衝撃の初来日公演を観た! 今、グレタ・ヴァン・フリートには「未来」しかない

衝撃の初来日公演を観た! 今、グレタ・ヴァン・フリートには「未来」しかない

グレタ・ヴァン・フリート初来日の最終公演、新木場・Studio Coastでのライブを観た。衝撃だった。
年齢層が見事にバラバラのフロア。おそらくリアルにレッド・ツェッペリンに衝撃を受けた世代から、音楽に敏感な若者女子まで、ここまで統一感のないフロアというのも珍しいし、そういう光景はなんだか嬉しくなる。心なしか一人で来ている人が多い(自分もだけど)ように感じられたのは気のせいか。ライブが始まる前のフロアは、そういった雰囲気もあり、どことなく「お手並み拝見」という空気もなかったわけではない。が、1曲目の“Highway Tune”、ジェイク・キスカのギターサウンド一発、ジョシュ・キスカの咆哮一発で、そんなシニカルな空気は見事一蹴されてしまった。存在自体が空気を圧倒的に変えて、一気に観客の耳と目とを引き込む、ものすごい引力を感じた。

あらかじめ重いギアの車が予想以上の速さで一気にその回転数を上げて、あっという間に自在にドライブするモードに突入すると、もうそのサウンドのマジックからは誰も抜け出せない。どこまでアドリブなのかもわからない、めくるめくようなギターソロは無駄な展開などひとつもなく、高音のチョーキングのキレの良さには、脳が直接反応するかのようで、危険なロックの魔法が随所に立ち現れては、またバンドアンサンブルが生み出す素晴らしいグルーヴに飲み込まれ、自在な音像に翻弄されるかのように酔いしれた。ジョシュのプリミティブにして見事なハイトーンのシャウトは、聴く者すべてを野生に戻し、それに呼応するかのように終盤に近づくにつれフロアからのスクリームも大きくなっていった。「ロックの未来」というより「ロックの野生」が蘇ったのだと思った。どういうわけだか、その「野生」を今時代が求めている。その熱狂が凄い。

しなやかで美しいロックサウンド。平均年齢21歳の彼らが、そのしなやかさをすでにたずさえていることの凄さ。いや、若さゆえの野生と衝動なのか。そのストレートなエネルギーの放出は、十二分に現代的でありながら、それと同時にこのしなやかな円熟みは、本来は時を経なければ出すことのできないサウンドマジックだと誰もが考えていただろう。その奇跡を目の当たりにしているかのようだった。

『アンセム・オブ・ザ・ピースフル・アーミー』というアルバムが持つ、ロックのスケール感と緻密さ。ライブはそれを軽々と超えてきた。確かに“Highway Tune”や“Edge of Darkness”でのヘヴィなギターリフやハイトーンの歌声などにZEPPを感じることもある。しかし“You’re the One”などの歌声には、ボブ・ディランニール・ヤングのような卓越したシンガーソングライターの滋味を感じさせたりもするし、ステージングはクイーンのようなドラマチックさを感じる場面もあり、つまりは、そうした優れたロックの先達を引き合いに出したくなるほどの逸材であることを圧倒的に証明してみせた初来日だった。ドラムのダニー・ワグナーと、ベースのサム・キスカが生み出すタイム感がバンドの要にもなっている。このバンドアンサンブルは、非常に中毒性の高いグルーヴを持つ。

音源を聴いて、耳の肥えたロックファンをもライブに足を運びたいと思わせた時点でアルバム『アンセム〜』は高評価であることに違いないが、そのバンドとしての輝きが本物であるかどうかを確かめに来たリスナーたちが、ライブが進むについてどんどん、驚嘆の声や熱狂の叫びをあげずにはいられなくなったことこそが、グレタ・ヴァン・フリートの「未来」を証明していた。おそらく後年まで語り継がれるライブになった。時間にして約85分。余計なMCもほとんどなく、ひたすらバンドサウンドと力強く圧倒的な歌声を響かせたグレタ・ヴァン・フリート。これからどう変化し、進化していくのか、そんな音楽の楽しみをまたひとつ見つけた夜だった。グレタ・ヴァン・フリートには「未来」しかない。(杉浦美恵)
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