9月の来日で至高のライブを見せつけたOPN。最新EP『Love In The Time~』は、さらなる新領域の完全なる新作だった!NY公演を収めたライブ映像を世界初公開!

9月の来日で至高のライブを見せつけたOPN。最新EP『Love In The Time~』は、さらなる新領域の完全なる新作だった!NY公演を収めたライブ映像を世界初公開!

今年自分が観たなかでもっとも印象的だったライブのひとつ。それが9月に行われたワンオートリックス・ポイント・ネヴァーの来日公演〈M.Y.R.I.A.D.〉だ。

前回自分がOPNのライブを観たのは4年前の初来日のとき。名門〈WARP〉と契約してアルバム『アール・プラス・セヴン』をリリースしたタイミングで、かたやソフィア・コッポラ監督の『ブリング・リング』のスコアを手がけるなど映画音楽業界にも進出を果たしていたOPNことダニエル・ロパティンは、当時ですでにアンダーグラウンド内の評価を超えた名声を手にしつつある存在だった。

しかし、その時に観たOPNのライブは、いわゆるエレクトロニック・アーティストによるライブ・パフォーマンス、といった域をまだ出るものではなく、セットもロパティン本人とVJのみというきわめてミニマルなもの。電子音、ノイズ、ヴォイス、具体音……と様々な素材を切り刻み貼り合わせることで不全感を際立たせるようなシークエンスで満たされた空間は、スクリーンでうごめく不気味な生物(機械?)の映像と相まってカルトな佇まいを醸し出したものだったことを思い出す。

対して、今回観ることができたOPNのライブは、その4年前に自分が観たものとは当然ながらまったくの別物。今年リリースされた最新アルバム『エイジ・オブ』はひとつに、ロパティン自身を含む様々なボーカリストの「歌声」が随所に配されたところにこれまでのディスコグラフィーとの異なる特徴を見出すことができる作品だった。で、そうして強調された身体性やエモーショナルな表出の延長に、バンド・セットの導入やダンサーを用いたシアトリカルな演出といった今回のライブにおける構成も含まれるものであったことは間違いなく。

ただし、『エイジ・オブ』を引っ提げた今回のライブとは、単なる音源の再現ではなく、おそらくはその制作の過程においてロパティンと演奏者やスタッフ、あるいは譜面とレコーディングの間で繰り返し行き来されてきたクリエイティヴなプロセスの一環として位置づけることができるものだったのではないだろうか、と。つまり、そうして『エイジ・オブ』の世界がアップデートされていくような光景を目の当たりにすることの臨場感に自分は興奮していた、のかもしれない。

というわけで、今週末にリリースされるOPNの最新EP『ラブ・イン・ザ・タイム・オブ・レクサプロ』である。『エイジ・オブ』の付随的な作品としては『ザ・ステーション』、『ウィール・テイク・イット』に続いて3作目になるが、今作には、件の来日公演でも披露された未発表の表題曲や坂本龍一による“ラスト・ノウン・イメージ・オブ・ア・ソング”のリワークなどに加えて、先行の2枚のEPに収録されていた未発表曲もボーナス・トラックとしてコンパイルされている。

近年、「バロック/チャンバー・エクスペリメンタル」とも言うべき室内楽的なアプローチと先鋭的なエレクトロニック・ミュージックのハイブリッドはOPNしかりティム・ヘッカーやジェームス・フェラーロら界隈の作品にも見られる傾向のひとつだが、今作はそうした『エイジ・オブ』や前作『ガーデン・オブ・デリート』も満たしていた躁的なモードとは異なり、むしろ静的でインティメートな音の響きのニュアンスが特徴的、と言えるかもしれない。

メランコリックなニューエイジ風サウンドの“ラブ・イン・ザ・タイム・オブ・レクサプロ”、静謐な気配をたたえた音のうねりが深い聴取体験を誘う“ラスト・ノウン・イメージ・オブ・ア・ソング”のアンビエント・バージョン。なかでも、フランク・オーシャンの『ブロンド』や『エンドレス』に参加したシンガーのアレックス・Gとコラボレートした、サウダージ感漂う“バビロン”のアコースティック・セルフ・カバーが素晴らしい。『エイジ・オブ』の〈エクストラ〉ではなく、その音世界の内奥へとフォーカスすることで新たな領域が提示された〈オリジナル〉、として鑑賞したい作品だろう。

なお、今回の『ラブ・イン・ザ・タイム・オブ・レクサプロ』のリリースに併せて、NY公演の様子を収めた最新のライブ映像が世界初公開。一般公開(12/7)に先駆けてrockin'on.comエクスクルーシヴで独占先行公開する。今作のリリースまでしばしの間、ぜひとも心ゆくまで堪能していただきたい。(天井潤之介)

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