ONE OK ROCK全アルバムレビュー 7th『35xxxv』【『Ambitions』リリース記念】
2017.01.08 18:00
2015年2月にリリースされた『35xxxv』は、ONE OK ROCKにとってそれまでのどんなアルバムとも違う作品である。明確な違いは初めて海外ツアー、海外レコーディングを経て作られたものだということ。2012年に横浜アリーナ2デイズ公演、2013年にアリーナツアーを開催した彼らは、目の前のお客さんとの相乗効果によって計り知れないエモーションを爆発させるような楽曲、つまりライブを想定した楽曲だけでは満足できなくなっていた。だから2013年の『人生×僕=』でバンドアンサンブル以外の音を積極的に導入する。そしてライブではいよいよ国内敵なしといった規模感を誇るようになった時、かねてからの夢である世界制覇を現実的な目標として実行に移せるだけの楽曲が必要となる。そのために2014年、「Vans Warped Tour」に参加しサウスアメリカ&ヨーロッパツアーも行うことで海外サウンドを肌で吸収、そのままアメリカで本作を作り上げた。
まず、ビートからして違う。よりわかりやすく、ダイナミックで、初めて聴いてもすぐノることができるようなリズムが刻まれている。大きくうねるグルーヴをベースが加速させ、ギターは直線的ヘヴィネスで狂騒を掻き立てるだけでなく、抜けのよいシンセ風フレーズによってアンサンブルに奥行きと華を添えている。重要なのは、あくまでバンドサウンドであるということだ。余計なオーバーダビングは一切なし。ロックバンドとして世界でどこまで成功できるか勝負してやる、という生々しい気迫が胸を熱くさせる。そんな世界照準のアレンジに対し、メロディはとても日本的。情緒あふれる泣きの旋律が涙腺を刺激し、胸の中でいつまでも響き渡る。だから僕たち日本人の心にもスッと入ってくるのだ。
『35xxxv』でONE OK ROCKは劇的進化を遂げ、世界への扉を真に開いた。おそらく今新譜として発売されても新鮮なアルバムだと思う気がする。しかしその事実が浮かび上がらせるのは、初期からブレることのない絶対的な芯にほかならない。初めの一文に「それまでのどんなアルバムとも違う」と書いたけれど、彼らはずっとそういう作品を作り、ライブをし続けてきた。昨日の自分より今日の自分、一秒一秒高みに上り続けても満足することなく常に更新し続ける。その飽くなき欲求こそ彼らの最大の武器であり、これまでの栄光と未来への道筋を描き出す原動力になっているということを再認識させられる。こんなアルバムはONE OK ROCKにしか作れない。そして生き様そのものとも言える活動のストーリーも、ONE OK ROCKにしか歩むことができないものなのだ。(秋摩竜太郎)