トム・ヨークとジョニー・グリーンウッドとトム・スキナーによる超新星グループ:ザ・スマイルが、シングル“Wall Of Eyes”投下と共に同名のセカンドアルバムの1月26日リリース、それに伴う3月の英欧ツアーをアナウンスした。公式なシングル発表〜観客相手のライブデビューからほぼ2年後に新作到着というペースだけでも驚異的だし、その間も今夏のメキシコ&北米ツアーも含め英米欧でフェス出演および複数の大小ツアーを勢力的に敢行、ライブEPも2枚発表してきた。
パンデミックの真空状況から発展したユニットだけに、生の「現場感」を通じて筋萎縮を回復したいとの飢餓感が強いのだろうか? にしても彼らのスタミナ、そして次々生まれるインスピレーションの火花の勢いには脱帽するしかない。
絶賛を浴びたデビュー作『ア・ライト・フォー・アトラクティング・アテンション』が13曲入りだったのに対し、2nd『WOE』は8曲収録であるのがまず目を引く。6月に先行公開された“Bending Hectic”がラーガフォーク調ギターからロンドン・コンテンポラリー管弦楽団によるペンデレツキばりのコズミックホラーへ突き抜ける8分のハイパー作だったように、一般的な意味合いでの「歌」の枠組みを柔軟にすり抜け、長めのコンポジションの中で3者が生み出す化学反応をあぶり出していく作風が期待できそう。筆者は根本的にスマイルをジャムバンドと看做しているので、彼らの音楽的主組成要素であるジャズ/アフロビート/現代音楽/前衛ロック/エレクトロニックミュージックに共通する「反復」のシステム、その魅力を存分に味わえるとしたら最高だ。
そうした意味でも、定番のナイジェル・ゴドリッチではなくサム・ペッツ・デイヴィス(トムの『サスペリア』OST共同プロデュース他)を迎えた『WOE』は、前作の良い意味でのレディオヘッド色やギターロック味を超えた、「スマイル」独自のシュールでミステリアスな世界観に吹っ切れた内容になるのではないかと思っている。神出鬼没、痛快なフットワークの軽さを身上とし、刻々と変化/変容する音楽有機生命体が、いよいよ2024年にその真価を発揮してくれそうだ。心して待とう! (坂本麻里子)
ザ・スマイルの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』1月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。
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