ふたたびのシンフォニー&メタリカに世界各国のファンが熱狂した『S&M²』を鑑賞! そして来日の期待高まる2020年の展望も

ふたたびのシンフォニー&メタリカに世界各国のファンが熱狂した『S&M²』を鑑賞! そして来日の期待高まる2020年の展望も

映画館でメタリカを観た。もちろん『メタリカ&サンフランシスコ交響楽団:S&M²』のことである。

彼らは1999年4月にも『S&M~シンフォニー&メタリカ』と銘打ちながら同オーケストラとの共演ライブを実施しており、その模様を収録した同名のライブ・アルバムを11月にリリース。2001年には収録曲の“The Call of Ktulu”が、グラミー賞にて最優秀ロック・インストゥルメンタル・パフォーマンス賞を受賞しており、アルバム自体もこれまでに全世界で800万枚を優に超えるセール数を記録している。その画期的なコラボレーション実現の20周年を記念し、さらにはサンフランシスコに新設されたチェイス・センターのこけら落とし公演を兼ねて実現したのが『S&M²』だ。そして、その模様を収めた映像が10月9日、世界各国の約3,000にも及ぶ映画館で同時限定公開に至ったのだった。

しかもここ日本では、約40館に及ぶ上映会場のうち東京と大阪のそれぞれ1会場で、10月9日と10日の2夜にわたる特別上映が実現。筆者は10日の夜、新宿ピカデリーへと足を運んだ。館内は、平日だというのにさまざまな時代のメタリカTシャツを武装したファンで埋め尽くされ、両端のエリアにわずかにしか空席が残っていないほどの盛況ぶりだった。

冒頭に今回の公演実施の経緯などを語るインタビューが配されたこの映像は、約2時間半にも及ぶもの。とはいえ、この特別な公演のために厳選された楽曲たちが演奏され、それを大迫力の映像と劇場ならではの音響で味わうことができるのだから、その時間経過が冗長に感じられることはなかった。ライブの幕開けを飾っていたのは “The Ecstasy Of Gold”。メタリカのライブではお馴染みのオープニングSEだが、それがオーケストラの生演奏で披露されるだけでも鳥肌モノだ。それに導かれるように登場したメタリカの4人が最初に演奏したのは、20年前と同じ“The Call of Ktulu”。以降、『S&M』に収められていた楽曲のみならず、当時はまだ生まれていなかった『デス・マグネティック』や『ハードワイアード...トゥ・セルフディストラクト』からの楽曲も含め、さまざまな時代の楽曲を網羅しながらの演奏が繰り広げられた。筆者自身もそうだったが、来場者の多くは曲間で思わず歓声をあげそうになったのではないだろうか。それくらい生々しい臨場感を味わうことができた。

この貴重なライブを通常とは異なる環境で鑑賞しながら改めて実感させられたのは、メタリカというバンドの技量の高さと楽曲の良さだ。バンドの総合力という意味ではともかく、個人技という部分において「超絶!」などと形容されることはあまり多くない彼らだが、いまさらながら「やっぱり実はすごい!」と感じさせられる場面が随所にあったし、ついにギターを抱えずに歌うシーンまであるジェイムズの歌唱にも、いっそう磨きがかかっていた。しかも今回の場合、「メタリカ+オーケストラ」ではなく「メタリカ×オーケストラ」という様相を呈していて、単なる合体ではなく両者がより踏み込んだ形でのコラボレーションになっているように感じられた。これは絶対に、ライブ映像作品、もしくはドキュメンタリー作品として世に出るべきものだろう。


そしてこの映像が世界各国のファンを興奮させていた頃、さらなる興奮をもたらすニュースが届いていた。日本時間の11日午前、少し前にプレ・オープンしていたメタリカXX(https://metallicaxx.com/)なる謎のサイト上で公表されたのは、彼らが2020年5月から10月にかけ、北米各地で行なわれる5つのフェスに出演するという情報。しかも各フェスで2日間にわたりヘッドライナーを務め、それぞれ異なったセットリストで演奏するというのだ。つまり2020年の北米では、少なくとも大型フェスでトリを務めるメタリカのステージが10回観られる、というわけだ。

9月下旬には、ジェイムズ・ヘットフィールドがふたたびアルコール依存症のリハビリに専念しなければならなくなり、10月から11月にかけて組まれていたオーストラリア/ニュージーランド・ツアーが延期措置となっているが、2020年にはその振替公演も実施されるはずだし、北米での一連のフェス出演を前に、4月には南米ツアーが行なわれることも決まっている。そこで何よりも期待したいのは、そうしたスケジュールの狭間のどこかで待望の日本公演が実現することに他ならない。果たして2020年、メタリカは日本の土を踏むことになるのか? そして、『S&M²』の作品化はあるのか? その動向から目を離さずにおきたいところだ。(増田勇一)



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