアシスの濃密すぎる3年間

既にオフィシャル予告映像でもちょいちょい小出しにされているが、『スーパーソニック』でまず驚くのはその膨大な過去映像の数々、しかも筆者のように94年のデビュー時からオアシスを見続けてきたオールド・ファンですら初見のレア映像&サプライズ映像の数々だ。本作の舞台となっている96年以前は、もちろん今みたいにスマホで何でもかんでも撮影できる時代ではない。その限られた条件下でプロ、アマチュア撮影の差を問わずかき集められた映像の中には、グラスゴーでのアラン・マッギーとの運命的出会いや、ウェールズでの『モーニング・グローリー』のレコーディング風景といった歴史的資料に加え、ノエルの最初の失踪を誘発したLAでのタンバリン殴打事件のような珍事の瞬間まで発掘されているのだから驚く。デビューすら決まっていなかった時代に、ボードウォークの地下室でリハっている自分たちの姿をちゃんとカメラに収めていたのも何気に凄い。しかもそれらは単にレアなだけではなくて、1秒1秒がオアシスの神話的3年間を象るピースであり、マジカルな瞬間の連続なのだ。

●あの名曲はかくして生まれた。今明かされる秘話の数々

http://ro69.jp/news/detail/153067

上記リンクでニュースにもなっているように、『スーパーソニック』ではいくつかの名曲の誕生秘話についても映像や証言と共に詳細が明かされている。文字通りオアシスに永遠の命を与えた“Live Forever”の誕生をダイジェストしたノエルの繊細な歌声や、ノエル失踪の事細かな顛末と共に語られる“Talk Tonight”のモデルとなった女性について、「中華のデリバリーと“Supersonic”」の冗談みたいな本当の話などなど盛りだくさん。他にもデビュー前のセッション映像で“All Around The World”がすでにしれっと演奏されており、しかもその時点でほぼ完璧に出来上がっているのにも驚かされるし、逆に彼らいわく「ライブの良さが全く生かされていなかった」“Cigarettes & Alcohol”の最初のレコーディング音源があまりにショボくて衝撃を受けたりと、オアシス・トリビア的にも重箱の隅の隅まで見所盛りだくさんだ。

●初めて詳細に語られたギャラガー兄弟の原点、家族、父との葛藤

オアシスの栄光の3年間を歴史的意義、音楽的重要性をダイナミックかつ詳細に紐解いていく一方で、この『スーパーソニック』のもうひとつのポイントになっているのが、ノエルとリアムが自分たちの生い立ちやパーソナルな生活、家族、そして兄弟に深い傷を残して去って行った父親について、初めてここまで赤裸々に語っている私小説的な面での重要性だろう。特にノエルは通常のインタビューではこういう話を滅多にしない人だけに、彼のトラウマと呼ぶべき父との関係についてオアシスの決定版ドキュメンタリーたる本作に敢えて残そうとした意図を思うとグッとくる。その詳細には触れないので、ぜひ劇場で確かめてほしい。また、リアムがノエルについて、ノエルがリアムについて大いに語っているのも注目。このインタビューが行われたのは2016年。オアシス解散から7年が経ち、絶交状態にあると言われている兄弟がここでは互いをリスペクトしながら同じ方向を、すなわち「オアシス」を見つめている。これも何気に感動的な状況だと思うのだ。

●「たった3年間」の軌跡、なのにここに「オアシスのすべて」がある奇跡

本作の監督であるマット・ホワイトクロスは、物語をオアシスの初期3年間に限定したばかりか、その3年間のすべてをオアシス「だけ」に注ぎ込んでいる。当時の時代背景や社会現象であるブリットポップとの相対化の中でオアシスを描くのではなく、唯一絶対のオアシスを脇目も振らず描き切っている。そうして限りなく純化・普遍化されたオアシスの物語は、限りなくロックンロールそれ自体とイコールだ。オアシスとは何か? ロックンロール・バンドとは何か? ロックンロールを夢見ること、信じることとはつまりどういうことか?――その答えのすべてが約2時間の本作に詰め込まれているのだ。現在のノエルとリアムがそれぞれの言葉でオアシスの再定義を試みているのも、本作がオアシスに永遠の命を与えるチャンスであると分かっていたからだろう。

●『スーパーソニック』の主人公はオアシスであり、あなたである

ご存知のように『スーパーソニック』のクライマックス・シーンは、1996年8月のネブワースでの25万人ライブだ。このドキュメンタリー自体がネブワースの映像が発掘されなければ成立しなかった作品だと思うし、ノエルいわく「終わりの始まり」、リアム曰く「それでももう一度やれと言われたら絶対やる」ネブワースの圧巻の映像と共に本作は、オアシスとは「オアシスとオアシスのファン」が生んだ夢であり、冒険であったという答えを残して終わる。そう、『スーパーソニック』の主人公はオアシスであり、彼らを愛する私やあなたでもあったというこの到達点があるからこそ、本作は彼らにとっても、そして私たちにとっても唯一無二の記録となっているのだ。(粉川しの)
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